身近にある労働の法律−15
職場の安全・衛生のこと


 先日、電通で働いていた入社1年目の女性の自殺が過労死認定されました。この自殺の原因には過重な残業やパワハラなどの要素が混ざり合ったもののようです。こうした状況であれば当然うつ病を発症していたのではないかと考えられます。うつ病への罹患で最も注意しなければいけない事項に自殺の危険性が有ります。しかしうつ病に罹患していることを意識することは少ないのではないでしょうか。労働者は仕事に関係あるなしに様々なストレスの中で生活しています。たスポーツや趣味の世界でストレスを発散させることができたり、身近に相談できる人がいたりすればこうした悲劇にストップを掛けることができるかもしれません。しかし使用者にはそうした状態に労働者が陥っていないか配慮する義務があります。
 労働基準法の第1条第1項には「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」と書かれています。労働時間や休日また賃金等について労働者を守るその他さまざまなことが規定されており、過っては第5章に「安全及び衛生」の規定が定められていましたが現在は、第42条に「労働者の安全及び衛生に関しては、(昭和四十七年法律第五十七号)の定めるところによる。」と書かれ、第43条から第55条まで全ての条文が削除され労働安全衛生法として独立した法律となっています。私たちの一番なじみ深い毎年1回行われる健康診断もこの法律の中で定められています。さまざまな安全と衛生を守るための条文の中に50名以上の労働者を使用する事業場には安全管理者、衛生管理者や産業医を選任し、労働基準監督署への報告が義務付けられています。また事業場の責任者を委員長とした安全衛生委員会の設置の義務づけと実施すべき事項等が定められています。こうした労働安全衛生法で定められている健康管理に関する事項を少し見ていきます。

【安全衛生管理体制】
 50名以上の労働者を使用する事業場は前記のように安全管理者、衛生管理者や産業医を選任することが義務付けられていますが、10人以上50人未満の事業場については建設や運送業等指定された業種では安全衛生推進者をそれ以外の業種では衛生推進者の選任が義務付けられています。産業医については努力義務とされています。安全衛生推進者または衛生推進者は事業場設備等の安全点検や教育また健康診断等を担当することになります。

【作業環境測定】
 労働者の健康に粉じん、著しい騒音、有機溶剤を取り扱う屋内作業場等指定された作業場については労働者の健康を守るための作業環境測定を実施する必要があります。空調設備が中央で一括管理されている職場では設備に変更が無い場合には浮遊粉じん等の測定を原則2か月に1回実施する必要があります。ビル管理会社が管理しているビルでは定期的に測定が行われています。

【健康診断】
 事業者に実施が義務付けられている健康診断には。@雇入時の健康診断、A定期健康診断、B特定業務従事者(有害物質を扱う現場)そしてC海外派遣労働者の健康診断があります。一般的な事務所での健康診断は@とAになりますが、@については実施されていない例も少なく無いと思いますし、検査項目もあいまいなままではないかと思われます。それぞれの実施項目は下記の通りです。
雇入れ時の健康診断項目
定期健康診断項目
@ 既往歴及び業務歴の調査 @ 既往歴及び業務歴の調査
A 自覚症状及び他覚症状の有無の検査 A 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
B 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査B 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
C 胸部エックス線検査及び喀痰検査C 胸部エックス線検査及び喀痰検査
D 血圧の測定D 血圧の測定
E 貧血検査E 貧血検査
F 肝機能検査F 肝機能検査
G 血中脂質検査G 血中脂質検査
H 血糖検査H 血糖検査
I 尿検査I 尿検査
J 心電図検査J 心電図検査
※全て省略できない※赤字は医師の判断で省略可(35歳を除く40歳未満のもの)

【病者の就業禁止】
 労働者の健康状況を知る情報は健康診断や普段から勤務状況等に注意していれば把握できると思います。もし異常があると分かったときにはそれなりの措置を取る必要があることから労安法第61条には次のように定められています。こうした配慮を欠けば健康配慮義務違反として責任を問われ可能性も出てくることになります。感染症で身近なものではインフルエンザがあります。

 事業者は、次の各号のいずれかに該当する者については、その就業を禁止しなければならない。ただし、第一号に掲げる者について伝染予防の措置をした場合は、この限りでない。
  一  病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかつた者
  二  心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪するおそれのあるものにかかつた者
  三  前各号に準ずる疾病で厚生労働大臣が定めるものにかかつた者
2  事業者は、前項の規定により、就業を禁止しようとするときは、あらかじめ、産業医その他専門の医師の意見をきかなければならない。