身近にある労働の法律−14
外国人と健康保険のこと


  私たちが怪我や病気に罹ればまず健康保険での治療を考えます。しかしその原因如何によっては労災保険や自動車保険を使用することになります。恣意的に保険を選択することはできませんので原因に即した保険を使用しなければ後日医療費を巡ってのトラブルに巻き込まれることになります。私傷病の場合、健康保険に加入していなければ全て自己負担と言うことになりますので、当然傷病を負った時点で国民健康保険に加入手続きを取るはずです。しかし日本は国民皆保険が義務付けられていますので被保険者に該当する時点、市町村に居住を開始した日に遡って健康保険料(税)を請求されることになりますが、時効の関係から過去2年間なり3年間遡ったところまでの請求を受けることになります。今回は外国人に係った健康保険に関することを紹介します。

【健康保険と国民健康保険の家族の扱い】
 普通私たちが健康保険と言う場合、健康保険法に基づく中小企業対象の政管健保と大企業が独自に設立している健康保険組合か、又は市町村単位に運営されている国民健康保険法に基づく国民健康保険の何れかを指しています。前者は被用者保険と呼ばれることもあります。両者の違いは、病院で診療を受けた医療費の負担において特別違いはないとしても、その他の保険給付や家族の扱いは大きく違います。
 国民健康保険の適用を受ける人は、被用者として働いている人等を除いた人達、すなわち市町村の区域内に住所を有する自営業者や退職者など仕事を持っていない人達と言うことになります。世帯単位に適用され、被用者保険に該当する人の収入を除いた世帯全員の収入を基にして保険料が計算され世帯主が該当者全員を代表して保険料を支払いますが、家族全員が被保険者として扱われます。一方健康保険は、被用者本人が扶養する家族は被扶養者として保険の適用を受けることになります。早い話、健康保険の被扶養者は収入があっても保険料を支払う必要がないが、国民健康保険では乳幼児であっても被保険者として保険料を負担していると言うことになります。国民健康保険に加入している外国人が扶養している母国にいる家族は市町村内に住所を有しない為国民健康保険の適用は受けられませんが、健康保険では日本に住所がなくても送金して扶養している事実があれば被扶養者として認められることになります。と言うことは母国で扶養している家族も母国の医療機関を受診すれば医療費が支払われると言うことになります。当然保険医療機関ではない為後日還付請求することになります。実際にあった事例を2件紹介します。
 一つ目は、フィリピン人のもので、母国に残してきている子供が盲腸になり手術をした例です。フィリピンには健康保険制度が無いため医療費は100%負担することになるためどうにかならないかといった相談でした。この人は健康保険組合の被保険者であったため事後的ではありましたがこの子供を盲腸にかかった月の初日に被扶養者として申請をして医療費の自己負担分30%を除いた70%を還付してもらいました。こうした例は少ないかもしれませんが、扶養している家族がいれば健康保険の被保険者資格を取得する時点で被扶養者として認定してもらっておくことも必要なのかもしれません。
 二つ目は、中国人の事例です。これまで行っていた事業を法人化する時点で、母国の両親を被扶養者として申請したものです。母国での治療を目的としたものではなく、日本に度々来るので、日本での病気治療を目的としたものでした。続柄や所得証明等幾つか書類は必要ですが、思いのほか簡単に認定されました
 こうした例は日本で働く外国人のため必要な知識として広めていく必要があるかもしれません。

【交通事故と休業補償等】
 先日フィリピン人から、「追突されて治療中だが、通院の都度医療費を支払っている。」という相談がありました。自動車事故であれば自賠責保険から支払われるため医療費を支払う必要はないのにと不思議に思い、保険会社に電話して調べてもらうと病院が自賠責での治療であることを忘れていたとのことでした。また本人に治療の状況を聞くと、背中から腰にかけて痛みがあるので仕事は休んでおり、薬が無くなれば病院に行っているとのことでした。この間何らかの治療があると考えられるのですが、お医者さんとの意思疎通が不十分な結果なのか、休めば休業補償があるとの自己判断なのかよく分かりませんが、この休業をお医者さんが必要と認める診断書を出してくれるかどうかが心配になります。ある程度日本語が喋れる外国人の場合、日常的なことがらでの意思疎通は問題ありませんが少し込み入った話になると「はい。はい」と答えていても何も伝わっていないと考える必要があります。法律がらみなどの問題は。簡単なものであってもできるだけ早い時点で通訳をいれて話しをしておかないと不利益を蒙ることが少なくありません。

【技能実習生の傷病手当金】
 今仕事中に手の使い過ぎでガングリオンと腱鞘炎で休んでいた技能実習生がいました。労災ではなく、健康保険で治療しており、休業した期間については傷病手当金が出るため、協同組合に手続について確認したところと、手続きはするが、帰国後に給付された場合は本人の預金口座に入金となるため協同組合としては一切タッチしないので、友達に頼むかどうかしてもらわなければいけないと言われました。長期休業した場合の請求方法によっては大きなお金になります。同僚また支援者たちとの関係が無ければ大きな不利益を蒙ることになります。こうしたことを聞くと技能実習生は使い捨てかと思ってしまいます。

【帰国して治療をした場合】
 大きな病気に罹ると帰国して治療をすると言う話を聞く事があります。どういう理由かよく分かりませんが、最近、脳の疾患で帰国して手術をしたと言う話しを聞きました。日本に長く住んでいる人なので国民健康保険に入っていると思いますが、そうであれば医療費の還付請求も可能となります。手術となると診療内容の翻譯が大変かもしれませんが・・。