身近にある労働の法律−13
残業代計算の基になる時間単価等


 毎月の賃金明細書をみて、そこに記載されている項目がどのような法律や計算方法で記載されているか分かる人はごく少数だろうと思いまます。社会保険料であれば保険料額表と対比すれば標準報酬月額は分かりますが、実際に支給されている賃金の支給総額と一致しません。毎年4月5月6月の3か月間に支給された賃金の平均値で標準報酬月額が毎年変更されることを知っていなければ何故保険料額表と一致しないのか疑問に思うはずです。残業代の計算にしても同じで残業代を残業時間数で割って1時間単価を算出して1.25で割れば時間単価が出ます。この金額が基本給の時間単価と一致していればそれでいいのかと言うと疑問が残ります。原則論として、時給契約している場合であっても、手当類の支給があればそれらの手当類も含めて残業時間の単価を計算する必要があります。しかし労基法と施行規則にはこの割増賃金基礎給から除く手当類が次の表の通り定められているためそれらは除いて計算する必要があります。賃金が最低賃金を上回っているかどうか比較する場合にも一定の手当類を除いて計算することになります。(注1)

労基法第37条

@家族手当、A通勤手当

施行規則第21条

B別居手当、C子女教育手当、D住宅手当、E臨時に支払われた賃金、
F一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金

 住宅手当が一律支給される場合には割増賃金基礎給に含める必要がありますし、営業手当の名目であっても就業規則で時間外手当に代るものと言う規定かあれば当然割増賃金基礎給から除かれます。しかし営業手当に見合う時間数を超えた残業時間分については追加の支払いが必要になります。また「一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」については、本来は毎月支払われるべきものでありながら2ヵ月に1回まとめて支払われているようなものはこの規定を悪用しているためだけの話なので割増賃金基礎給に加える必要があります。中には手当類は一切無視して基本給だけをベースとして割増賃金単価を計算しているところもあります。先日、「割増賃金単価に手当類が含まれていない為、正規に計算した割増賃金との差額を支払え。」とユニオンから申し入れがあったと相談を受けました。「賃金計算は税理士さんに依頼しているのでこの辺りの法律的なことは全く分からない。」とのことでした。当然支払うべき賃金なので支払い、これからの残業代については正規の方法に切り替えることになります。ユニオンに加入して問題提起してきた1名以外の人についてどうするかと考えると会社にとっては頭の痛いところとなります。専門家が当然指導すべきところを指導していなければ損害賠償請求の問題として検討せざるを得ないことになります。なかなかそこまでいくことは無いでしょうが私自身も「他山の石」とせず自戒しなければならないところです。ある程度の規模の会社であれば、賃金の計算と会計処理そして社会保険・労働保険の手続きは自社で行ったうえで専門家と連携を撮ると言うのが一番いい姿と思っているのでこのような話も伝えました。
 割増賃金単価の計算式は二つの方式がありますどちらの方式を使うかは就業規則に定めておく必要があります。

(1)1年間所定労働時間の平均値を用いる方法
 (1日8時間、所定労働日261日(週休2日(104日))、割増賃金基礎給20万円)
20万円

 = 
 1,149.4円
(365日−104日)×8時間÷12月=174時間

(2)その月の労働時間を用いる方法
 (1日8時間、労働日数22日、割増賃金基礎給20万円)
20万円

 = 
 1,136.3円
22日×8時間=176時間

 実際には祝祭日や年末年始の休日等があるため(1)の場合には毎年度計算し直す必要があります。
 残業代の問題を考えるとき、割増賃金の基礎給(注2)と労働時間と休憩時間の算定はワンセットの問題として考える必要があります。労働時間については、始業前のミィーティングの時間や終業時間後の時間などどうするか、休憩時間では10時と15時の10分程度の休み時間は休憩時間なのか休息時間なのか。貸切バスの運転手さんの場合、休憩時間をどの様に考えるかによって残業時間が大きく変わってきます。

(注1) 最低賃金以上の賃金が支払われているかどうかを見るときには、次の手当類を除いたもので比較することになります。(最低賃金法第4条)

裁定賃金との比較時に
除かれる賃金

@通勤手当、A家族手当、B精皆勤手当、
C臨時に支払われた賃金、D1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
D残業代、E休日手当。F深夜割増25%部分⇒所定労働時間以外の賃金部分


(注2) 技能実習生のように時間給(最低賃金)のみで手当てが一切ない場合には割増賃金の基礎給で揉めるとすれば最低賃金の改訂がなされていない場合や残業単価が1時間400円と固定されている場合です。