身近にある労働の法律−8
就業規則と労働条件通知書


 私たちが就職する時一番気になるのが賃金、労働時間や休日だろうと思います。当然ハローワークの求人票にはそうしたことが記載されていますが、いざ面接に行ってみるとそこに書かれていた内容と違っていたと言うことも少なくありません。また入社してから面接のときの話しと全く違った労働条件であったと言う例もあるといえます。特別問題が無い場合であっても意外と自分の労働条件が分かっていないのではないでしょうか。後日のトラブルに備えて求人票を保存しておいたり、面接のときの出席者の役職氏名と話の内容などのメモも残しておいた方がいいといえます。
 就職すると言うことは契約書を交わしていなくても法律的には労働契約を交わして就職していると言うことになります。当契約関係には、権利と義務がワンセットとなっているため、労働者も会社に対して守るべき義務が課せられていることを認識しておく必要があります。義理人情の世界ではないので契約関係と割り切った上で会社との協調関係をつくりあげていく必要があるといえます。この辺りがあいまいになって、使用者・労働者共に問題を発生させることも少なく無いといえます。
 住居の賃貸借あれば宅地建物取引主任の資格を有する人から説明を受けて賃貸借契約書を交わしますが、就職に当たってはそうした契約書を交わすことは稀だろうと思います。こうした我が国の慣行から口頭での労働契約では労働条件があいまいなままであるため労働基準法は採用時に必要な労働条件を記載した文書(労働条件通知書)を使用者が労働者に交付する義務を負わせるとともに、事業所にその会社での労働条件や守るべき規則を定めた就業規則を作成し、労働者に周知するように義務付けています。この二つの書類、労働条件通知書と就業規則を見る事によって自分はどのような条件で働いているのかが分かります。また何らかの理由によって退職また解雇されることになった場合のため退職証明書と解雇理由証明書の交付についても定めがあります。

【労働条件通知書】労基法第15条
 就職するに当たってどのような労働条件であったのかを明確にするため会社には労働条件を労働者に明示する義務が負わされています。明示する方法は書面によるものとされ、そこに記載する事項も労働基準法施行規則第5条に次の通り定められています。しかしそれをもらった労働者がその重要性をどの程度理解して、大切に保管しているでしょうか。関心が無く、どこかに行ってしまったと言うのが現実ではないでしょうか。

A 必ず記載する必要があるもの
B  決まりがあれば記載する必要がある事項

@ 労働契約の期間に関する事項
A 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
B 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
C 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、
 休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における
 就業時転換に関する事項
D 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期
 並びに昇給に関する事項
E 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

@ 退職手当に関する事項
A 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び規則第8条各号
 に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項
B 食費、作業用品などの負担に関する事項
C 安全及び衛生に関する事項
D 職業訓練に関する事項
E 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
F 表彰及び制裁に関する事項
G 休職に関する事項


【就業規則】 労基法第89条
 労働条件通知書の内容のA欄の@〜Bを除いた内容を記載することになります。就業規則は常時10人以上の労働者を使用している事業場は作成して労基署へ届出る必要があります。また10人未満であれば作成しても届出る必要はありませんが、いずれの場合であっても労働者に周知しなければその効力は発生しません。周知の方法として労基法施行規則第52条の2に次の三つの方法が定められています。
 @ 常時各作業場の見やすい場所に掲示する、または備え付ける
 A 書面で労働者に交付する
 B 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する

【退職時等の証明】 労基法第22条

 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
2 労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、
 使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合において
 は、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。
3 前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。
4 使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信を
 し、又は第一項及び第二項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。


 26年の東京労働局の定期監督等での結果報告を見ると、対象企業の72.8%に何らかの違反があり、違反数の多い順に、労働時間が37.5%、割増賃金が30.5%、労働条件明示が20.4%、就業規則が16.3%となっています。労働条件通知書の交付と就業規則の作成については非常に問題の多い部分であるため労使ともに関心を持つ必要があるものといえます。