身近にある労働の法律−7
休業手当と適用除外


 先日、技能実習生のことで岡山県の方から電話がありました。「今、ベトナム人技能実習生に日本語を教えており、その人から、会社の仕事が少なくなったため上司から終業後アルバイトを世話すると言われたとのことだが問題が無いか」という質問でした。技能実習生にアルバイトは認められていない為、「アルバイトは絶対にさせてはいけない。」としか回答はできません。これに対して。「残業が無くなれば手取りが7万円程度(注1)にしかならず、高額の保証金を負担し、300万円は貯金できると言われて来ているし、7万円程度の賃金なら、帰国して働いた方が収入が多いので、アルバイトできなければ帰国したいと言っている」とのことでした。会社の景気が良かったとしても300万円の貯金は可能でしょうか。最低賃金ではかなりな残業が必要となります。おまけに、仕事が無いので休業も発生すると言われているとのことでした。休業が発生すれば賃金が支払われるのかどうかが問題になります。外国人にかかわらず休業の扱いには問題が多いいところです。労働基準法第26条は休業手当について次のように定めています。

 「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」


 使用者には労働契約に従がって労働者に仕事を与える義務があります。仕事が与えられなければ労働者は契約違反として損害賠償請求をすることも可能ですが、労働基準法は上記のとおり平均賃金の60%以上の支払いを使用者に義務付けています。
 休業手当について注意しておくべき点を幾つかあげておきます。

(1) 平均賃金の求め方は、通常賃金締切日が定められているため前3回分の賃金総額をその期間の総日数で除して得た額の
 60%が平均賃金となります。

(2) 休業手当の計算式は次の通りとなります。
 平均賃金×実際に休業した日数(その期間内の休日日数を除く)

(3) 「使用者の責に帰すべき事由による休業」とあるため全ての休業がこの手当の対象とはなりません。下請で働いている場合、
 元請から材料が来なからと言う場合にはこうした事態に対応できる体制づくりが出来ていないだけの話しなのでこの理由には該当
 しません。天災地変など使用者の努力の及ばない事態のみがこの「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当するものと
 されています。農業の雨天休業などはこれに該当することになります。ただ、雨天の日を日曜日と振替できるかと言う問題があり
 ます。振替については就業規則等にその旨の規定を定めておく必要があり、しかも事前に振替を行なっておかねばならず、事後
 的な振替は認められません。事後的な振り替えであれば、雨天時は賃金カットを行ない、日曜日には35%の割増賃金で支払う必
 要があると言うことになります。

 農業の技能実習生のことに触れたので「適用除外」について見ておきます。適用除外とは労働時間や休日また割増賃金等一定の者については労働基準法が定めている規定を適用しないと言うものです。良く知られているものに「管理職には残業代を支払わなくても良い」と言うものがあります。要するに時間計算しがたい職務については1日8時間また1週40時間の縛りをなくし、深夜業を除いた割増賃金も支払わなくていいとするものです。
 労働基準法第41条で次のように定められています。

第41条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一  別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
別表1
6号 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業
7号 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業



 この第1号では農業や漁業を適用除外と定めています。しかし技能実習生については、労働基準局長の通達では「なお、労働時間等に関する規定が適用されない労働者についても、雇用契約において時間外・休日割増賃金を支払う旨を定めた場合には、当該契約に基づきこれらの賃金が支払われなければならないこと。」とされています。これに呼応した形で入管では適用除外とされた労働条件通知書であれば許可しないとの扱いをしています。同じ職場で働いていても技能実習生以外の外国人や日本人については当然適用除外として扱われます。ただし、ハウス園芸では天候に関係が無く業務が行われるため適用除外の対象としないとの通達があると聞いています。

(注1) 技能実習生の賃金は日本人並みの賃金を支払ということになっていますが、実態として最低賃金で決まっています。現在の岡山県の最低賃金は735円となっていますので、年間労働日数を240日(年間休日125日(土日が104、祝日16、年末年始5))とすると、1か月の賃金は 240日×8時間×735円÷12月=117,600円となり、社会保険料17,000円と居住費25,000円を控除すると75,000円程度の手取にしかなりません。手取りを5万円増やそうと思えば55時間程度の残業(残業単価919円)が必要になります。土曜日を全て働き、毎日1時間の残業か、毎日2時間の残業と土曜日2回の残業が必要になります。ちなみに月額賃金については時間給で計算している事業所もあり、そうしたところではゴールデンウィ−、盆、年末年始など休日が多い月は手取りが5万円と言うこともあり、仕送りをすると借金しないと生活していけないとのことでした。