身近にある労働の法律−6
最低賃金


 最低賃金に関心を持つ人は多くないと思います。私自身、サラリーマン時代には最低賃金と言う言葉は新聞の中で目にする程度でどのようなものか全く考えたこともありませでしたので最低賃金がいくらなのかも知りませんでした。社労士の勉強をしている中でやっとどのようなものかを理解することができました。関心が無かった理由は自分の賃金とは無縁の世界の話しだからです。しかし外国人の問題に係りだして以降、毎年見直される最低賃金の動向には大きな関心を持ち、技能実習生の賃金見直しが適正に行われていかどうかは第一にチェックする事項となっています。今回は、「新聞記事から」で紹介している、「給与は最低賃金が可能」「残業、休日出勤は喜んで仕事します」と言った記事があったため最低賃金について見ていきます。
 最低賃金は、「最低賃金法」に基づいて決定されますので、条文を追って要点を見ていきます。

【最低賃金の対象となる労働者】(第2条)
 労働基準法で定める労働者(事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者)に限定されており、これに該当しない労働者に対しては適用されていません。例えば、同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人は対象とされていません。現在、外国から家事使用人の招聘が進められています。原則論で言うと、労働者とはされない、また最低賃金は保障されないと言うことになります。

【時間単位で決める】(第3条)
 最低賃金は時間単位で定めるとされ、1時間単価が示されることになっています。これについては地域別また地域の産業別の最低賃金があります。

【最低賃金から除かれる賃金】
 賃金には様々な基本給以外にさまざまな名称の手当があります。それら全てを合算して労働時間で割った単価が最低賃金以上であれば良いかと言うとそうではなく労働と直接関係のない家族手当の様な手当類は除いて計算することになり、次のものが最低賃金算出に当たって除かれる手当類になります
(1) 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
(2) 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
(3) 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
(4) 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
(5) 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜
  割増賃金など)
(6) 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

「(2)1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」については、悪用しようとすれば悪用できるもので、実際に次のような例がありました。相談があったのはブラジル人で、能率給として労働時間に400円を乗じた額が支給されますが、これが2カ月まとめて支給されていたものです。前月分を能率給1として、当月分を能率給2としてそれぞれ支給されていたもので、形の上では「1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」に該当します。しかし単純に1か月遅らしているだけの話しで、こうした例ではこの規程に該当しないとの判例もあり、清算させたことがありました。

【最低賃金の減額の特例】第7条
 労働者の能力の問題など特殊なケースの場合には、最低賃金を下回った賃金の支払いが認められています。ただし、都道府県労働局長の許可を受けることが条件となります。条文には、例外となるものが4つほど列挙されています。このうち身近なものとしては「@精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者」があります。減額率については「同一又は類似の業務に従事する労働者であって、減額しようとする最低賃金額と同程度以上の額の賃金が支払われているもののうち、最低位の能力を有するものの労働能率の程度に対する当該掲げる者の労働能率の程度に応じた率を百分の百から控除して得た率」とされています。以前、知的障害者で1時間100円と言う例がありました。労働局長が許可する様な金額ではありませんが、親御さんとしては行く場所があれば良いと言う現実もありますし・・・。

【派遣労働者の最低賃金】第13条
 派遣会社の所在地に適用される最低賃金ではなく、派遣先の会社の所在地に適用される最低賃金が適用されます。

【広島県の最低賃金】
 最低賃金は各県ごとに金額が違っています。またそれぞれの地域の特色に応じて産業別の最低賃金も定められています。当然、当該県内で働くすべての労働者に適用され、年齢・性別・雇用形態[常用・臨時・パート・アルバイト等]の別を問いません。

 広島県最低賃金  769円  H27.10. 1発効
 (産業別最低賃金)
 自動車・同附属品製造業  833円  H27.12.31発効
 広島県船舶製造  875円
 電気機械器具、情報通信機械器具製造  813円