身近にある労働の法律−5
労働災害の予防と被災者救済


造船会社を書類送検

 三原労働基準監督署は8日、大崎上島の造船会社「伸和産業」と同社の男性取締役(57)を労働安全衛生法違反の疑いで地検呉支部に書類送検した。/発表では、同社と取締役は今年8月3日、同町の同社工場内で、鉄製の船体ブロック(高さ約2.5b、横約4b、厚さ約6ミリ)をつなぐ溶接作業を行なっていた技能実習生の30歳代の中国人男性に対し、危険回避用の保護ヘルメットを着用させていなかった疑い。/男性は同日、作業中に倒れた船体ブロックの下敷きになって死亡した。  (読売新聞H27.12.10)

 労働者を守る法律をひとまとめにして労働法と呼びます。その中心になるのが労働時間、休日・休暇また賃金などの労働条件を扱っている労働基準法です。労働者が仕事中に傷病を蒙ることもありますし、そうしたことの無い様に職場環境や労働者の健康に配慮する義務等を、また万一災害が発生した時のために補償する義務を使用者に義務づける必要があることから、労働基準法の中には労働災害や安全衛生についても定めています。しかしこの法律の中だけで全てのことを規定することができない為、労働者災害補償保険法と労働安全衛生法として別途法律がつくられています。労働者安全衛生法は事故防止を目的として、労働者災害補償保険法は事故が発生した後の労働者救済のための治療費や休業補償などについて定めています。この新聞記事の事故についても当然この二つの法律が関係してくることになります。簡単にこの法律の内容を紹介します。その前に過去1年ほどの間に広島市周辺で発生した技能実習生の死亡事故で目に付いたものを拾ってみました。ちなみにH25年度の技能実習生の全死亡数は27人でした。
年 月
発生地
国 籍
内   容
26年12月 呉市 インドネシア 漁船と砂利運搬船の衝突事故で技能実習生1名と雇用主が死亡(男)
27年07月 東広島市 ミャンマー 技能実習生2名が交通事故に遭い1名が死亡(女)
27年08月 豐田郡 中国 作業中に倒れた船体ブロックの下敷きになって死亡(男)
27年10月 岩国市 フィリピン 水道管掘削中土砂崩壊で技能実習生と日本人が各1名死亡(男)

 この記事は労災死亡事故の報告ではなく、災害防止のための安全措置が取られていなかったことから労働安全衛生法違反として検察庁に送検した報告です。建設現場や造船所や化学物質を取り扱う職場にとどまらず普通の事務所であっても職場には様々な危険が潜んでいます。新聞記事の職場は造船所でした。高所作業もあれば、重量物も扱い溶接や塗装などの化学物質なども扱うなど身近に危険がある職場です。船体ブロックをつなぐ溶接作業中であるにもかかわらずヘルメットを着用していなかったとあります。造船所にしても建設現場にしてもヘルメットを着用しないことは考えられない話です。各事業所で守らなければいけない事項は労働安全規則に非常に細かく定められています。この事故の保護帽の着用については第539条に次のように定められています。

第539条 事業者は、船台の附近、高層建築場等の場所で、その上方において他の労働者が作業を行なつているところにおいて作業を行なうときは、物体の飛来又は落下による労働者の危険を防止するため、当該作業に従事する労働者に保護帽を着用させなければならない。
2 前項の作業に従事する労働者は、同項の保護帽を着用しなければならない。

 また、先の表の、岩国市で発生した土砂崩壊で生き埋めになった事故では、「岩国労働基準監督署は、土砂崩落防止に土留めが必要だった可能性があるにもかかわらず怠ったとみて、労働安全衛生法違反の疑いで調べる。」(山口新聞)と報道されています。労働安全衛生法で私たちになじみの深いところでは、定期健康診断や事務所の環境衛生点検、また50名以上の事業所には衛生管理者や産業医の選任また衛生委員会や安全委員会の設置や安全衛生教育の実施などが身近なものとしてあります。当然こうした決まり事を守っていない会社に対しては罰則が課されますし、安全管理義務違反として労災保険法に定められた給付以外に損害賠償の責任を会社は負うことになります。会社によっては死亡事故に対して3000万円程度の弔慰金を無条件で支払う規定を設けています。もし会社の対応に不満を持たれて裁判に進むとなるとこの金額では収まらないのではないでしょうか。
 不幸にして事故が発生すると被災した労働者に対して労働者災害保険法から治療費や休業補償費等の給付がされますのでどのような給付があるか見ておきます。なお通勤途上で発生した傷病も対象とされていますが、労働基準法は通勤途上の災害を対象にしていない為、休業時の最初の3日間の賃金保障や解雇制限等労働災害と扱いが異なるところがあります。なお労働者災害保険法の保険料は全額事業主負担となっています。

@療養補償給付

傷病が治癒するまで治療費が支給されます。柔道整復師等も含まれる。

A休業補償給付

休業後4日目より支給される。(労災には労基法で3日間の休業補償が必要。)

B傷病補償年金

事故発生日から1年6か月たった時点で治癒・症状固定しておらず障害等級3級以上に該当する人に休業補償給付に替えて支給される

C障害補償年金

症状固定した日に障害等級7級以上に該当していれば障害等級に応じて支給される。障害等級8級から14級に該当していれば一時金が支給される。

D介護保障給付

傷病保障年金・障害補償年金の内1級の者及び2級の精神・神経の障害及び胸部臓器障害があり現に介護を受けているものに対して支給される。

E葬祭料

死亡した時に支給される。

F遺族補償年金

死亡した時遺族に対して支給される。遺族がいないときは一時金が支給される。

※なお、@、D、Eを除いて別途特別給付金が支給される