メンタルヘルスマネッジメント検定試験1種から
〜 時間外労働・休日労働の削減 〜



 メンタルヘルスもネッジメント検定1種の試験(注1)が10月19日(日)に終わり、ほっとしていますが、自分なりに準備が終わった最後の10日程の期間は消化試合的にのんびりしたというか、肩が凝り、疲れが溜まり、うつ病にかかったのではないかと思いながら当日を迎えました。この試験は4択50問が2時間と論述問題1時間の二つからなり、論述の問題は経理部門の状況を説明した事例から時間外労働が多い主な原因を3つ指摘し、それぞれに対応した時間外労働削減策を述べる問題と長時間労働・過重労働がメンタルヘルス不調を引き起こす理由を250字以内で説明するものでした。過重労働により精神疾患を発症した場合の企業の責任やメンタルヘルス不全者に対する職場復帰などの問題を予想していたことから、こうした問題は択一では出るかもしれない程度の感覚でいたところ論述問題で出題されたことは全く想定外のことでした。しかし、今大きな問題となっているメンタルヘルスの問題の大半がこの過重労働に起因していることを考えると業務また組織の見直しを行い時間外労働を削減することから考えなければならないのは当然のことかもしれません。問題文の中にもあった決算報告の早期化、人員削減の問題、月曜日の定例報告などの問題は確かに精神的な大きなストレスとなりますし、どこの職場でも期日に間に合わせるための時間外労働や休日労働をせざるを得ないことは当然のこととして、不満を持ちながらも抜本的対策を考えることもなく、受け入れているのが現実ではないでしょうか。そうしたことから会社全体の業務の進め方また各部署の業務の流れなどとの関係で労働時間を見直して見る必要があるとの問題提起ではないかと感じています。今回、問題とされたと思われる部分を通して時間外労働の削減について見ていきたいと思います。

 本題に入る前に、この問題への取組みの必要性の一つに、会社は労働者の安全や健康を確保する義務があります。労働者の健康確保については労働基準法や労働安全衛生法によって定期健康診断や有害業務従事者に対する特定健康診断また夜間業務従事者からの申し出による検診また時間外労働時間の多い労働者への医師による面接指導などまた事業場の環境整備など法律により定められたことは最低限行わなければなりませんが、こうした法規制に止まらず、労働者の健康に配慮する義務を会社は負っています。この健康配慮義務は労働基準法や労働安全衛生法から発生するものではなく労働契約に基づく信義則の原則から発生する問題となりますので、健康診断等法律に定められている措置をおこなっているからといって免責となるものではありません。民法の契約の規定を根拠としたものであるため当然こうした安全配慮義務違反があれば損害賠償請求の問題が発生してきます。過労死や精神疾患による自殺が増加するにしたがって労災認定を巡るトラブルから新聞等でよく目にするようになっています。

 本題の労働時間のことですが、労働基準法第32条で1週40時間1日8時間を超えて労働させてはならない。これを超える場合には第36条の労使協定が必要になるとされています。問題は「1週40時間1日8時間」を固定したものとしてではなく、状況に応じて変動させたり、振替休日制度を活用すればある程度解決できる問題とも考えられます。今回問題となった点は、(1)月次、半期、四半期決算書の作成と作成期日の早期化、(2)職人気質で労働時間管理に関心のない係長、(3)人員減になった部署での毎週月曜日朝の経営幹部会への資金繰り等の報告書作成の問題などです。こうした問題を考える場合、それぞれの部署々々の問題としてのみ考えるのでなく会社組織の問題として取り組む必要があるといえます。業務処理の流れ、組織間の連携、人員配置の問題そして労働時間がどのように設定されているのかなどの問題を検討しなおさず、時間外労働削減の号令の下に、部署ごとの問題としてしまえばサービス残業に繋がり、表面上は時間外削減効果が見られても、水面下で過労死予備軍をつくり出すことにもなりかねません。改善策検討課題として「1週40時間1日8時間」の呪縛から開放され、変形労働時間制、フレックスタイム制、裁量労働制また事業場外のみなし労働時間制などを業務の実態に合わせて導入することが必要だろうといえます。ここで問題となっている経理部門であれば事前に業務が忙しくなる日は分かっていますから変形労働時間性を導入することで解決できるといえます。タクシー業界には隔日勤務という制度があります。1回の乗務で2日分の16時間乗務を行うというものです。この勤務形態では「1週40時間1日8時間」という考え方はできませんので労働基準法第32条の2に規定されている1ヶ月単位変形労働時間制を採用しています。これにより1日8時間の上限はなくなり、1ヶ月を平均して週40時間労働になれば良いとするものです。1日から3日までを10時間労働とし、ここでオーバーしている6時間を4日〜9日の勤務時間を7時間にすれば時間外労働は発生しないことになります。当然、10時間または7時間労働とした日にその時間を超えて労働すればその部分は時間外労働となります。また月曜日朝の会議への資料作成に対しては休日振替制度、すなわち予め日曜日を出勤日とし、その代わり水曜日を休日とするものです。これにより休日労働は発生しないことになります。この両者を組み合わせることによって時間外労働・休日労働は減少するはずです。こうした労働時間制度の改定となれば就業規則の変更の問題とも関係し一部署で解決できる問題ではなくなってしまいますし、出来れば企業全体の問題として決算書作成日程や幹部会開催日の検討も含めて労働時間削減に向けて取り組む必要があるといえます。

 また、「(2)職人気質で労働時間管理に関心のない係長」の問題は、この係長の問題としてよりも労働者一人ひとりの業務に対する心構えの問題として捉えられます。所定労働時間内の労働密度を高めること、また部署内でお互いの業務に関連があったり、同じようなデータを利用するといった業務は多いのではないでしょうか。それならば基礎データを作成すれば同時に関連の業務に反映されるようにパソコンソフトを作り直すことにより改善される部分があるのではないでしょうか。意外とこういった視点からの部署内の業務見直しは少ないのではないでしょうか。


(注1)  大阪商工会議所が実施しているこの検定試験には、1種(マスタ−コ−ス)、2種(ラインケアコ−ス)と3種(セルフケアコ−ス)があり、1種は、社内のメンタルヘルス対策の推進を担当する人事労務担当者・管理者向けで、メンタルヘルス関係の施策の企画・立案・実施が出来るようになることを目標としています。2種は、管理職向けで、部下からの相談への対応やセルフケアが出来るようになることを目的としています。3種は、社員自らが自己のメンタルヘルスの状況・状態を把握することを目的としています。
メンタルヘルスマネッジメント検定試験HP:http://www.mental-health.ne.jp/