メンタルヘルスマネッジメント検定−2
〜過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置等〜

 前回は「労働者の心の健康の保持増進のための指針」の概略を見ましたので、今回は、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」と「過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置」についてみていきます。
 この二つが目的としているところは、それぞれの冒頭に「長時間にわたる過重な労働は疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられ、さらには、脳・心臓疾患の発症との関連性が強いという医学的知見が得られている。働くことにより労働者が健康を損なうようなことはあってはならないものであり、当該医学的知見を踏まえると、労働者が疲労を回復することができないような長時間にわたる過重労働を排除していくとともに、労働者に疲労の蓄積を生じさせないようにするため、労働者の健康管理に係る措置を適切に実施することが重要である。」と述べられています。こうしたことを防止するための対策として国の取り組み方を前者で、事業主の取り組みを後者で定めています。

【過重労働による健康障害防止のための総合対策】
1. 過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置等の周知徹底
2. 過重労働による健康障害防止のための窓口指導等
 @36協定における時間外労働の限度時間に係る指導の徹底 (労使協定提出時に)
  ・限度基準の遵守(規準オーバーのものについては労働者代表から事情聴取する)
  ・特別条項付については臨時の業務への限定と延長できる時間を最小限のものとする
  ・月45時間超のものについて45時間以内とするよう指導
  ・休日労働を最小限とするよう指導
 A裁量労働制に係る周知指導 (労使協定提出時に)
  ・労使協定提出時に事業主が講ずべき処置の内容の周知
 B労働時間等の設定の改善に向けた自主的取組の促進に係る措置
  ・労働時間改善設定コンサルタントの活用措置
3. 過重労働による健康障害防止のための監督指導等
 対象となる事業所は、時間外労働・休日労働が月45時間を超えている恐れのある事業所。
 @産業医・衛生管理者・衛生委員会の設置・活動状況の確認指導
 A健康診断と実施後の意志の意見聴取等その後の実施状況の確認指導
 B労働者の時間外・休日労働の状況確認と面接指導の実施、その後の措置等の実施指導
 CBの面接指導実施のための手続き状況の確認指導
 DBの指導に従わない事業者に対する労安法第64条第4項に基づき臨時の健康診断その他必要な事項の実施の指示を行う
 E50人未満の事業場には必要に応じて地域産業保健センターの活用の勧奨
4.過重労働による業務上の疾病が発生した場合の再発防止対策を徹底するための措置
 @過重労働により業務上疾病を発生させた事業場に対する原因究明と再発防止措置の指導
 A@の事業場で労働基準関係法令違反がある場合の司法処分を含めた厳正な対処

【過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置】
1.時間外・休日労働時間の削減
 ・時間外・休日労働を45時間以内にするように努めること
 ・休日労働の削減
 ・裁量労働制対象労働者及び管理・監督者に対する注意喚起の措置に努めること
2.年次有給休暇取得促進
 ・職場環境の整備と計画的付与制度の活用
3.労働時間等の設定の改善
 ・「労働時間等設定改善指針」に留意した措置に努めること
 この指針では、労働者の健康と生活に配慮しつつ、多様な働き方に対応できるよう、労働時間、休日数、年次有給休暇等の設定を改善することが求められている。
4.労働者の健康管理に係る措置の徹底
 @健康管理体制の整備、健康診断の実施等
  ・産業医、衛生管理者や衛生委員会等の 体制の整備
  ・労安法に基づく各種健康診断の実施と結果による医師の意見聴取。特に、深夜業の6ヶ月ごとの健康診断の実施への留意
  ・深夜業十時労働者に対する自発的健康診断受診支援助成金や血圧とうに異常所見のある労働者に対する二次健康診断等給付制度の周知
 A長時間にわたる時間外・休日労働を行った労働者に対する面接指導等
  ・時間外・休日労働が1か月45時間を超える労働者で健康配慮が必要と認められるものへの面接指導等が望ましいこと。医師による面接指導の申し出があった者に対しては、100時間を超える場合には義務、80時間を超える者に対しては努力義務としている。
  ・医師の面接指導に対する意見聴取やその結果に応じて労働時間短縮・深夜業の回数の減少また、メンタルヘルス不調がある場合には精神科医等との連携を図り対応する。
・面接指導に当たっての手続き等制度的な体制の確立
 B過重労働による業務上の疾病を発生させた場合の措置
 ・産業医の助言また必要に応じて労働衛生コンサルタントの活用を図り、原因の究明と再発防止の徹底をはかる。

【参考】
 この検定試験には、1種(マスタ−コ−ス)、2種(ラインケアコ−ス)と3種(セルフケアコ−ス)があり、1種は、社内のメンタルヘルス対策の推進を担当する人事労務担当者・管理者向けで、メンタルヘルス関係の施策の企画・立案・実施が出来るようになることを目標としています。2種は、管理職向けで、安全配慮義務に基づいた対応が出来るようになることを目的としています。3種は、社員自らが自己のメンタルヘルスの状況・状態を把握することを目的としています。
 メンタルヘルスマネッジメント検定試験HP:http://www.mental-health.ne.jp/

@

「セルフケア」
 「心の健康づくりを推進するためには、労働者自身がストレスに気づき、これに対処するための知識、方法を身につけ、それを実施することが重要である。」

A

「ラインによるケア」
 「管理監督者は、部下である労働者の状況は日常的に把握しており、また、個々の職場における具体的なストレス要因を把握し、その改善を図ることが出来る立場にあることから職場環境等の把握と改善、労働者からの相談対応を行うことが必要である。」

B

「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」
 ここには、産業医、保健婦、衛生管理者や人事労務担当者が含まれています。

C

事業場外資源によるケア」
 上記以外の専門的知識を有する事業場外の資源を指しており、「労働者が相談内容等を事業者に知られることを望まない場合」などに有効とされています。また、小規模事業所の場合には、「必要に応じて地域産業保健センタ−等の事業場外資源を活用することが有効である。」としています。


 こうした四つのケアを進めるに当たっては当然それぞれの連携をとりながらメンタルヘルスケアを具体的に進める必要があり、そのための方策として次の四つのことが挙げられています。

@

「メンタルヘルスケアを推進するための教育研修・情報提供」
 全労働者を対象にしたもの、管理監督者を対称にしたもの、そして事業場内産業保健スタッフ等を対象にしたものに分けられます。

A

「職場環境の把握と改善」
 「労働者の心の健康には、作業環境、作業方法、労働者の心身の疲労回復を図るための施設及び設備等、職場生活で必要となる施設及び設備等、労働時間、仕事の量と質、セクシャルハラスメント等職場内のハラスメントを含む職場の人間関係、職場の組織及び人事労務管理体制、職場の文化や風土等の職場環境等が影響を与えるものであり、職場のレイアウト、作業方法、コミュニュケ−ション、職場組織の改善などを通じた職場環境の改善は、労働者の心の健康の保持増進に効果的である」ため、これらの状況の洗い出しと改善が必要となります。

B

「メンタルヘルス不調への気づきと対応」
 労働者自身また家族が労働者のメンタルヘルス不調に真っ先に気づくことから、事業者はストレスやメンタルヘルスケアに関する基礎知識、事業場のメンタルヘルス相談窓口等の情報を提供することが望ましいとされています。

C

「職場復帰における支援」
 職場復帰プログラムの策定やその実施方法の明確化が必要になります。


 こうした流れの中で、メンタルヘルスケアを実施していくスタッフはきわめて微妙な情報を収集しなければならないため、「労働者の個人情報を主治医等の医療職や家族から取得する際には、事業者は予めこれらの情報を取得する目的を労働者に明らかにして承諾を得るとともに、これらの情報は労働者本人から提出を受けることが望ましい。」とされています。当然いろいろな情報が集まってきますし、それを会社に提供する必要もあることから、次の三つのことが定められています。

@

 「産業医等が、相談窓口や面接指導等により知りえた健康情報を含む労働者の個人情報を事業者等に提供する場合には、提供する情報の範囲と提供先を必要最小限と刷ること。その一方で、産業医等は、当該労働者の健康を確保するための就業条の措置を実施するために必要な情報が的確に伝達されるように、集約・整理・解釈するなど適切に加工した上で提供すること。」

A

 「事業者は、メンタルヘルスに冠する労働者の個人情報を取り扱う際に、診断名や検査値等の生デ−タの取扱については、産業医や保健師等に行わせることが望ましいこと。特に、誤解や偏見を生じるおそれがある精神障害を示す病名に関する情報は、慎重に取り扱うことが必要であること。」

B

 「事業者は、衛生委員会等での審議を踏まえ、これらの個人情報を取り扱う者及びその権限、取り扱う情報の範囲、個人情報管理責任者の選任、事業場内産業保健スタッフによる生デ−タの加工、個人情報を取り扱う者の守秘義務等について、あらかじめ事業場内の規程等により取り決めることが望ましい。」また、規程の周知と健康情報の取扱の重要性や望ましい取扱方法についての教育を求めています。



【参考】
 この検定試験には、1種(マスタ−コ−ス)、2種(ラインケアコ−ス)と3種(セルフケアコ−ス)があり、1種は、社内のメンタルヘルス対策の推進を担当する人事労務担当者・管理者向けで、メンタルヘルス関係の施策の企画・立案・実施が出来るようになることを目標としています。2種は、管理職向けで、安全配慮義務に基づいた対応が出来るようになることを目的としています。3種は、社員自らが自己のメンタルヘルスの状況・状態を把握することを目的としています。
 メンタルヘルスマネッジメント検定試験HP:http://www.mental-health.ne.jp/