メンタルヘルスマネッジメント検定−1
労働者の心の健康の保持増進のための指針から

 バブルが弾け、リストラの嵐もおさまったようでありながら、 (株)西友や日本ビクタ−(株)が正規職員を対象にそれぞれ11.4%と17.7%の早期退職を募集しているように労働者を取り巻く環境は厳しい状況にあります。また、終身雇用・年功序列といった制度も崩れ、派遣や契約社員などの非正規労働者が増え、一方では成果主義や能力主義によって痛めつけられる状況となってきています。こうした状況から、正規・非正規を問わず労働密度・労働時間が増えたことから精神的障害や過労死が誘発される状況もみられます。1999年9月に「心理的負荷による精神障害にかかわる業務上外の判断指針」が公表されたことに伴い今まで無視されていた精神疾患の労災認定が表舞台に現れてくることとなりました。一方、自殺についても、平成7年には14,231人であったものが、平成12年には21,656人と大きく増えています。これを受けて平成18年には自殺対策基本法が定められました。今、日本はストレスの塊といっていい状況にあるのかもしれません。
 こうした状況を受けて平成17年度に労働安全衛生法の改正がおこなわれ、第66条の8が追加されました。この条文と省令をみると「休憩時間を除き一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が一月当たり百時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者」(規則第52条の2)に対して医師による面接指導を行わなければならない、と定めています。こうした危険因子を背負って仕事に従事している労働者を守るため、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」、「過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置」や「労働者の心の健康の保持増進のための指針」が出されています。一方、こうした状況下では、メンタルヘルス面での健康管理対策を行わなければ業務遂行に支障が生じる事態も予測されるとの危機感を抱いたためか大阪商工会議所は「メンタルヘルスマネッジメント検定」を平成18年から始めました。先日この検定があることを知り、T種(マスタ−コ−ス)のテキストを買ってきて、勉強を始めましたので随時内容の紹介をしていきたいと思います。
 まず、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」によってどのような対策を会社が取っていく必要があるのかを見ていきます。
 「心の健康づくりは、労働者自身が、ストレスに気づき、これに対処すること(セルフケア)の必要性を認識することが重要である。」と労働者自身が身体の健康に配慮するのと同じように自分自身の心の問題についても感心を高める必要があることが大前提になります。労働者自身の心を悩ませる問題は家庭や交友関係また職場とさまざまな要因がありますが、職場における要因については、労働者自身では解決できず、会社の役割が大きなウエイトを占めているといわざるを得ません。そのため、会社がメンタルヘルスケアに取り組むための基本方針を設定する必要がありますし、それに基づいた計画が策定されなければなりません。具体的な実施計画の柱となるものに次の4つのものがあり、これらを継続的にまた計画的に実施する必要があります。

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「セルフケア」
 「心の健康づくりを推進するためには、労働者自身がストレスに気づき、これに対処するための知識、方法を身につけ、それを実施することが重要である。」

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「ラインによるケア」
 「管理監督者は、部下である労働者の状況は日常的に把握しており、また、個々の職場における具体的なストレス要因を把握し、その改善を図ることが出来る立場にあることから職場環境等の把握と改善、労働者からの相談対応を行うことが必要である。」

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「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」
 ここには、産業医、保健婦、衛生管理者や人事労務担当者が含まれています。

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事業場外資源によるケア」
 上記以外の専門的知識を有する事業場外の資源を指しており、「労働者が相談内容等を事業者に知られることを望まない場合」などに有効とされています。また、小規模事業所の場合には、「必要に応じて地域産業保健センタ−等の事業場外資源を活用することが有効である。」としています。


 こうした四つのケアを進めるに当たっては当然それぞれの連携をとりながらメンタルヘルスケアを具体的に進める必要があり、そのための方策として次の四つのことが挙げられています。

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「メンタルヘルスケアを推進するための教育研修・情報提供」
 全労働者を対象にしたもの、管理監督者を対称にしたもの、そして事業場内産業保健スタッフ等を対象にしたものに分けられます。

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「職場環境の把握と改善」
 「労働者の心の健康には、作業環境、作業方法、労働者の心身の疲労回復を図るための施設及び設備等、職場生活で必要となる施設及び設備等、労働時間、仕事の量と質、セクシャルハラスメント等職場内のハラスメントを含む職場の人間関係、職場の組織及び人事労務管理体制、職場の文化や風土等の職場環境等が影響を与えるものであり、職場のレイアウト、作業方法、コミュニュケ−ション、職場組織の改善などを通じた職場環境の改善は、労働者の心の健康の保持増進に効果的である」ため、これらの状況の洗い出しと改善が必要となります。

B

「メンタルヘルス不調への気づきと対応」
 労働者自身また家族が労働者のメンタルヘルス不調に真っ先に気づくことから、事業者はストレスやメンタルヘルスケアに関する基礎知識、事業場のメンタルヘルス相談窓口等の情報を提供することが望ましいとされています。

C

「職場復帰における支援」
 職場復帰プログラムの策定やその実施方法の明確化が必要になります。


 こうした流れの中で、メンタルヘルスケアを実施していくスタッフはきわめて微妙な情報を収集しなければならないため、「労働者の個人情報を主治医等の医療職や家族から取得する際には、事業者は予めこれらの情報を取得する目的を労働者に明らかにして承諾を得るとともに、これらの情報は労働者本人から提出を受けることが望ましい。」とされています。当然いろいろな情報が集まってきますし、それを会社に提供する必要もあることから、次の三つのことが定められています。

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 「産業医等が、相談窓口や面接指導等により知りえた健康情報を含む労働者の個人情報を事業者等に提供する場合には、提供する情報の範囲と提供先を必要最小限と刷ること。その一方で、産業医等は、当該労働者の健康を確保するための就業条の措置を実施するために必要な情報が的確に伝達されるように、集約・整理・解釈するなど適切に加工した上で提供すること。」

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 「事業者は、メンタルヘルスに冠する労働者の個人情報を取り扱う際に、診断名や検査値等の生デ−タの取扱については、産業医や保健師等に行わせることが望ましいこと。特に、誤解や偏見を生じるおそれがある精神障害を示す病名に関する情報は、慎重に取り扱うことが必要であること。」

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 「事業者は、衛生委員会等での審議を踏まえ、これらの個人情報を取り扱う者及びその権限、取り扱う情報の範囲、個人情報管理責任者の選任、事業場内産業保健スタッフによる生デ−タの加工、個人情報を取り扱う者の守秘義務等について、あらかじめ事業場内の規程等により取り決めることが望ましい。」また、規程の周知と健康情報の取扱の重要性や望ましい取扱方法についての教育を求めています。



【参考】
 この検定試験には、1種(マスタ−コ−ス)、2種(ラインケアコ−ス)と3種(セルフケアコ−ス)があり、1種は、社内のメンタルヘルス対策の推進を担当する人事労務担当者・管理者向けで、メンタルヘルス関係の施策の企画・立案・実施が出来るようになることを目標としています。2種は、管理職向けで、安全配慮義務に基づいた対応が出来るようになることを目的としています。3種は、社員自らが自己のメンタルヘルスの状況・状態を把握することを目的としています。
 メンタルヘルスマネッジメント検定試験HP:http://www.mental-health.ne.jp/