「長時間労働で未払い賃金」外国人実習生提訴


 外国人技能実習生として長崎県内の繊維会社で働いていたバングラデシュ国籍の女性(24)が3日、低賃金で長時間労働を強いられたとして、同社と社長らに未払い賃金など約880万円の支払いを求めて京都地裁に提訴した。代理人によると、1年目の外国人実習生から労働関係法令を適用する改正入管難民法が2010年に施行されて以降、未払い賃金を求める訴訟は初めてとみられる。
 訴状によると、女性は2011年に来日、同社が実習を受け入れた。毎月400時間以上働いたのに残業代は支払われず、月10万円の賃金から同社や仲介業者が住居費や仲介料として9万円を差し引き、手元に1万円しか残らなかった。休みも月2、3日しかなく、昨年8月に会社側に待遇改善を訴えたところ、帰国させられそうになったという。
 女性は現在、京都府内に在住。3日の記者会見で「夢を持って来日したが、深夜までの労働は言葉では表せないほどつらかった」と訴えた。同社の社長は取材に「賃金は出来高払いで、残業代が発生しない契約だった。ただ、説明不足は反省している。誠実に対応したい」と話した。

(2013年4月4日 読売新聞)

 長崎県で発生した賃金未払い問題を京都地裁に提訴したという報道がありました。この報道を見て、また経営者のコメントを見てこれは人間に対する扱いかと憤りを禁じえません。こうした状況が当たり前に行われているとは思いませんが、技能実習生を巡るこれまでの報道や報告を見ると現実にこのような例がいくつも報告されています。繰り返し問題とされている状況を考えれば外国から技能実習生制度は奴隷制度との非難も認めざるを得ないでしょう。こうした非難に応えるためにも労働問題と同時に人権問題として会社だけでなく協同組合に対しても訴えを起こしていく必要性を強く感じます。

【毎月400時間を超える残業、休みも月2、3日】
 すさまじい労働時間です。労働実態に基づいてこの時間を分解すると、法定休日(日曜日)が月3回とすると1か月27日労働となります。
(1)1日の平均労働時間は400時間÷27日=14.8時間(毎日6.8時間の残業)
(2)所定労働 :22日×8時間=176時間
(3)休日労働 :8時間×1回+6.8時間=14.8時間
(4)所定時間外:400時間−176時間−14.8時間=209.2時間
 過労死の認定基準が1か月100時間を超える残業ですからこれをはるかに超えています。

【賃金10万円】
 現在の長崎県の最低賃金653円で計算すると1か月の賃金は306,669円となります。
(1)所定労働:176時間×653円=114,928円
(2)休日労働:14.8時間×653円×1.35=13,047円
(3)所定時間外:209.2時間×653円×1.25=170,760円
(4)深夜労働:1.8時間×27日×653円×0.25=7,934円

【賃金からの控除】
(1)会社からの控除
 会社が賃金から控除する項目としては社会保険料、雇用保険料、所得税そして住居費が考えられます。これも現在の状況で、所定労働時間働いたときの賃金114,928円として計算すると控除された4万円の内訳は下記の様になります。
   厚生年金9,891円、健康保険5,935円、雇用保険689円
   所得税630円、   住居費23,005円
 これで見る限り控除額に特別問題はありません。社会保険にも雇用保険にも加入させていないなら4万円の住居費となり同じ部屋に同期生3名が同居とすると12万円の住居費となり。光熱費を考えても異常に高い額となります。
(2)仲介業者からの控除
 仲介業者とは協同組合と別のブローカーを意味しているのでしょうか?協同組合なら会社から管理費を徴収しても本人たちからの徴収は考えられません。この5万円は管理費なのか、この制度を食い物にする者の取り分なのでしょうか。いずれにしてもありえない話です。
 先日、フイリピン人技能実習生から来日前に日本語や技術の研修を3カ月受けるがその費用として最近来る技能実習生たちは30万円の費用負担が必要で、日本に来てから毎月1万円づつ返済しているとのことでした。彼は6万円だったとのことでした。2010年の入管法の改正の影響で増額されたのでしょうか?

【待遇改善を訴えたところ、帰国】
 よくある話で会社に権利を主張する技能実習生は強制的に排除されてしまいます。帰国させてしまえばこうした賃金未払いの問題は無くなってしまいますがたまたま今回はうまくゆかず、逃げられてしまい、支払交渉に誠意を持って対応しなかったため裁判に進んだと考えられます。
 他に技能実習生の同僚が何名いたのか分かりませんが、従業員50名以下の会社であれば1年に3名受け入れが可能ですから、最高9名の技能実習生がいたのかもしれません。残りの技能実習生たちは裁判に加わっていないため未払賃金は問題とならないまま帰国するのでしょうか。これまでも私宛の委任状を貰って労働基準監督署やハローワークに行っても委任状の無い人達の問題は無視されてしまいます。場合によっては、協同組合等が本人たちを脅して委任取消を連絡してくることもあります。こうした実態があり、一名分でも委任状があれば行政が調査に入って是正指導してもらいたいものです。

【出来高払いで残業代は発生しない契約】
 別の報道では5時までは最低賃金で、それ以降は出来高払いとのことです。技能実習生は通常の労働者ではなく、入局管理局に提出されている技能実習計画書に基づいて労働契約を結んでいるので、基本的には労働基準法に基づいた1日8時間労働、1週40時間の労働契約を結んでいると考えられます。当然賃金は時間給か月給で決められています。こうした出来高給や残業が発生しない賃金制度が適用されていることはあり得ません。縫製でよくあるのが、ボタン付けやファスナー付とかを内職としてやらしており、それも技能実習生達が納得してやっていると説明してくるとよく聞きます。たとえ出来高制が認められるとしても、出来高給をそれに対する総労働時間で除した金額は最低賃金を上回っていなければ最低賃金法違反となります。技能実習生度を悪用している会社の残業代逃れの常套句といえます。

 山口県玖珂町にある縫製の会社でも同じような問題が発生して裁判が進んでいます。この会社では雇用調整助成金の詐欺も働いており、既に会社は解散させ、従業員に経営させた形にして事業を継続させています。こうなると裁判に勝てても、判決で確定した未払い賃金を貰える可能性は無いと言わざるを得ません。身を粉にして働いている技能実習生が裁判で勝利しながら、1円も得られないまま帰国せざるを得ないかもしれないのが技能実習生制度です。裁判に勝った場合ぐらい、弁護士費用を含めてこの制度に支払を担保させることも必要ではないでしょうか。