雇用契約期間途中での退職・解雇について

 今回は雇用契約期間に関することを考えてみたいと思います。労働基準法第14条で、雇用契約期間を定める時は、3年を超えてはいけない。しかし、60歳以上の人や一定の専門的知識を持っている人の場合には5年を超えてはならないと定めているので、特別問題となることはありません。よく問題となるのは、雇用契約期間を1度以上更新している場合、更新をしないことが出来るかといった雇い止めの問題だといえます。しかし、今回は、こうした問題ではなく、雇用契約期間を定めている場合、その期間内に雇用契約を解除するが出来るのか?要するに、1年間の雇用契約をした場合、1年未満で労使とも雇用契約を解除できるのかどうかといった問題です。あまり関心をもたれないというか、終身雇用の労働者ではなく、臨時的な雇用形態の労働者に関することですから、労使共に雇用契約期間前の解除も特段問題意識をもたれることもなく済まされているのではないでしょうか。実際、労働者からの辞職の申出があれば認めるでしょうし、育児休業している職員が早めに勤務に復帰するとなれば、代替要員として雇用していた人に早めに辞めてもらうことは普通に行われているかもしれません。

 労働基準法には雇用契約期間中の解約について触れている条文が三つあります。
 一つは、第15条第2項の「明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。」との条文です。雇用契約に定めた労働条件と違う場合には、労働者に雇用契約を解除することが出来る権利を認めているものですが、逆な読み方をすれば、雇用契約期間を定めた場合にはその期間内少なくとも労働者は雇用契約を解除することはできないということになります。

 二番目は、附則第137条です。雇用契約期間が1年を超える場合には、雇用契約期間の初日から、1年を超えた時点以降であれば労働者は雇用契約を解約することが出来るとされています。しかし、5年間の雇用契約が認められている60歳以上の人や一定の専門的知識を持っている人についてはこの規定は認められていません。この規定は、民法第626条で定めている雇用契約期間が5年を超えた場合には、労使共に契約を解除できるとされている規定を労働者が雇用契約に拘束される期間を1年に修正しています。

 三番目は使用者側からの解約について定めた第20条の規定です。「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。」と定められています。第21条に例外規定がおかれており、その一つに、「2箇月以内の期間を定めて使用される者」については、定められた期間内は解雇できないが、その期間を超えて雇用している場合には、解雇予告の規定を適用するとされています。

 以上のことを簡単に言ってしまえば、雇用契約の解約は、労働者は1年間は解約ができないが、使用者は、30日前に解雇予告するか平均賃金の30日分を支払えばいつでも解約できるということになります。ただし、60歳以上の人や一定の専門知識を持っている人は解約できないということになります。

 使用者は何時でも解雇できるようですが、簡単には解雇できないように、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効」(第18条の2)とされますし、解雇するための理由を就業規則等にも明記しておく(第89条)という条件も満たさなければなりませんので、特別な事由がなければ雇用契約期間内の解雇は難しいといえます。

 雇用契約期間を定めている場合の労働基準法の規定以上の様なものですが、民法第628条の規定も考えておく必要があります。「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。」と定められているため、労使ともに1年以内また期間内であっても賃金の支払がない場合、賃金の遅配がある場合、相手に対する重大な背信行為があった場合などの事由があれば雇用契約を解約することができますが、後段の損害賠償の責任の問題が残ってしまいます。客観的に合理的な理由がある場合であっても、雇用契約期間内の雇用契約解除であれば解約以後の期間に対する損害賠償の問題も考えておかなければなりません。また、使用者側の問題として、特段トラブルがなく、円満に解雇が成立したとした場合であっても、各種の助成金を受けようとすると過去に解雇があったかどうかを調査されるという問題があります。

 以上のように雇用期間を定めた雇用の場合いろいろ難しい問題が発生してきますので、労使共に雇用契約書に定めてある雇用期間は途中でも解約可能な期間であるとしておくのが良いといえます。一つの例として産休の代替として採用した場合の例を挙げておきます。

産休時の臨時雇用の場合
1. この雇用は、産休する職員の代員として臨時に雇用するものであり、雇用期間は産休職員の休暇の状況により更新することがあります。
2. 雇用期間の途中であっても、本人の都合により退職することができ、また産休職員の休暇取得の状況また業務の都合等により雇用期間満了とすることがあります。


労働基準法

(契約期間等)
第14条
 労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあっては、5年)を超える期間について締結してはならない。
 1.専門的な知識、技術又は経験(以下この号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
 2.満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。)
 厚生労働大臣は、期間の定めのある労働契約の締結時及び当該労働契約の期間の満了時において労働者と使用者との間に紛争が生ずることを未然に防止するため、使用者が講ずべき労働契約の期間の満了に係る通知に関する事項その他必要な事項についての基準を定めることができる。
 行政官庁は、前項の基準に関し、期間の定めのある労働契約を締結する使用者に対し、必要な助言及び指導を行うことがで
(労働条件の明示)
第15条
 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
 前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
附 則
第137条
 期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。