技能実習生支援の広域連携の事例報告




 技能実習生の問題にかかわっていると様々な問題や思いもかけない相談が舞い込んできます。自分の行動半径内であれば迅速な対応も可能となりますが、遠隔地からの相談となると対応すべきかどうか躊躇せざるを得ないところがあります。今年になって3件遠隔地からの相談がありましたが、十分な対応ができたとは言い難い点も多々ありますが、四国の坂出市に住むインドネシア人技能実習生18名の問題は広域な連携体制ができた例でしたので報告します。
 他の2件の例の一つは広島で保護し帰国までの支援をした技能実習生の友人で愛知県豊橋市の技能実習生達で、残業代の問題で直接私に連絡を取ってきました。契約書と賃金支給明細書を送るよう住所を連絡し、併せて豊橋の教会に連絡して話を聞いてもらうようにしました。その後資料が送られてこないので教会の方で対応できていると考えています。あと一つはいつも通訳をしてもらっている人の所に今治市の技能実習生から電話があり、広島まで相談に来たいとのことでした。日曜日に5名が来て話を聞き、平和公園と広島城観光に連れて行き、いつでも支援するので連絡するように伝えると安心して帰っていきました。まだ問題が発生しているわけではないので連絡待ちの状況といえます。
 今回報告する坂出市の例は切羽詰まった状況のものでした。電話が入ってきたのは6月11日22時29分でした。まずどのような経緯で連絡があったかですが、問題を抱えた技能実習生の友人が知り合いである北九州の大学の先生に連絡をしてきました。先生は一緒に活動している人に相談をして、四国の松山市の社会保険労務士さんを紹介され、連絡をしたが一旦は対応不能と回答されたとのことです。その後、社労士さんは、今年の3月に岡山カトリック教会で開催されたJ−CaRM(注1)全国研修会で私の担当した外国人労働問題の分科会に参加したことを思い出し、対応可能かどうか連絡してこられ、断るわけにもいかず対応可能で連絡してもらったという経緯がありました。これ以降、北九州の先生を仲立ちとして本人たちとのやり取りが始まりました。
 彼らは1か月30日労働で、パスポートを取り上げられており、携帯電話は禁止という状況で、たまたまお祭りの日が休日となり遊びに出ることができ、他の会社で働くインドネシア人の技能実習生と知り合い、自分たちの労働状況のでたらめさに気づき、残業代の支払を社長に話したら帰国させられることになったとのことです。既に彼らの半数が今日外国人登録証を市役所に返しに連れて行かれ、残りは明日市役所に返還に行くことになっているとのことでした。近々帰国させられることは明らかであるため、いつも共働しているスクラムユニオン(広島市)に連絡を取り、坂出市までいつでも動ける体制を取ってもらいました。同時に、松山市の社労士さんに坂出カトリック教会のお御堂に泊まらせてもらうよう交渉を依頼しました。その結果、坂出教会の神父さまからたちまちはお御堂に泊まらせ、その後は鳴門市の空いている研修施設に移動させて保護することが出来ること、また保護に向かうための車も手配もしてもらえるとの連絡がありました。神父さまも社労士さんも四国地区のJ−CaRMの委員として活動されておられるのが幸いしたといえます。
 保護する体制は整いましたが、本人たちはまだ仕事をしているため連絡は夜遅くと限られてしまい、翌12日の23時34分に先生から電話があり、本人たちが22時から保護を依頼するかどうか話し合いをしているがまだ連絡がないこと、また通訳を依頼する2名の居住地が一名は徳島で後一名は琴平在住で幼稚園と小学生の子供がいるとのこと、また徳島にモスクがあるのでそちらでの保護も選択肢として考えられるとの連絡がありました。イスラム教徒は食事の問題もあるし、果たしてキリスト教会のお御堂やその関係の研修施設に住むことに抵抗があるのかないのか、それ以上に通訳の問題が非常に大きな負担としのしかかってきます。最悪の場合は広島のインドネシア人の神父さまを連れて行かなければいけないのかと、いろいろ考えましたが、最初の連絡を受けた時真っ先に思ったのは生活費を支えられるのかということでした。住むところと、生活費と通訳の三つを抜きにしてこの問題には対処できないところがあります。当然、問題がこじれて裁判に進むということもあります。
 こうした状況のなか6月13日の23時19分に先生から、昨日、インドネシアの家族に電話して状況を話したらしく、送出機関が日本の協同組合に連絡し、保証金の返却は保障すること、残業代(金額未定)も支払うと約束してくれたとのことで、全員喜んで何かわからない書類にサインをしたとのことでした。
 毎日残業をしており1時間の残業で計算すると
 815円×1.25×365日×2年=743,870×18名=1,338万円となります。
「二つ返事で支払う」と答えることが出来る額でもありません。先生が、帰国前日に連絡をとると、解決金は、上記概算額の90%程度の額だったとのことで、旅行にも連れて行ってもらったので残りの10%はもらわなくていいとのこと。私自身、全員の合計金額が70万円程度ではなかったのではないかと疑ってしまいます。おまけにこの時期であれば昨年度の住民税の1年分が請求されれば持って帰るものはないのではないかとも考え込んでしまいます。メールの末尾に、彼らの友人の女性たちも同様の状況にありながら、「これも運命だと受け入れている」とのことです。この言葉を聞くと「技能実習制度とは日本国公認の奴隷制度だ」との思いを強く感じてしまいます。受入会社と利害関係のない監査実施機関を設置しなければ何らの改善も図れないといえます。
 結果としては、よかったのか、悪かったのかは別として一つの連携体制ができたこと、またこれまでこうした経験のなかった四国のJ−CaRMがこれを機会に積極的に技能実習生問題に取り組む契機となればと思っています。教会に来るフィリピン人技能実習生達とのパイプづくり、また地元で対応できる組織づくりと地元のユニオンとの関係づくりを進める必要があるといえます。ただ、技能実習生たちの「あきらめ=恐れ」をどのように取り除くかが大きな課題としてあります。

(注1) 日本カトリック難民移住移動者委員会の略称で、日本カトリック教会の総本山であるカトリック中央協議会の一組織であり、その下に、東京、大阪そして長崎の大司教区の組織があり、さらに各司教区またその下の各教区で組織されています。日本に居住する外国人や船舶で移動している船員に対する支援・司牧活動を行っています。