「技能実習制度の見直しに関する法務省・厚生労働省合同有識者懇談会」報告書から
(平成27年1月30日)


 江田島で発生した技能実習生による殺傷事件の裁判が2月27日に結審しました。この裁判の進行中、昨年から行われていた技能実習生制度の見直の有識者懇談会報告書が纏められました。過去3回発生した技能実習生による殺人事件はこの制度の建て前と本音の世界に遠因があると言えるはずですが、この制度の抱える様々な問題は考慮せず労働力不足対策又とりあえず批判に対して取り繕いを行なっておくといった方向で纏められたものといえます。実施時期は27年度中とのことですから、この報告書に沿った形で直ぐに法案が制定され国会を通過し、実施に移されます。
 この報告書の目指す主なところは、50人以下の事業所での受け入れ人数の拡大、介護等受入職種の拡大また2年間実習期間を延長するための技能実習生3号の創設などがあります。一方問題防止対策として制度管理運用機関を新設が予定されています。この報告書から幾つかの点を拾い出してみました。

(1) 監理団体及び実習実施機関のガバナンス強化並びに問題のある機関の排除
@ 「実習実施機関については、実習生との間に労働契約が存在し、労働関係法令による直接規制及び労働基準監督機関による指導がなされていること等も踏まえ、許可制よりも緩やかな届出制」とし、一方監理団体については職業紹介との関連で新たな許可制とする。
A 法務省・厚生労働省の2 省の所管に関わる事項について一貫した指導監督を行うことが望ましいことから、制度管理運用機関を新設し、これに指導監督に関する業務を行わせるものとすべきである。
B 実習生が実習実施機関又は監理団体により不適正な行為を受けた場合には、制度管理運用機関に母国語で申告・相談することができる通報窓口を設置するとともに、実習実施機関又は監理団体は、実習生が前記申告を行ったことを理由に、不利益な取扱いをしてはならないこととし、これを担保するための罰則を整備すべきである。
C 実習生から制度管理運用機関に対し申告があった場合、必要に応じて、当該実習生に対し、一時退避先の提供、実習先変更支援が行われることとすべきである。

(2) 実習生に対する人権侵害行為等の防止及び対策
@ 制度管理運用機関に母国語で申告・相談することができる通報窓口を設置するとともに、実習実施機関又は監理団体に対する罰則を整備すべきである。
A  実習生から制度管理運用機関に対し申告があった場合、必要に応じて、当該実習生に対し、一時退避先の提供、実習先変更支援が行われることとすべきである。
B 実習実施機関又は監理団体が、倒産、解散、経営状況の悪化、人権侵害等の不適正な行為等により、技能実習を継続することが困難となる場合、また実習生から制度管理運用機関に申告・相談があり、同機関が、実習生に責任がないと判断する場合であって、本人が継続して実習を希望し、かつ、実習実施機関及び監理団体による実習先変更等の支援が十分に受けられない場合には、国において、関係者相互間の連絡調整、関係者に対する助言等、実習先の変更等の支援を実施すべきである。
C 2 号実習生及び3 号実習生の予定賃金額を決める際には、それぞれ同一の実習実施機関内の1 号実習生及び2 号実習生の賃金を上回らなければならないこととすべきである。
D 関係法令等に関する啓発活動の推進として、労働関係法令等の概要や行政機関等の申告・相談窓口等の情報を主要な外国語で記載した「技能実習生手帳」の作成及び全実習生への配布を継続すべきである。
 この手帳は問題が多発している協同組合では配布していませんし、実際どの程度配布されているのでしょうか。またJITCOが作成している「かけはし」も実習生の手に届いてはいないようです。制度管理運用機関の新設や労働基準監督署の技能実習の適正化に向けて35人増員するとのことですが、技能実習生の相談を受けている中心は地域ユニオンや民間NPOです。これらの団体との共働関係を造る必要があるといえます。

(3) 技能実習期間の2年延長(技能実習3 号の創設)
@ 優良な監理団体及び優良な実習実施機関においてのみ可能とすべきである。(監理団体が優良であっても、実習実施機関が優良でなければ、当該実習実施機関では3号への移行は認められないこととなる。)
労働基準局は平成25年度に監督指導した結果80%の事業所に違反がみられたと報告しています。優良な実習実施機関は20%しかないと言うことでしょうか??
A 技能実習3 号への移行が可能となる実習生の要件として、具体的には、技能検定3 級相当の実技試験に合格していなければならないこととすべきである。
B 技能実習2 号を修了し、3 号に移行するまでの間には、実習生が家族と離れている期間が長期化すること等に鑑み、一旦帰国(例えば原則1か月以上)することとすべきである。
C 一旦帰国に係る渡航費用は、監理団体又は実習実施機関が負担するものとすべきである。
 この期間の賃金保障また賃金が無いまま社会保険料の徴収や家賃の問題はどうなるのでしょうか。年次有給休暇を一切使用させなければ有休休暇の処理も可能・・・。

(4) 受入れ人数枠の見直し
@ 現行制度の受入れ人数枠は、常勤職員数が50 人以下の実習実施機関は一律3 人まで、51 人以上100 人以下の実習実施機関は6 人までとされている(3年間受入れる場合にはこの3 倍となる)など、必ずしもきめ細かな区分とはなっていないことから、常勤職員数が50人以下の場合は次のような案が提示されています。
     a. 5 0人以下は5人  b. 40人以下は4人  c. 30人以下は3人
H18年の事業所規模別の受入割合(衆議院調査局の報告)
1人〜9人→36.9%、10人〜19人→19.6%、20人〜49人→16.8% 、以上で73.3%となります。50人〜99人→12.6% であり、100人以下で85.9%の技能実習生を受け入れていることになります。

(5) 対象職種の拡大
@ 介護分野の対象職種への追加については、「様々な懸念に対し適切な対応が図られるよう、具体的な制度設計を進めることとし、技能実習制度の見直しの詳細が確定した段階で、介護固有の具体的方策を併せ講じることにより、様々な懸念に対し適切に対応できることを確認した上で、新たな技能実習制度の施行と同時に職種追加を行うことが適当である」という「外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会」における検討結果を踏まえて適切に対応すべきである。
A その他の職種については、制度趣旨や送出し国のニーズ等を踏まえ、移転すべき技能として適当なものについて、随時対象職種に追加していくべきである。

(6) 多能工化のニーズへの対応(複数職種の実習)
@ 送出し国側の多能工化のニーズと我が国の実習実施機関側のキャパシティに対応し、複数職種の技能実習を行うことができるように措置すべきである。この場合、試験の実施や受検の負担等も考慮し、主な職種(複数)のうちのいずれかの職種の技能評価試験の受検が義務付けられるものとすべきである。
A 産業ごとの変化や実態、技術の進歩等にも応じて、使用する素材等の要件を緩和する等、技能実習計画をより柔軟に作成できるようにすべきである。
 多能工化と言うと聞こえはいいのですが、現実問題として認められた職種以外で研修している例が多くみられるためこれを助長する措置でしょうか。