働く人の基礎知識−4

 〜 労働基準法−3 〜



6.賃金
(1)賃金を廻るさまさせまな問題
 私のサラリーマン時代、毎月賃金支給表をもらっても内容を見ることも無く、捨ててしまう情況でした。誤りが無からといってしまえばそれまでですが、6千人を超える会社の給与担当として各事業所から送られてくる入力表をチェックしていると入力ミス、入力漏れなど様々な誤りが少なからず発生しているのが現実です。一方時間外不支給として新聞に時々報道されるような意図的な問題もありますし、時間外手当に代えて定額の営業手当での支払や年休を取得した月には皆勤手当を減額又は不支給とすることは正しいことでしょうか。支給表はしっかりチェックすると同時に賃金についての法律を理解していなければ給与計算に誤りはないと信じるしかありません。
 賃金は、どこの事業所でも毎月決まった日に支払われ、似たような賃金支給表であっても、賃金の決定、内容や支払い形態など詳しく聞いてみないとどこが自分の賃金と違っているのか分からないといえます。賃金の決め方としては時間給、日給、月給、年俸そしてタクシーの運転手さんに見られる歩合給などが一般的だといえます。また月給や年俸となるとその賃金の構成も年齢給、能力給、職務給や職責手当等の各種手当類と内容は様々だといえますし、月給制の場合、欠勤した日の賃金カットを行う事業場もあれば、賃金カットを行わない事業所もあります。ノーワーク・ノーペイ原則からすれば賃金カットが正解かもしれませんが、労働条件が良くなるのであれば問題は無いといえます。
(2)賃金支払いの5原則(第24条)
 賃金に関する基本となるのがこの「賃金支払いの5原則」といえます。自分の賃金を考えてみるとこの原則に従った扱いがされているはずです。この5つの原則とは、@通貨で、A全額を、B毎月1回以上、C一定の期日に、D直接労働者に支払うというものです。極当たり前のことと納得されると思いますが、例外もあるはずです。全額払いの原則に反して所得税や社会保険料また食事代とか生命保険料などが引かれているはずです。所得税等法律で定められているもの及び労使協定に定められているものに限り控除が認められています。また、直接払いの原則では金融機関口座への振込みによる方法など例外も定められています。こうした例外規定については施行規則や通達等で定められています。円未満の処理方法、千円未満の端数を翌月に繰り越して支払うなど・・。
(3)割増賃金の時間単価の計算方法
 割増賃金の種類や割増率については、前々回を参考にしていただき、ここでは1時間単価の計算の基礎となる賃金と計算方法についてみていきます。
 賃金の全てが対象となるのではなく、施行規則第21条によって「@家族手当、A通勤手当、B別居手当、C子女教育手当、D住宅手当、E臨時に支払われた賃金、F一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」の七つの手当が除かれていますので、それ以外の手当は対象になります。例外として、時間外手当を支払う代わりとして営業手当などを支払っている場合があります。これらは時間外手当であるため当然除かれるものとなります。ただし、実際の時間外労働時間で計算した額のほうが多ければその差額を支払う必要があります。
 次に時間外単価の計算方法は施行規則第19条に次のように定められています。


基本給+諸手当
1ヵ月平均所定労働時間


1カ月平均所定労働時間は次の方法で毎年計算する必要があります。


{365 − (年間所定休日日数)}× (1日の所定労働時間数)
12


(4)年俸制について
 年俸制による支払い形態をとっている場合であっても賃金支払いの5原則のうち「毎月1回以上の支払い」により12等分した額を毎月支払っていく必要があります。年俸制で注意しなければならないのは、年俸の額に賞与を含めているのかいないのか、また時間外労働部分の賃金が明確に区分されているかどうかという点です。例えば、昨年度の賃金、賞与、時間外手当、住宅手当、家族手当を含めて1千万円の賃金を支払ったので、それと同額の1千万円を年俸として決めた場合、残業があれば前項の計算式によって計算の上別途支給しなければ行けないことになります。基礎賃金に賞与等時間外手当の基礎賃金から除かれるものも入っているためかなり高額な時間外手当を支払うということになります。

(5)精皆勤手当
 この手当を導入することによって稼動率を上げることを目指しているといえます。こうして手当を導入することについて労働基準法は何も触れていませんが、年次有給休暇を取得した場合にもこの精皆勤手当を減額または不支給としている例が見られます。しかしこれは法第136条で「年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。」と定められていますので労基法違反ということになります。

(6)賞与・退職金
 賞与や退職金について労働基準法は支給するように定めていませんので使用者の自由ということになります。もし労働契約書や就業規則に「支給する。」と定められているのであれば当然支払いを受ける権利が労働者にはありますが、何も触れてなければ支給は無いということにならざるを得ませんが、規定が無いにも係わらず過去支給されてきていたとすれば暗黙の了解事項として権利が発生しているといえます。

(7)支給表の見方
 簡単な支給表で見ていきます。本来は、出勤日数、休日、年休、特別休暇、欠勤、遅刻早退時間等の稼働状況が入ります。
 条件として@所定労働時間8時間、20日稼動で欠勤等なし。

@扶養控除数甲 1

@ 所得税の計算には、扶養控除申告書の提出があれば甲欄を、無ければ乙欄を使用
 します。扶養控除申告書の提出があれば、被扶養者の数に応じた控除が行われるの
 で、出生、死亡そして扶養家族の就退職また収入などに注意する必要があります。
A 通勤手当は原則非課税扱いとなります。
B 総支給額−非課税額−(K+L+M)で計算します。
C 割増賃金単価の計算方法(規則19条)
 (1)下記の賃金は割増賃金計算の対象から除かれます。
  @家族手当、A通勤手当、B別居手当、C子女教育手当、D住宅手当、
  E臨時に支払われた賃金、F一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
 (2)1年間の所定労働時間を基にして時間単価を計算しますので毎年計算する必要が
 あります。
   21年度のカレンダーを基に次の条件で計算してみます。
  (土日が各52日の104日、祝日15日、年末年始6日)
  所定労働日数 365日−125日=240日 (1月当り20日)
  1ヶ月平均所定労働時間
   240日×8時間=1920時間÷12=160時間
   時間単価:210,000円÷160時間=1,312円(50銭未満は切捨て)

 ※1か月平均所定労働時間の計算式
{365−(年間所定休日日数)×(1日の所定労働時間数)
12

D 休日出勤を除いた残業時間数です。
E 午後10時から午前5時間での間の労働には25%の割増賃金を支払う必要があり
 ます。ここでは10時間の残業のうち深夜時間帯に1時間入っていたことを示しています。
F 営業手当はこの例では時間外手当の代わりとしてではなく支払われているものとし
 ています。
G C1,312円×1.25×10時間=16,400 で計算します。
H C1,312円×0.25× 1時間= 328 で計算します。
K 総支給額246,728×(4/1000)= 986 で計算します。建設業は率が違います。
K〜Oは「全額払いの原則」に違反していますが、次の場合例外として控除が認められ
 ています。
 a.法律により賃金からの控除が定められているもの(K〜N)
 b.控除できるものが労使協定によって定められている場合

A非課税額10,000
B課税対象額207,482
C割増基礎1,312
D時間外数10
E深夜(再掲)1
 基本給200,000
F営業手当10,000
G時間外手当16,400
H深夜時間手当328
I家族手当10,000
J通勤手当10,000
総支給額
246,728
K雇用保険986
L健康保険9,840
M厚生年金18,420
N所得税3,360
O親睦会費500
弁当代8,000
控除額計
41,106
差引支給額
205,622