賃金未払や就業規則届出違反による是正勧告のことなど


3セク賃金27万未払い 〜 三次「君田21」労基署が是正勧告

   三次市君田町泉吉田で「君田温泉森の泉」などを運営する第3セクタ−「君田21」が、賃金未払い就労規則無届けなどで三次労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが26日までに明らかになった。/勧告によると、賃金未払いが認められたのは、1年間の雇用契約期限切れで今年10月31日付で退職した調理師の男性(51)。契約書で「売上高に応じて業績手当を支給」となっており、男性は「売上高には喫茶店など付帯施設が含まれる」と要求したが、会社側は「調理業務部門に限る」と主張。同労基署が男性の言い分を認め、支払い是正を勧告。会社は今月10日、1年間の未払い分27万円を支払った。/社長は「賃金の契約内容に見解の相違があった」と話している。/同社はほかにも、就業規則の無届けや衛生管理者を選任していなかったことなど7項目で今年1月、是正勧告を受けていた。

(読売新聞H18.11.27)


 ここ数年時間外手当の未払いを始めとした労働基準法違反に関する新聞記事を目にする機会が増えてきています。しかし、就業規則の無届や衛生管理者の選任がないことのみの違反であれば新聞記事になることはまず無いと思います。7項目の違反とは何であったのかはわかりませんが、労働関係のことに関しては脇が甘かったと言わざるを得ません。この記事に出てくる事項がどのように法律で定められているか見ていきたいと思います。
 まず、労働基準監督署が是正勧告をする場合、当然その事業所に調査に入ります。その調査をする職員は労働基準監督官と呼ばれています。この労働基準監督官については、労基法で、「事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる。」また「この法律違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う。」となっています。是正勧告には強制力はないとの判例もありますが法律違反が現実にあるわけですから是正に応じなければ、労働基準法の罰則規定が適用されることになるかもしれません。
 次に、賃金未払の問題ですが、ここでは採用時の労働条件の中の「売上高に応じて業績手当を支給」するということの解釈が問題となっています。労働者を採用すれば労働条件を書面で交付しなければならないと定められていますので細かいところまではっきりと決めておかないと今回の事件のように解釈の齟齬から問題が発生することとならざるをえません。労働条件の明示違反は30万円以下の罰金です。
 三番目が「就業規則の無届」です。本来は個別の労働契約で労働条件を決めればいいともいえますが、労働者が多くなれば統一的な労働条件を決めておかなければ一人一人への対応は難しくなるので就業規則を定めることになります。この就業規則については労働基準法第89条に「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。」と定められていますので、作成はしていても届出を怠っていたと考えられます。この罰則も30万円以下の罰金となっています。10人未満の事業所では就業規則を作成する必要もありませんし、提出する義務もありませんが、統一的な労働条件を適用するためにも作成しておく方がいいと言えます。
 最後に、衛生管理者を選任していなかったことに対する是正勧告があります。これは、労働基準法違反ではなく、労働安全衛生法違反ということになります。労働安全衛生法は50人以上の事業場では衛生管理者の資格を有する労働者を衛生管理者に任命し、労働基準監督署に届け出なければならないと定めています。あわせて、産業医の資格を有する医師を産業医に選任し、労働基準監督署に届け出ることも義務付けています。これらの違反に対する罰則は、それぞれ50万円以下の罰金となっています。
 事業を興す場合、飲食店であればまず保険所で営業許可を受ける必要がありますし、建設業であれば建設業の許可(県知事又は大臣)を受ける必要があります。許可が出て、事業開始となれば税務署への届出が必要となります。さらに労働者を雇うとなれば社会保険関係の手続きが必要ですし、事業規模によっては以上述べてきた届出等が必要になりますし、労働基準法や労働安全衛生法の定めを守らなければ是正勧告ということにもなりかねません。事業運営にあたっては当該事業に関係する法律だけでなく、いろいろな法律を勉強しておく必要があるという教訓となる記事ではないかと思います。