フィリピン人の結婚を巡る問題から
〜 結婚紹介事業モデル???人身取引 〜


 フィリピン人と日本人との離婚には、在留資格の問題から様々な不利益がフィリピン人に発生します。結婚して来日すると「日本人の配偶者等」と言う在留資格で6か月なり1年の在留が認められ、以後更新していくことになります。5年程度円満な?結婚生活を送ると「永住者」という在留資格に変更することができます。一旦変更してしまえば在留期限は無期限となり日本で生活することに問題は無くなります。しかし「永住者」の資格を得る前に離婚したり、配偶者が亡くなると、現在の在留資格「日本人の配偶者等」での更新が出来なくなります。日本人との間に生まれた子供を自分が養育するか、相手が養育していても養育費を支払っていれば「定住者」と言う資格に変更することができますが、そうでなければ更新期限までに出国する必要があります。幾ら円満で幸せな生活を送っていた人であっても偽装結婚で来ていた人であっても同列に扱われてしまうのを見ると可哀想な気もしますがどこかに線を引かなければいけないのもやむを得ないことかもしれません。

 フィリピン人と日本人の結婚を巡るビジネスモデルには合法的なものと非合法なものがあり、後者の代表が当事者全てが同意している偽装結婚です。しかし違法なのか合法なのか微妙なところで人身取引と考えられるものもあります。その事業モデルは、仲介者が日本人に対して、「フィリピン人と結婚し、相手が日本に来て働きだすと給料の半分をあなたに渡すと言っている。」と勧誘して仲介料を取っている場合です。当然、フィリピン人に対してはこうしたことは伏せて、お見合相手の紹介をすると偽るものです。こうした裏取引が行なわれていると知らずに、日本に来て、仕事を始めると「給料の半分を渡すように。」と言われるとびっくりしトラブルとなります。しかし同じ屋根の下で生活を共にしているので生活費の一部として渡すことに納得し、いくら渡すかの話合となります。しかし日本人がその額に不満があれば、在留資格の更新を盾にとって「給料の半分よこさなければ在留資格の更新にサインしない。」とか「離婚する。」と言われたらフィリピン人のお嫁さんは愛想を尽かして帰国するか、嫌々ながらも日本で始めた生活を維持するため支払に応じるかの選択を迫られることになります。日本人の旦那さんの気持ちはよく分かりませんが、フィリピン人女性をお金を稼いでくるペット感覚で見ているとしか思えません。邪魔になれば離婚して追い返してしまい、次のペットを見つければいいだけの話しです。しかしこれがフィリピン人のお嫁さんにしてみれば、帰国しても仕事を見つけることは難しく、また離婚の法律が無いため、次に結婚しようとすれば、結婚無効の裁判を起す必要が生じます。その費用は80万円程度かかるそうです。もてあそばれた結果、大きな費用負担まで背負わされて帰国することになります。どれだけの人がこうした憂き目にあっているか分かりませんが少なくはないでしょう。

 先日3名のフィリピン人と会いました。みんな技能実習生として同じ時期に同じ会社で働いていた友だち同士でした。3人とも知り合った日本人と結婚して来日しています。2人はどの様な経緯で日本人と知り合ったのか聞きませんでしたが子供も得て幸せな結婚生活を送っています。しかし一名は先のビジネスモデルの蜘蛛の巣に絡め取られた人でした。3人と会った日は、彼女の主人と仲介した日本人(妻がフィリピン人)との話し合いを持った場でした。彼女の事を心配して駆けつけてきたものでした。この結婚の仲介をしたフィリピン人の妻がタガログ語で彼女たちに話したことの中に「この結婚は最初からお金の話しがされていた。」と言っていたとのことでした。当然、離婚を突きつけられたフィリピン人の知らないところでそうした取り決めがされています。彼女も給料の半分を渡すように言われた時、主人から仲介してくれた人とそのような約束になっていると言われたことと符合します。

 相手が言う離婚理由は二つトラブルがあったとのこと。一つは給料の半分を渡すことを巡って、あと一つは最近のことで彼女が買い物のとき籠に物を投げ入れたからと言うものでした。家を出る前の口論の最後に「家から出て行け。出て行けば在留資格の更新をする。」と言われています。話し合いの場でも、「離婚届にサインすれば在留資格更新に協力する。」と言っています。「サインするだけでいい。市役所には出さないので信用してもらいたい。」と言いますが、よく分からない提案です。こちらとしては、「些細な原因でしかないので元の状態に戻り在留資格を更新してもらいたい。離婚するのならフィリピンでの裁判費用の80万円を支払って貰いたい。」と言うものですが、主人は「離婚しかない。借金がありそんなものは支払えない。」との一点張りで話し合いは物別れとなりました。

 こうした相手をだまして結婚させ、来日すると在留資格更新を人質にとって金銭を要求する行為は人身取引に該当するのではないかと思われます。明確な証拠が残っている訳でもないし、善意でお見合い結婚の仲介をしただけと言われればそれまでです。JFCの問題でも善意を装った、法律すれすれのところで暗躍する人達は少なくありませんし、フィリピンの友人たちのために善意から結婚相手を紹介する人達も少なくないため、結婚して子供がいない人達には「早く子供をつくれ。」としか言いようがありませんが、相談に来た女性の主人たちのようにビジネスとして考えている人達は当然子供を造ることは拒否しています。この問題で困っているとの話は時々聞きますがそれ以上進展したことはありません。その理由は、フィリピン人はうわさ好きなのでこの問題が広まるのが怖いからと言うものです。こうしたビジネスモデルを無くすためには、離婚を言われたら、当然女性側に非が無い場合ですが、結婚無効の裁判費用を支払わせる裁判をその都度起すことで、共謀者側にビジネスモデルとして危険が大きいことを、また被害者にはこうした裁判を起せることや支援する人たちがいることを情報として知ってもらうことかもしれません。

 ちなみに、人身取引対策に関する取組について平成28年5月付けの官邸HP情報を見ると、人身取引議定書第3条に「「人身取引」とは、搾取の目的で、暴力その他の形態の強制力による脅迫若しくはその行使、誘拐、詐欺、欺もう、権力の濫用若しくはぜい弱な立場に乗ずること又は他の者を支配下に置く者の同意を得る目的で行われる金銭若しくは利益の授受の手段を用いて、人を獲得し、輸送し、引き渡し、蔵匿し、又は収受することをいう。搾取には、少なくとも、他の者を売春させて搾取することその他の形態の性的搾取、強制的な労働若しくは役務の提供、奴隷化若しくはこれに類する行為、隷属又は臓器の摘出を含める。」と定義されており、「人身取引という行為には、人の「売買」に限らず、搾取の目的で、被害者を騙したり、弱い立場にあることにつけ込んだりして被害者を支配下に置くなどの行為も含まれ、暴力、脅迫、詐欺等の手段が用いられた場合には、たとえ被害者が搾取に同意していたとしても、これに該当する可能性がある。」と説明されています。在留資格更新を金銭取得の目的とした結婚も該当してもおかしくないと思います。ただ裁判を起して勝てる可能性が有るのか、弁護士費用を含めた額で決着できなければ、「苦多くして益少なし。」となります。裁判で在留資格の1年延長してもらい。その間にしっかり働いて貯金をしながら、まともな相手を探すのが良いかもしれません。労働者不足から、新規の外国人の導入よりも、日本の生活になじみ、日本語もできるこうした人たちの活用の方がメリットは大きいかもしれません。