フィリピン人研修生の交通事故死から

 呉市内で、フィリピン人研修生が11月24日深夜2時15分交通事故(注1)で死亡したとの小さな新聞記事がありました。どのような情況であったのか、仕事への行き来の途中でなかったのかと考えてしまいました。研修生は労働者ではないため深夜労働などあり得ませんし、残業などもさせることはできません。しかし、現実には労働者として残業などは極当たり前の世界ですから、ついつい労災との関係を真っ先に考えてしまいました。
 どのような情況であったのか幾つか電話をしてみると仲間の研修生とお酒を呑みに出ての帰り道、赤信号で道路を横断中に車に轢かれたとのことでした。加害者は飲食店のオーナーであり、加害者が飲酒していたかどうか、またどの程度のスピードが出ていたのかは不明です。また、遺体は、すぐに大阪を経由して、成田に送られ帰国した。年齢は27歳、家族は妻と子供二人で、妻が来日予定とのことでした。遺体が教会に運ばれミサが捧げられることなく、また同僚達に見送られることなく帰国したことに人間としての尊厳が無視されているとしか言いようがありません。
 外国人研修生が交通事故で死亡した場合、といっても基本的には日本人と同じですが、どのような補償があるのかみていきたいと思います。 (1) 外国人研修生総合保険、(2)自賠責保険・任意保険、(3)健康保険、(4)国民年金について簡単に見ていきます。


(1) 外国人研修生総合保険
 入管法に基づいた省令によって受入機関に加入が義務付けられています。医療費については一旦本人が立替払いした後に保険者(JITCO)に請求することになります。補償内容によって次の3つのタイプが設定されています。このうち「救援者費用」とは、研修生が危篤に陥ったり、死亡した時に家族(3名まで)を呼び寄せる費用等に充当するものと説明されており、フィリピンへの遺体搬送費用約150万円程度もこの費用に含まれているようです。
 死亡保険の受取人は法定相続人に支払うのが原則となっていますが、受取人を指定したときにはその者に支払うとされていますので今回の場合どのような契約となっているのでしょうか。会社が指定されておれば、会社の利益となってしまうかもしれません。
 技能実習生についても同様の保険があり、任意加入で、保険料は多少低く設定されています。
 保険料は13ヶ月の保険期間の場合です。
タイプ
保険料
傷 害
疾 病
賠償責任
救援者費用
死 亡
後遺症
治療費用
賠償責任
救援者費用
27,100円 700万円
300万円
700万円
300万円
3,000万円
200万円
30,810円 1,000万円 1,000万円
37,040円 1,500万円 1,500万円

(2)自賠責保険・任意保険
 自賠責保険は原付を始め全ての自動車に加入が義務付けられています。車検のない250CC以下のバイクや原付では自賠責保険の更新を失念しているケースもありますし、また轢逃げのような場合もあるため、こうした場合には、政府から補填されることになります。保険給付としては次のようになります。
死亡の場合 葬祭料、慰謝料、逸失利益等が3000万円を限度として支払われる。
後遺障害の場合 障害が残った場合、1級4000万円から14級75万円の範囲で障害の状況に応じて支払われる。
障害を負った場合 障害を負った場合には、治療費、休業補償、慰謝料等が120万円を限度として支払われる。

 自賠責保険の限度内で補償が出来ない場合には、任意保険から補填されることになります。当然相手の自動車が加入していたか否かの問題もありますし、自賠責保険にはない過失相殺が適用されることになります。車が青、歩行者信号が赤で横断歩道の直近の事故の基本的な過失割合は歩行者側に70%の過失があるとされています。車の信号も赤であれば歩行者30%の過失と逆転してしまうように信号の情況また飲酒運転かどうか、速度の問題などの諸条件によってこの割合が変わってきます。


(3)健康保険
 研修生であるため国民健康保険に加入することになります。この場合、葬祭を行うものに対して葬祭費が呉市から3万円支給されます。広島市は4万円です。


(4)遺族基礎年金
 日本国内に居住する20歳以上の者は国籍を問わず全て国民年金の被保険者となります。収入の少ないもの、無いものまた学生については保険料を免除するという制度があります。研修生は学生と同じように保険料免除申請をすれば保険料を支払う必要は無く、事故で1級又は2級に該当する障害が残れば障害基礎年金を、また死亡した場合には遺族基礎年金の支給を受けることが出来ます。
 遺族基礎年金は18歳未満の子供又は18歳未満の子供のいる妻に支給されることになります。今回の場合、基本額792,100円+加算額227,900円×子供2人=1,247,9005円が年金として給付されることになります。外国にいても銀行口座に振り込まれます。
 問題は、こうした学生免除の手続きを受入会社が行っていなければ受給できないことになってしまいます。もし、手続きがなされていなければ、受入会社に対して損害賠償の対象となるのでしょうか。


 以上補償関係を簡単に見てきましたが、確実に実施されることを祈るだけです。


(注1)  研修生の交通事故での死亡者数は過去5年間で7名(死亡者総数125人、5.6%)となっています。