管理職に残業手当は必要?

   今まで、時間外手当や休日出勤手当についてお話してきましたが、これらは一般の従業員についての話であって、管理職と呼ばれる従業員については、少しばかり様子が違っています。というのは、労働基準法が、労働時間、休憩、休日に関しては、特定の職種の者については、「これらの規定を適用しなくてもよい」と定めているからです。

 事業規模が大きくなればなるほど、事業主や役員だけでは従業員を掌握できなくなり、従業員を管理させるため部長、課長、係長、主任等の管理職を置く必要が生じます。これらに任命された人は自分の仕事に加えて部下を指導監督する責任が生じてきます。そうすると、大げさに言うと昼夜を問わずその責任を遂行する義務があるので、36協定で2時間までしか残業は出来ない、休日出勤はダメ、12時から昼休みを取らなければダメといっていたのでは、業務に支障がでるのでこうした規定の適用を除外する必要が生じます。この除外規定の適用を受ける職種のひとつに「管理監督者」というものがあります。この除外理由をみると、
  (1)経営者と一体的立場にあり、使用従属関係上の拘束が弱い、
  (2)経営管理や従業員の指揮命令の必要上労働時間の規制を超えた活動が要請される、
  (3)労働時間の拘束性はなく出退社は自由裁量である、の三つの要件を全てクリァ−する必要があります。
しかし、これはあくでも原則論であって、このまま適用すれば、役員しか該当しないことになるので、運用上は、この条件を考慮しながら「従業員を管理する立場の者」としての実態で判断することになります。ということは、一般論として明確な説明が出来ないということになります。

 といって、ここで話を終わるわけにもいかないので、話を進めると、管理職として適用除外されるには、
  @役職名では判断できない、
  A職務の内容、責任と権限、職務の実態はどうか、
  B一般従業員との違いが明確であるか、などで判断する必要があります。
特に「Bの一般従業員との違いが明確であるか」は、賃金だけでなくその他の待遇の違いも必要となります。まず、役付手当てを支給しているだけではダメで、職階上、一般従業員と違った上位の管理職としての職階に属し、賃金の決め方も違っていなければなりません。一般的には、管理職手当が支給されていると思います。最低限、この三つを満足させれば良いのではないかと思います。先の除外理由との関係でみていくと、(1)については、当然権限の委任があるから良しとして、(2)は管理者なら当然のことでしょう。では、(3)はどうかというと、こういう事はまずありえませんので、じゃダメじゃないかということになりますが、「基本給以外に管理職に支払われる特別の手当てが支払われ、労務管理上の指揮監督権を有し、経営者と一体的立場にあると認められるので、出退勤管理がなされていても、労基法41条2号の管理監督者である」との判例がありますので他の条件を満たせばよいことになります。そうはいいながらも、「喫茶店の責任者で(正社員は本人一人でパ−トの採用権限あり)について、独自に決定できる余地は些細なものであったとして同法条の管理監督者にあたらず割増賃金請求を認めている」という別の判例もあります。事業所の規模の問題もあるでしょうし、そこでの権限の委任の問題もあるし、@〜Bを基に個別の事例ごとに判断せざるを得ないといえます。また、これらに加えて、弁護士の安西先生は「労働基準行政の第一線の実務上の取り扱いでは、事実上従業員数に対する適用除外管理職の割合も考慮されており、従来は 20%が実態のようであったが最近は25%程度に至っているようであると思われる。」と述べておられます。割増賃金逃れのため、名目上の管理職を増やしても認められないといえます。

 ただ、以上の話は、管理職に対しては、時間外と休憩と休日については、手当てを支払わず使用できるということであって、夜10時から翌朝5時までの深夜に働かせた場合の深夜割増賃金までは免除していませんし、年休についても免除していませんので勘違いの無いようにお願いします。