自動車解体工場で働く技能実習生問題


 昨年の3月に自動車解体工場で働いている技能実習生4名がカトリック幟町教会で開催している法律相談会に残業代等のことで相談に来ました。内2名は来日して数カ月しか経過しておらず技能実習生2号のロへの移行の問題もあり会社との交渉は移行が済んでからとし、まずスクラムユニオンに加入させ、随時打合せと資料の提供を受けてきていました。
 今年の1月20日に28日に団体交渉を行ないたい旨申し入れを行なったところ、彼らは、フィリピンの送出機関、受入機関そして当然のこと社長からユニオンを脱退するように様々な脅しにさらされることになりました。当初予定した団交日を拒否してきましたがとりあえず会社に行って技能実習生達の住んでいる環境を見学してきました。工場の上にある宿舎や離れた所に設置してある仮設のシャワールーム、また炊事用のガスコンロに使用しているプロパンガスボンベなどです。プロパンガスボンベは、廃車となった自動車に搭載されていたもので、ボンベに残っているガスが無くなれば別のボンベに取り換える仕組みとなっていました。最初ガスが無くなるとボンベを替えるのが大変だと言っていた意味がよく分りませんでしたが、実態を見てはじめて理解することが出ました。自動車に搭載されていたプロパンガスボンベを利用しているためガスの残量計が無く、突然ガスが無くなってしまいます。料理中とか冬の夜遅くに無くなれば大変な話です。またこうしたものを設置するにはガス設備士(国家資格)などの資格が必要のようですし、湯沸かし器を付けるのであればそれ用の資格を持ったものが工事をする必要があります。自動車解解体工場でありながら、技能実習生が自動車解体中切断のため使用していた溶接機のホースが破裂して軽いやけどをする事故が発生するなど会社の安全意識が疑われます。
 会社等からの様々な脅しの多くは録音されており、それを聞くと彼らがつらい状況に置かれていたことがよく分かりますし、送出機関も協同組合も技能実習生を守ろうとする姿勢は微塵も感じられません。特に社長が、「日本は怖くないじゃない怖いのよ、ほんとは。下手しょうると、コレもおるから。・・マフィアおるのよ日本に、フィリピンでもマフィアおるでしょ。 (小さな声で)「おります。」  10万円で人殺すよ、(極小さな声で)フィリピン。(いやらしい押し殺した笑い声て)おるよ沢山。聞いてる?気に入らなかったらフィリピン全部殺せぇと・・(いやらしい笑) 10万円で、安いよ、安いよあれ。」と言いながら手でピストルの形を造り打つ真似をしたそうです。警察も弁護士も信用できない国の外国人にこうした言葉は恐怖感を募らせ、私の方にも「大丈夫だろうか」との連絡がありました。また社長は彼らがフィリピンの家族に衣類などを送ったことを捉えて、それらのレシートを見せることができないのなら会社の物を盗んで送っていると難癖をつけ、朝礼で泥棒をしていると社員全員に伝えました。この二点については、警察署に刑事告訴し、9月2日に検察庁に送検され、9月18日には技能実習生、社長と協同組合が検察庁に呼び出されています。
 団体交渉は2月9日に行われ、社長と弁護士の2名が来ました。弁護士は、話し合いに来たのではなく、「どのような要求かを確認するだけ。」との態度で話し合いは行われませんでした。1カ月近く経って、何らの問題も無い。研修目的である溶接以外の関係のない自動車解体に従事していることについては、「適法に在留資格を取得して実習しております。」、最低賃金違反についても、労働契約書や会社カレンダー等確認すれば労基法違反であることが一目瞭然と思うのですが会社が勝手に休日を増やして帳尻を合わせた計算を鵜呑みにし、その計算式を示して問題が無いと回答してきました。最後に、「過去の事実関係について不服がある場合や当事者間の事実の認識に相違がある点につきましては、訴訟等で明らかにすべき問題ですのでこの点について、今後団体交渉の場で対応する予定は有りません。」と記されていました。労働紛争は、「過去の事実関係について不服がある場合や当事者間の事実の認識に相違がある」から発生します。そのためお互いの言い分を聞きながら解決策を見つけていく場が団体交渉の場といえます。当に不当労働行為といえます。技能実習生問題は、通常の労働紛争と違い、入管との関係で受入停止の措置も考えられる微妙な問題があるため、こうしたことを念頭に置いたうえ対応する必要があると思いますが、交渉拒否されてしまうと訴訟に進むとともに、強制帰国させられても困るので入管に報告することになります。相手方の弁護士さんのこうした行為は、労働問題、特に技能実習生問題への理解不足からなのか、資料を調べないまま会社の言い分を丸呑みし、私達に勝ち目がないため訴訟しないだろう、たとえ最低賃金部分だけは証拠がはっきりしているとしても弁護士費用が賄えないため有耶無耶のうちに終わってしまうと考えられたのでしょうか。
 今、彼らは、「溶接は仕事が少なく移籍先が無いため10月29日に帰国させる。」と言われています。どのような「実習継続不可能発生報告書」を作成提出するのでしょうか。また先日は、技能実習生達が母国の送出し機関に10月29日に帰国させられるが継続して働きたい旨の電話を入れた所、送出し機関が協同組合に確認した結果、「裁判を取り下げたら移籍先を探す。」との回答があったとのことです。こうした技能実習生を使い捨ての低賃金労働者と考える会社や協同組合に対して憤りを感じざるを得ません。技能実習生制度は建前と本音の交錯する制度ではあっても法律を遵守した運用がなされれば問題は無いと思います。ただこうした矛盾をはらんだ制度を理解することもなく悪用する受入機関が存在し、奴隷制度とのそしりを受けています。せっかくの制度を自分で自分のクビを締める行為だけは避けてもらいたいと思います。それが出来ない受入機関に対してはどんどん受入停止処分を行ってもらいたいと思います。例え、数百、数千の帰国せざるを得ない技能実習生が出るとしてもやむを得ない措置といえます。