解雇予告の取り消しは可能?


 先日、半年前に事務職として採用された人が経営不振を理由に同じ市内にある施設への転勤を打診され、転勤できなければ月末で解雇にすると言われ、転勤予定先の見学に連れて行かれたとの相談がありました。本人には転勤する意思がないため解雇を受け入れると回答すると「退職届を書いてもらいたい」と言われたとのことでした。会社がなにを考えてこうした発言をしたか分かりませんが、解雇と自己都合退職との違い、また会社を辞める時の労働法の知識がなければ会社の指示に従って退職届を書いて不利益を蒙る人もいるかもしれません。ちなみに、労働基準法第22条第2項は、「労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。」(罰金30万円)と定めています。
 私自身、顧問先から労働者に問題があるので解雇したいとの相談があると、可能な限り話し合いを持って円満な退職とするよう指導しています。解雇となると何らかの助成金をもらおうとした場合、過去3か年会社都合による解雇が無いことが前提条件としてあることもあります。こうしたことを踏まえて会社は退職届を書くように言ってきたのでしょうか? 労働者側からの解雇の取り消し要求は珍しくありませんが、会社の自発的な解雇予告の取り消しは珍しい話です。それが助成金目的のものであれば何れは自己都合退職に追い込まれることは目に見えているといえます。労基法第20条は解雇予告の手続きについて定めているだけでこうした取り消しについては何も触れていません。しかしこの条文の取扱についての疑義に労働基準局長が回答した通達には「使用者が行つた解雇予告の意思表示は、一般的には取り消すことを得ないが、労働者が具体的事情の下に自由な判断によって同意を与えた場合には、取り消すことができるものと解すべきである。」(昭25.9.21 基収2824号)とあります。これは民法第540条「契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。 /2 前項の意思表示は、撤回することができない。」を踏まえてのものです。ただ、こうした知識がなければ、会社の手玉に取られて労働者が泣かざるを得ない羽目に陥ってしまいます。