時間外手当が問題になっています @

    「労働基準監督署が立入調査で、時間外手当の不支給を摘発」、「時間外手当の不支給による裁判で病院が敗訴」等の記事をよく目にします。この病院では、会議録に「自分の能力で業務進行が悪い時は先にタイムカードを押して下さい」との指示が記録されていたとのことです。一般に、団体行動をとる現場作業では、問題はありませんが、個人行動の現場等、事務系の職種では、時間外手当を制限している感じがあります。ただ、この場合でも、仕事で残っているのか、付き合いで残っているのかはっきりしない面もありますが・・・・。

 また、時間外労働への知識がないため判断を誤っているケースもあろうかと思います。例えば、5時に終業し、7時から得意先で仕事をする場合、この間の2時間についてはどうでしょうか。事業主から「先方の都合で、早くなるかもしれないので、待機しておくように」との指示があれば、時間外手当の支給が必要ですが、「時間に遅れないように。その間、パチンコでもして時間をつぶしてもいい。」とのことであれば、支給する必要はないことになります。ここでは、2時間を拘束するか、業務開放するかどうかの問題といえます。

 では、時間外労働とは正確にはどのような労働を指すのか、また、時間外手当はどのような時に付けるのか、また、時間外手当の額はどのように決めるのかなど、その他時間外労働に関してはややこしい問題がありますので、少し考えて見たいと思います。

 まず、言葉の意味の違いを憶えておいてください。法定労働時間と所定労働時間です。法定労働時間とは、労働基準法で定められている1週40時間(小売、飲食業、病院等では44時間)、1日8時間労働のことです。所定労働時間とは、事業所が就業規則等で決めている労働時間のことです。この労働時間には、休憩時間は含まれません。原則法定労働時間を超えて労働させることができませんが、例外として、事業主と従業員が法定労働時間を超えて労働する事が出来るとの協定を結び、労働基準監督署に届け出ることによって合法的に法定労働時間を超えた労働をさせることが可能となります。協定はあっても届出がなされていないと法律違反となり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金の適用を受ける可能性があります。

 所定労働時間は法定労働時間と同じか、それ以下で決められているはずです。週休2日制で、始業9時、終業5時そして休憩1時間の場合、休憩は労働時間とされないため所定労働時間は1日7時間、1週35時間となります。もし、ある1週間に、毎日1時間の時間外をさせたとしたら、ちょうど法定労働時間労働させたことになります。では、届出は必要でしょうか。時間外をさせているけれども法定労働時間を超えていないので必要はないことになります。次に、時間外手当を支払う必要があるでしょうか。この場合、時間外手当の支払について就業規則等でどのように決めているかが問題となります。「法定労働時間を超えたときに支払う」と定められていれば法定労働時間を超えていないので支払う必要はありませんが、「所定労働時間を超えたときに支払う」と規定されていれば、毎日1時間ずつ、計5時間分の時間外手当を支払う必要があります。今と同じ条件で、法定労働時間を超えた時に時間外手当を支給するとしている場合で、土曜が休みでなく、3時終業であれば、週40時間が所定労働時間となります。月曜から金曜まで1時間ずつ計5時間の時間外ですから、各日について見れば法定労働時間内ですが、1週間で見ると45時間労働となり、5時間超過しているので時間外手当が必要ということになります。 〔次号に続く〕

時間外手当が問題になっています A

   前回、どのような場合に時間外となるかを見ましたので、今回は、時間外手当の額はどのように計算するのかをみていきます。
まず、言葉の定義をしておきます。所定労働時間、時間外労働時間(割増率25%以上)、休日労働時間(割増率35%以上)そして深夜労働時間(割増率25%以上)です。所定労働時間とは、前回見た事業所が決めている始業時間から終業時間までを指しますし、時間外労働時間とは、所定労働時間と休日を除いた時間における労働時間を指しています。休日労働時間とは、事業所が休日と定めている日に労働した時間を指しています。最後の深夜労働時間とは、午後10時から午前5時までの時間帯を指しています。

所定労働時間が9時から18時で、1時間の休憩を挟んだ8時間労働の例を取り上げますと、18時から、翌日の始業時間までが、時間外労働となる時間帯といえます。この時間帯に労働した場合には、通常の賃金額の25%以上の割増賃金を加算して支払う必要があります。さらに、深夜労働時間に該当する時間帯の労働があれば、深夜割増としてさらに通常の賃金額の25%以上を加算する必要がありますので、合計50%増しとなります。
では次に、Aさんが、日曜日の9時から19時まで働いたとしたらどうなるでしょうか。全ての時間が休日労働時間となりますので、当然のことながら休日労働の割増手当を支払う必要があります。休日労働については、通常の賃金額の35%以上を加算することとなります。ただし、深夜労働部分(20時から5時までの間)については、さらに深夜割増として通常の賃金額の25%以上を加算することとなり、合計で通常の賃金額に60%以上の割増賃金を加算した額を支払うこととなります。

もしAさんが、日曜日の9時から月曜日の始業時間まで働いたとしたら、日曜日の9時から深夜0時までは休日労働として通常の賃金額に35%以上の加算をし、0時から始業時間までは時間外労働として通常の賃金額に25%以上の加算をします。深夜部分については、さらにそれぞれ通常の賃金額の25%以上の加算を行うということになります。

 今まで、「通常の賃金額」との言葉を使ってきました。「通常の賃金額」とはなんだろうと疑問を持たれていたと思いますので、割増賃金の基礎となる賃金額はどのように計算するか見ていくことにします。ここでは、月給制の者を対象として考えます。

まず、賃金として次の6つのものが支給されていれば除いてください。@家族手当、A通勤手当、B別居手当、C子女教育手当、D臨時に支払われる賃金、E1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金、以上のものは対象外となります。これ以外のものは、個人的な事情により支給されるものであっても、割増賃金の基礎額とすることになります。

 次に、1時間当りの単価は、その月の賃金(@〜E控除後)を当該年度における1月平均所定労働時間数で除した金額となり、これに時間外労働であれば1.25を乗じた額、休日労働であれば1.35を乗じた額が1時間あたりの割増賃金の支給額ということになります。ですから、毎月変動する手当てがあれば時間外手当の基礎額は毎月変ることとなりますし、賃金が前年と同じであるとしても、暦によって毎年の労働日数が変わるので、年度が替わった最初の賃金計算日までに、その年度の暦で所定労働日数を数え、1月平均所定労働時間数を計算しておく必要があります。

 ただ、「うちでは、時間外の有無に拘わらず時間外手当を含めて賃金を決めているので、時間外手当は支給しない」と言われることがありますが、この場合、明確に時間外相当部分を明示できないと問題がありますし、明示できても、上記の正規な計算額を下回れば、その差額部分については基準法違反とならざるを得ません。  今回、休日労働が出てきたので、休日に労働させた場合の扱いを考えてみたいと思います。