JFCの問題から


 今年の2月毎日新聞のトップに「新日系人に不法就労強要」との記事があり、見出しの部分に次のように記載されていました。

 「日本人の父親とフィリピン人の母親との間に生まれた「新日系フィリピン人」(JFC)の母親らをパブで不法に就労させたとして、岐阜県警は14日未明、自称コンサルタントの○○容疑者ら男女9人を入管法違反(不法就労助長)容疑で逮捕した。○○容疑者は来日を仲介するブローカーで「永住権が取れる」などとJFCの母子らを誘って短期在留資格で来日させていた。2009年の改正国籍法施行でJFCらの国籍取得が容易になったことを背景に、トラブルが増えているという。

 婚姻関係のない日本人男性とフィリピン人女性との間にできた子供の認知を求めて短期在留資格で来日するフィリピン女性と子供は少なくありません。この記事の事件は、こうした人達を金儲けの対象として組織的に来日させ、認知裁判の判決が出るまでの期間生活費を稼ぐため不法就労させたと言うものです。当然、認知の問題と不法就労がワンセットとして組織的に行われているけれども組織的な犯罪としての摘発が出来ず、不法就労した、させたと言った点に絞って摘発が行なわれた事件です。

 こうした組織的なシステムと関係なく来日した人たちについても認知を父親が簡単に認めてくれればいいのですが、認知を拒否され、裁判をするとなると短期在留資格を数度更新する必要も生じ、その間の生活費をどうするかという問題も発生し、やむを得ず不法就労せざるを得ない人達もいるでしょう。中には、生活費は不法就労で賄うとの前提で来日する人も少なく無いのかもしれません。

 以前、こうしたブローカーを介さず、またどのように進めるかも準備しないまま来日し、知り合いを頼って相談に来たケースがありました。たまたま関東に滞在していることからCTIC(カトリック東京国際センター)に依頼し、弁護士を通して進めることになり、手持ちのお金が少なくなり生活費の問題が発生しました。

 新聞記事のように子供の認知を求めてフィリピン人が来日するに当たってのシステムの一つに次のようなものがあります。この例では、3者がワンセットとなって常に連携を取っています。

コーディネーター
大 家
弁護士
@フィリピンで人集め
A来日の手続き
B日本での世話・管理
@日本での住まいを提供
A滞在中の管理・弁護士との連絡
B弁護士も時々住まいを訪問
@認知訴訟の手続き
A在留資格の更新手続き
@来日費用手数料等(運賃別途)
         31千ペソ+2万円
A来日後        20万円
@家賃の徴収
A生活費の貸付け?
@訴訟費用90万円
A在留資格更新1人1回5万円

 これだけを見ると法律的に問題は無いし、それなりのシステムとして機能しているといえます。しかし認知がスムーズに進まず長期化すれば生活費や家賃支払いのために働かざるを得ないか、借金を重ねざるを得ないのが実情です。当然、認知を勝ち取る保証はありませんし、そうなれば莫大な借金を負って帰国せざるを得ません。うまく認知されれば働きながら返済していくことが前提とされているはずで、その間は何らかの拘束を受けて就労することになるでしょう。当然、日本に連れてくるコーディネーターは認知される見込みのある者を選ぶ必要がありますので、フィリピンで該当者を集めてセミナーを開き、持参させた資料を検討して確実に認知が得られる人を選抜して来日させています。JFCの母親はタレントとして来日した人が多いようなのでこの例でもタレントとして来日した時のブローカーだったそうです。

 このシステムで問題があるのは、認知の対象となった子供たちが学校に通っていない事です。長い人では1年を超える子供もいます。義務教育期間の外国籍の子供には日本の学校に通学する義務がないからと言ってしまえばそれだけですがそれなりの配慮があるべきだといえます。技能実習生達と同様に教会に行ってはいけない、携帯所持禁止とか外部との接触も制限されており、子どもの就学も無視している状況を考えると何かしらうさん臭いものを感じてしまいます。

 またこのシステムにかかわる人達の様々な気になる言動も聞こえてきます。特に、弁護士との契約書を見ると費用は90万円とびっくりする金額です。3人で分配するのであれば辻褄も合う様なところもあるし、他地域との連携を思わせるような情報もありますが、法律的に問題があるとすれば不法就労しかなさそうなのがこのシステムの特徴といえます。

 連絡のつかなくなった子供が認知を求めて来日し、父親がよろこんで認知をして、日本での生活を支援してくれるのならいいのでしょうが、逆に裁判で認知を求めざるを得なくなれば、家族内に問題を抱え込むこととなった父親は身から出た錆びと言ってしまえばそれまでの話ですが、逆に、父親の配偶者からJFCの母親が損害賠償を求めて訴訟を起したらどうなるのかと考えてしまいます。偽装結婚同様、JFC認知ビジネスをしている人達の金儲けと子供の将来と来日して働きたい母親との思惑が一致しているためこのビジネスが成り立つのかもしれません。偽装結婚同様、倫理的な問題、現実の問題を考えると何とも複雑な思いに駆られ口を噤まざるを得ません。

 これとは逆に、正当な結婚をしながら、子どもに恵まれず、永住資格が取れる前に日本人の夫が死亡して帰国せざるを得なくなる人達もいます。この場合、主人の親族が財産を渡さないよう画策し、早期に帰国させようとする例も少なく無いようです。こうした話はいろいろ聞こえてきても一度聞いただけで終わってしまいます。その話の相談を受けたフィリピン人も同様に「連絡がない。」と言います。問題があるにもかかわらず眼の前を通り過ぎていきます。これは「他のフィリピン人に知られ、噂になるのが嫌だから」と説明してくれる人もいます。私自身は「私も含めて信用できる人はいない。弁護士も信用できない。」と考えているからだと思っていますがこうした障壁をどうしたら取り除けるか、取り除けなければ支援体制が出来ても十分機能しないのが現実です。

 こうしたJFCとは別に、フィリピンに子供を残してきた人たちが子供を呼び寄せる例も少なくありません。当然義務教育年齢の子供たちは学校に行っても言葉の問題から不適応を起すことも少なくありませんし、学校側も対応に苦慮しているとの話しを聞きます。また長年日本で生活していても日本語が不自由な日系フィリピン人が少なくありません。最低でも日常的な日本語会が出来なければ勤務先との関係や転職の問題もスムーズにはいきませんし、子供の学校との関係、行政との関係等さまざまな問題が放置されたままとなっているのが現実です。労働問題もさることながらこの辺りの問題をどうにかしたいと思いながらも取組に苦慮しているのが現状といえます。対象となる人達の把握、行事を開催する場所の問題、またボランティアとして活動してくれる人達の確保の問題など問題は少なくありません。先日も、日本語会話のボランティアをしたいと言う人から「交通費は出るのか。」との問い合わせがありました。こちらから出向いていくとしても手弁当でお願いせざるを得ませんし、資料作成等当然その人の持ち出しをお願いしなればいけないため人材の確保は難しい問題といえます。