業務委託・独立自営業者の労働組合加入について



 一頃、名ばかり管理職とか、偽装請負という言葉を頻繁に耳にしていました。バイシクルライダーについても労働者か自営業者かで問題となり、厚生労働省は通達(注1)を出してどのように判断するかを示しました。働き方の多様化に伴い労働基準法に基づいて単純に判断できない事例が増えてきており、今回取上げた問題もその一つといえます。ただ、従来に無い問題として労働基準法の適用されない自営業者であることを前提にしたうえで労働組合に加入できる労働者と看做すところに特異性があると言えます。これらの人たちの契約内容や労働実態を見ると労働基準法上の労働者であると考えざるを得ませんがだからと言って、労働者として採用しなければならないと短絡すると本人達は当惑してしまうことになります。しかし一方的に過酷な労働条件を突きつけられれば改善を申し入れざるを得ませんが、そんなことをすれば契約更改がなされない恐れが多分にあります。そのためには自営業者としての立場は維持しながらも労働組合法上の労働者性が認められればユニオンを結成し、またはユニオンに加入して団体交渉により労働条件の改善を求めていく道が開けてくることになります。労働組合法上の労働者性についての判断基準はこれまで示されていませんでしたが、厚生労働省は平成23年7月25日に労働組合法上の労働者性の判断基準(注2)を示しましたのでこの概要を報告します。
 今後は、この基準に基づいて業務委託・独立自営業者の労働基準法上の労働者性の問題は横に置いたまま労働組合に加入可能かどうかの判断をすることになりました。しかし中には労働基準法上の労働者性を訴えて社員としての採用を求める人も出てくることと考え合わせれば大きな問題を含んだ基準といえなくもありません。
 この基準を示す前に労働基準法上の労働者性の基本的な判断要素を示しておきます。
基本的な判断要素@労務提供の形態が指揮監督下の労働であること
A報酬が労務の対償として支払われていること
判断を補強する要素@事業者性の有無
A専属性の程度

 業務委託・独立自営業者の場合は、事業主が労働組合に加入して労働条件の改善のために団体交渉を行うためのものですから、この判断基準も次のようにかなり違ったものとなっています。
労働組合法上の労働者性の判断基準

(1)基本的判断要素
1 事業組織への組み入れ
 労務供給者が相手方の業務の遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に確保されているか。
2 契約内容の一方的・定型的決定
 契約の締結の態様から、労働条件や提供する労務の内容を相手方が一方的・定型的に決定しているか。
3 報酬の労務対価性
 労務供給者の報酬が労務供給に対する対価又はそれに類するものとしての性格を有するか。
(2)補充的判断要素
4 業務の依頼に応ずべき関係
 労務供給者が相手方からの個々の業務の依頼に対して、基本的に応ずべき関係にあるか。
5 広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束
 労務供給者が、相手方の指揮監督の下に労務の供給を行っていると広い意味で解することができるか、労務の提供にあたり日時や場所について一定の拘束を受けているか。
(3)消極的判断要素
6 顕著な事業者性
 労務供給者が、恒常的に自己の才覚で利得する機会を有し自らリスクを引き受けて事業を行う者と見られるか。

 また、基本的判断要素の一部が充たされない場合でも直ちに労働者性が否定されないこと、各要素を単独に見た場合にそれ自体で直ちに労働者性を肯定されるとまではいえなくとも他の要素と合わせて総合判断することにより労働者性を肯定される場合もあること、に留意する必要があるとしています。さらに、各判断要素の具体的検討にあたっては、契約の形式のみにとらわれるのではなく、当事者の認識や契約の実際の運用を重視して判断すべきであるとしています。


(注1) バイシクルメッセンジャー及びバイクライダーの労働者性(基発第0927004号平成19年9月27日)
(注2) 「労働組合法上の労働者性の判断基準につい」下記のサイトから報告書本文等が参照できます。。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001juuf.html