技能実習生制度を利用する事業主の意識の問題例




 技能実習生問題については受け入れをする会社が制度の趣旨を理解し、コンプライアンスの意識があれば問題が発生しても簡単に解決するはずです。そうした例が大半ではあっても、中には全く非常識な考えを持った会社があり、裁判に進まざるを得ないこともあります。昨日届いたスクラムユニオンの機関誌を見ると、中国人の技能実習生3人で760万円の残業代未払いがあることを会社も認めながら、父親から借金まみれの会社を引き継ぎ、1億2千万円以上の借金を400万円まで減らしてきた、1000万近くも残業代を支払えば会社が倒産する、と居直っています。技能実習生制度は、低賃金で労働させるための、また残業代を払わないことでこうした会社を救済する制度なのでしょうか。技能実習生制度は「借金返済や搾取対象の低賃金労働者確保制度である」というのが受け入れ機関の常識では困ります。
 こうした会社の意識を明確に示す答弁書を紹介します。これは、エクレシア第109号「傷病手当金請求で解雇された技能実習生と同僚の解雇・強制帰国」で紹介した事例で、進行中の裁判の中で、相手方から提出されたものです。技能実習生制度は、関係者すべてが嘘で成り立っていることを前提に細心の注意を払って運用していますので、制度の趣旨を守っていると屁理屈を捏ねるのが当然と思っていたら、協同組合に責任転嫁し、こうした制度とは全く関係がなく、被害者であるかのような説明をしています。この協同組合は制度の趣旨を無視し、受入企業への指導もせず、資格外活動での帰国、残業代問題等が頻発しています。先日も、保険料免除期間はあるが納付済み期間がないとの理由で脱退一時金不支給通知がきたとフィリピンから連絡がありました。調べたら基礎年金番号が二つありました。労働者となった時点で既に持っていた基礎年金番号で厚生年金資格取得手続きがされず、新たな基礎年金番号が付与され、その年金手帳を本人に渡していなかったことが原因でした。
 以下は、「(2)研修期間」としてまとめられた部分の全文です。以下登場するH氏は第1次受入機関であるI協同組合の常務理事です。
 「具体的な研修内容については、被告会社は事前にH氏から「重機の見習い」という言葉で、口頭による補足説明を受けていた。
 一方で、実際に「Iカントリークラブ」においてできる重機の操作というのは、バックホーやパワーショベル程度であり。そのほかに重機そのものではないが、類似する機械として、ゴルフ場業務に付随する各種芝刈り機やバンカー掻きの機械がある程度であった。
 そのため、被告会社における研修内容は、上記各機械の使用にとどまるであろう旨を、被告会社代表をはじめとする被告会社関係者(従業員のK氏や取締役のU氏)からH氏に説明し、H氏は、それで問題ないと述べていた(本件を通じ、被告会社としては、H氏が本件の研修生の主導的役割を果たし、かつ、原告を含む上記研修生3名の窓口となっており、実際に予想された上記研修内容も、H氏から上記3名に説明されていたと認識している。)。
 実際の研修期間においては、原告は、通常のゴルフ場業務(ゴルフバッグの移動、芝刈り、バンカー慣し、グリーンの散水)を行い、その傍ら、バックホーやパワーシャベルを含む上記各機械の練習・使用を行った。(バックホーやパワーシャベルの練習回数は数回程度であった。業務がないときは、ゴルフ場以外の被告会社の業務である造園業や農作業等も手伝ってもらったことがある。)
 練習にあたっては、被告会社従業員のE氏が指導し、付き添った(教習所へ通うことを勧めたが、H氏から、免許所持者による指導で足りるのでそのようにされたい旨を述べられたため、それに従った。)
 最終的に、東京から試験管が来てゴルフ場の敷地内で原告の実技試験が行われた。
 後日、H氏から、合格したとの報を聞いている。」
 第2次受け入れ機関が3年間の責任を負っているはずなのですが、「他社の社員を温情的に受け入れて研修させてやったのに騙された」といった感覚でしかないのでしょうか。