技能実習生の脱退一時金
厚生年金に加入させられていない場合の不利益問題


 技能実習生から話を聞いていると、時々「国民年金に加入している」と聞く事があります。5人未満の個人経営であれば問題ありませんが、株式会社等の法人で実習を行っている場合には企業の規模にかかわりなく厚生年金への加入が義務付けられています。厚生年金に加入させないのは、会社にも労働者と同額の保険料を負担する必要があるため、この負担を回避するためといえます。その結果、技能実習生は多大な負担・損失を蒙ることになります。

【保険料】
 平成26年度の国民年金の保険料は15,250円です。これを厚生年金の保険料に置き換えてみると標準報酬月額は17万円から18万円あたりとなります。これまで数件脱退一時金の源泉徴収税の還付請求をした中で平均標準報酬月額の一番大きい人が160,083円でした。それ以外は全て14万円未満でした。2009年度の技能実習生への支払賃金平均額は143千円(2010年版JITCO白書)です。この賃金に該当する厚生年金保険料は12,155円で、国民年金保険料との差額は3,095円あり、技能実習生はこの負担に泣き、会社は負担すべき厚生年金保険料の12,155円を支払わずに笑っているという構図になります。

【脱退一時金問題】
 次に、3年間の技能実習が終わって帰国すると、それまで加入していた厚生年金か国民年金に対して脱退一時金の請求を行います。国民年金の場合には、保険料を支払った月数に応じて還付される脱退一時金の額が表で明示されていますが、厚生年金の保険料は毎年4月〜6月に支給された賃金の平均で1年間の保険料が決まるため脱退一時金の額は支給決定されるまで分からないといえます。ある技能実習生の例で国民年金に加入していた場合と比較してみると以下の表の様になります。
 実際に技能実習生が負担する保険料の額と脱退一時金の額との関係でみると、厚生年金に加入すべきところを無視された技能実習生がどれほどの不利益を受けているかよく分かります。

【源泉所得税の問題】
 脱退一時金に対しては20.42%の源泉徴収がされます。これについては、日本に居住する誰かを納税管理人に指名して確定申告をすれば全額還付されます。ただ、この手続きをする人を日本国内に見つけることが出来る技能実習生はいるでしょうか。中国人技能実習生は租税条約で月々の所得税は非課税とされていても脱退一時金については課税されているのではないかと思います。当然、その他の外国人が帰国し、日本に帰ってこないならば当然脱退一時金を請求することが出来ます。

【支払年金保険料と脱退一時金支給額の関係】
厚生年金
(平成25年9月帰国者の例)
国民年金
(同様の条件)
還付率(注2)
厚年
国年
 被保険者期間
35か月
35か月
    
 平均標準報酬月額
139,371円
15,040円
 本人支払保険料額(注1)
416,605円
526,400円
 支給率
2.5
 脱退一時金支給額
348,400円
225,600円
 83.6%
 42.9%
 源泉所得税(注3)
71,143円
0円
 
 差引支給額
277,257円
225.600円
 支払保険料との差額   ▲68,205円
 ▲300,800円
※注1 本人が支払った保険料の概算額(25年9月以降の平均標準報酬月額で計算)
    厚年7級 11,903円×35月=416,605円(本人負担)
※注2 還付率は、厚生年金の事業主負担分(同額)を加えたもので計算すると41.8%なりほぼ同じ。
※注3 国民年金は所得税が源泉徴収されません。