全ての技能実習生に該当する問題から
〜身近に外国人に接する人達に配慮してもらいたい事項〜



 技能実習生問題は、残業代、解雇や強制帰国などニュース性のあるものばかりが取り上げられます。こうした問題で全国の支援団体等が支援する人数は1年間に技能実習生15万人の内の数パーセント、1%未満かもしれません。住居の問題等何らかの問題を抱えながら一人で悩んでいる技能実習生は、根拠はありませんが80%、パワハラやセクハラそして賃金未払い等大きな問題抱えている技能実習生は50%弱いるのではないかと感じています。「なぜ相談しないのか」と疑問に思われると思います。母国に置いている保証金の問題(フィリピン人技能実習生除く)また送出機関や受入機関(協同組合と会社)からの圧力や外国での生活からくる恐怖感があります。この恐怖感の根っこには警察も弁護士も信じることが出来ない国から来ていることもあり、この恐怖感を乗り越えることが出来なければいくら顔なじみになっていても相談してくることはありません。それ以前に支援者との接点がないことがありますし、フィリピン人の場合には協同組合から教会に行ってはいけないとの指示が出されています。今回は全ての技能実習生に共通しながら取り上げられることの少ない問題を取り上げてみました。当然、留学生や外国人労働者全般に関係する問題もあります。一過性の事件を扱うユニオンや弁護士さんたちには気づきにくい問題であり、また対応し難いものであるため、日常的に技能実習生や外国人に接する人たちが関心を持ち、アドバイスまた手続の手伝いをしていただければと思います。

1.中国人技能実習生の所得税(留学生も同じ)について
 現在中国との間の租税条約に基づいて、技能実習生や留学生の賃金に対して所得税は課税されません。この適用を受けるためには、会社を通して「租税条約に関する届出書」を所轄の税務署に提出しておく必要があります。留学生についてはこの手続きがなされていないのが普通ではないかと考えられます。
 ただ、租税条約が締結されている場合であっても、厚生年金や国民年金の脱退一時金に対しては20%の源泉徴収がされますので、確定申告で還付請求をする必要があります。(5.厚生年金・国民年金の脱退一時金の項を参照ください。)

2.扶養控除について
 労働者が扶養している配偶者や親族(16歳未満の子供は除く)は源泉所得税の扶養控除の対象になります。外国人であっても母国に送金してこうした親族を扶養している場合には、日本人同様、会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出することで扶養控除を受けることが出来ます。フィリピン人の場合、バランガイの扶養証明と銀行等公的機関からの送金証明が必要になります。後日、税務署に確定申告することも可能ですが、戸籍などの書類を取り寄せる必要があるなど煩雑な手続きとなります。技能実習生の場合この手続きが取られていない例が多いといえます。賃金支給明細書で確認することができます。

3.帰国時の年末調整について
(1) 所得税法は、「年の中途で、海外の支店へ転勤したことなどの理由により、非居住者(1年以上国内に住所を有しない人)となった人」に対しては、12月を待たずに「非居住者となった時」に年末調整をするように定めています。従って、技能実習生が帰国する際には、会社は最後の賃金で年末調整を行い所得税の清算を行う必要があります。
(2) 何らかの理由により前項の年末調整がなされない場合には、出国後、本人たちが、「納税管理人」を立てることにより確定申告を行うことでできます。この場合、「源泉徴収票」と「所得税・消費税の納税管理人の届出書」(本人収書やサインが必要)を添付して確定申告書を税務署に提出します。
※技能実習生以外の場合
 年末調整されていない例も少なくありません。特に、途中で転職した場合には、前職場での源泉徴収票を会社に提出していなければ、全職場と今の職場の源泉徴収票を添付して確定申告をする必要があります。

4.住民税について
 住民税は前年度の所得に対して、6月から翌年5月までの期間に分割して納付することになります。6月前後に帰国する技能実習生達から一括徴収されるとの相談が数件ありました。
 会社は1月末までに前年度の源泉徴収票を市町村に送付します。その際、賃金を支給する際に住民税を徴集する「特別徴収」が、本人が直接支払う「普通徴収」の別を記入します。カキ打場の日系フィリピン人のまず100%は「普通徴収」とされ、滞納していると考えられます。技能実習生の場合は「特別徴収」されている例が多いと思いますが、帰国の時期にもよりますが残額を一括徴収されるとなると死活問題となってしまいます。
 住民税を特別徴収されている人が退職すると会社は「給与支払い報告・特別徴収に係る給与所得者異動届」により市町村にその後の徴収方法等を報告します。この書類によると、次の場合には普通徴収することになっています。外国人の場合には、帰国後に請求を待って支払うということになります。
(1)退職日が6月から12月の間で、一括徴収の申し出がないとき。
(2)5月31日までに支払われるべき給与又は退職手当等の額が未徴収税額以下で給与天引きができないため。
(3)死亡による退職のため。

 要するに、会社が「普通徴収」に○印を付けて異動届を出せば問題は無くなります。

5.厚生年金・国民年金の脱退一時金について
 国民皆年金制度を取っている日本では、技能実習生も含めて外国人も厚生年金か国民年金への加入義務があります。しかし年金をもらえる期間日本にいない人に対しては掛け捨て防止のため、帰国後に脱退一時金の請求をすることにより、保険料の一部が還付されます。この手続きを送出し機関が代行して高額な手数料を取っている実態があります。手続き自体簡単なものであるため、帰国前に記入要領を指導して本人に手続させる必要があります。これまで脱退一時金が振り込まれてこないとの相談が寄せられていますので、必ずコピーを取るよう指導しておく必要があります。また、「金センターから「市町村に確認したら本人確認ができないため保留している」と回答されたこともありましたので、外国人登録証の面てと裏面を写真に撮らせておいた方がいいといえます。
 また、脱退一時金については20%の源泉徴収がされます。母国での1か月の生活費にはなるはずですから確定申告をすれば全額還付されます。そのためには次の書類が必要となります。
(1) 「所得税・消費税の納税管理人の届出書」
 日本に住んでいる人を納税管理人とする必要があり、本人の署名等も必要となるため帰国前に貰っておくか、渡しておく必要がある。
(2)「脱退一時金支給決定通知書・送金通知書」
 年金センターから本人に送られるため、送ってもらう必要がある。
(3)確定申告書用紙(税務署でもらう)
(4)送金方法の確認

6.その他
 日本では外国人に対しても社会保障の分野で日本人と同じように手厚い保護が与えられます。ただそのためには、健康保険と年金保険の保険料を支払っておく必要があります。滞納しておればこうした社会保障を受けられませんし、受けられたとしても過去に遡って保険料を支払うことになります。

(1)死亡したとき
 健康保険から埋葬料が出ますし、場合によっては遺族年金が受給できます・

(2)20歳前又は生まれつき重度の障害を負っている場合
 20歳前に国民年金の障害等級1級か2級に該当する障害を負っている人は20歳になると障害基礎年金を受給することが出来ます。障害を負った時点で日本に居なくても構いません。

(3)仕事中や通勤途中の怪我や休業
 労災保険から治療費、休業補償費、障害補償年金また埋葬料を受けることが出来ます。会社から労災保険に加入していないと言われた場合には労働基準監督署に申告すれば受給できます。

(4)病気で心臓などの大きな手術をする時
 長期間休業することになり、多額な医療費がかかりますが健康保険からの給付(高額療養費)があるためわずかな医療費で済みます。大きな病気に罹ったら日本で治療を受けてください。健康保険の種類により扱いが一部違います。

@傷病手当金・・・・会社が加入する健康保険だけの給付です。
A高額療養費・・・・必ず給付されるもので、いくら高額な医療費となっても自己負担は1カ月8万円前後で済みます。事前に健康保険か市町村から「限度額適用認定証」を貰っておく必要がります。

(5) 出産を巡って
@ 子どもを産むときは、42万円又は39万円の出産育児一時金が支給されます。
A 会社で加入している健康保険の場合は、産前6週間、産後8週間の休業に対して1日当たり60%の出産育児手当金が支給されます。
B 前項の休業を終わり、子どもが1歳になるまで休業する場合には、雇用保険から1日につき50%の育児休業給付金がもらえます。一定の要件を満たせば1歳6か月までの延長も可能です。

(6) 退職・解雇された時
@ 1週20時間以上働いていたのならハローワークで失業手当を受けることが出来ます。
A 会社が加入手続きを取っていない場合もありますが、その会社に勤務したときからの賃金明細書を持ってハローワークに行くと会社に手続を取るよう指示を出します。