外国人低賃金労働者の導入形態


 日曜日に繁華街を歩くとかなりな数の外国人を目にします。観光旅行を目的とした欧米系の人たち以上に中国や東南アジアから来た人たちが目につきます。地元に長年住んでいる人たちもいますが大半は技能実習生と思われます。技能実習生は私たち日本人が敬遠する職場、日本経済を支える職場で働いています。新卒は売り手市場である一方、非正規労働者にとっては安定した職場を得ることができない状況の中、技能実習生は増加の一方という現象を不思議な思いで眺めざるを得ません。しかし技能実習生=低賃金労働者の導入という図式は間違いではないのですが、ベトナム人の日本語学校への留学を隠れ蓑にした低賃金労働者導入を初めとした技能実習生以外の導入ルートが拡大してきているように思われてなりません。
 フィリピン人を中心とした私の活動の中で低賃金労働者の導入に関しては、@技能実習生、AJFC、B日系フィリピン人が中心ですが、C日本語学校への留学生の問題では技能実習生だった人が1名いるだけで今後の動向が気にかかります。目につかないのですがA〜Cに該当する人たちの導入が拡大しているように感じられてなりません。ただこれら以外にフィリピンで見知らぬ日本人から日本に働きに来るように声をかけられ短期在留資格で来日し監禁状態のまま建設現場で働かせられ教会に保護を求めてきた例が2月にありました。信じられない話ですが、日本で働くことを期待している人の多いフィリピンではこうした形態もあり得るのかもしれません。また同じところに他の外国人も居たとのことですから不法滞在者の寄場的なものが広島にもあるのでしょう。技能実習生や留学生は在留資格の項目であるため統計がありますが残りの二者については統計上確認することができないため事件として報道されたものや、相談を受けたり、情報として報告を受けたものからの勝手な判断としか言えませんが、目に見えないところで大きな問題を含んだ形で拡大していると感じています。問題がなければ取り上げる必要はないのでしょうが一部では大きな労働問題があるのが報告されていす。ただそれ以上に、受入機関が利益追求のため拘束するという状況もあり、労働問題と同時に人権問題として取り組む必要性があると考えられます。

【JFCにかかわる問題】
 JFCの問題は平成27年2月15日付の毎日新聞のトップに掲載された岐阜県での事件がありました。日本人の父親から生まれ、認知されていないJFCの母子らを「永住権が取れる」と誘って短期在留資格で来日させ、借金を負わせパブ等で不法就労させていたという事件でした。この事件の背景には一般社団法人国際財団という組織がバックにありました。ちょうど同じ時期にこの国際財団がらみで認知の裁判を起こしている家族からの相談があり、来日までの状況や日本での生活の実態、認知裁判での弁護費用等について聞き取りしていました。この時期の登記簿を見ると国際財団の評議員には弁護士がおり、この弁護士が認知の裁判を担当していました。この家族外にも一軒家に数家族が同居し認知の裁判を起こしていましたが、不法就労の強要はありませんでした。国際財団の下部組織として全国にJFC母子をフィリピンから連れてくるブローカーがいるようです。私のところの例では、タレント時代のブローカーが認知されていない子供を持つ人たち10名程度を集めてセミナーを開き、裁判に勝てそうな証拠のある者3名が選ばれたと聞いています。岐阜のように不法就労を目的としたものは例外で、大半が、不法就労を禁止しているというのが現状ではないでしょうか。
 また、大阪や奈良県で老人介護施設を運営している寿寿がフィリピンに設立した関連団体「まごのてフィリピン」を通じて在留資格のある数十人のJFCの親子に渡航費等の費用を貸し付け転職の自由を奪い、奴隷的労働を強いるという事件が平成26年に発覚しました。
 同じような問題が岡山で発生しています。これは本人からCTIC(カトリック東京国際センター)に連絡が行き、私の方に対応依頼があったものでした。賃金の問題等でトラブルがあり、受け入れたJFCの支援を目的とするNPOから「明日帰国させる。」と言われ、急遽保護したものでした。子供の学校の問題とこれからの生活の問題を含めて対応を検討しています。このケースの場合、フィリピンの日本大使館に相談したらこのNPOを紹介されたといっています。JFC支援を謳った団体が借金をかたに転職の自由を拘束したり、本人の意思を無視して強制帰国を企てるなど許し難い人権無視と言わざるを得ません。技能実習生よりも人数ははるかに少ないとしてもより深刻な問題を孕んでいるといえます。

【日系フィリピン人】
 全国でどの程度の日系フィリピン人がいるのか、また問題を抱えたグループとして認識されているか分かりません。広島のカキ養殖業には多数の日系フィリピン人が働いているため彼らの抱えている問題がよく見えてきます。日本に来るためには母国の斡旋機関に登録し、日本の派遣会社が受け入れる形態となっています。来日費用と当面の生活費は派遣会社が貸し付け、返済が住むまでは派遣会社の拘束下にあます。受入形態としては技能実習生と同じようですが、制度によって守られていない日系フィリピン人は、同じカキ養殖業者に雇われていても、技能実習生は労働保険と社会保険の適用を受け、日系フィリピン人は無視されているのが現状です。日本語の勉強をしてくるわけでもなく、来日してもそうした機会を見つけるのも難しいため日本語ができない人がめだちます。その結果、長年日本で生活していても親類縁者等がいない人たちは派遣会社の下を離れることが難しい面があります。現在3世までが日系人として来日して、自由に働くことができますが、低賃金労働者導入のためこれが4 世までに拡大されれば飛躍的に増加することが予測されます。

【日本語学校への留学生】
 この問題にいては「ルポ日本絶望工場 出井康博著 講談社+α新書」に詳しく説明されているので参考にしていただければと思います。それを裏付けるようにベトナムから日本語学校を隠れ蓑として働きに来る人たちが平成27年度は前年度比52%増となっています。150万円ほどの借金をしてきているのが普通とのことです。借金の返済、毎月の授業料の負担と生活費を賄うためには1週28時間の労働しか認められていない留学生にとっては1か月10万円にも満たない収入しか得られないためペイしないはずですが、母国の斡旋機関と日本語学校の利益のため踊らされているとしか言いようかありません。かって技能実習生だった人がフィリピンからも来ていますが、どのような状況なのか気にかかるところです。月謝を1か月でも滞納すると帰国させられるといっています。
 平成29年3月には、宮崎県都城市の介護施設を運営するグループが日本語学校を設立し、インドネシア人留学生を受け入れ、グループ内の介護施設で働かせ、マイナンバー通知カードを保管し、職場を変える自由も制限していました。都城労働基準監督署は、「@学費後払い制による高額な賃金控除、Aマインバー通知カードの保管、B途中退学の違約金 などを総合的に考慮し、留学生の意思に反する強制労働と判断し」(労働新聞第3107号平成29年4月3日)書類送検しています。ちなみに強制労働禁止の労基法第5条は労基法上最も重い罰則(6月以下の懲役または300万円以下の罰金)が定められた条文です。今後、技能実習生問題とともにこのような報道が増えるのではないでしょうか。
 以上みてきたように低賃金外国人労働者の導入形態には国によって違いはあるかもしれませんが、技能実習制度以外にもこうした3つの形態があると考えられます。JFCと日系フィリピン人の問題については実態の把握が難しいため外国人問題に関係する人たちとの情報交換を通して実態、問題点またどのような解決方法をとるのがよいか検討していく必要があるといえます。