休日の振替を巡って

 サリーマンにとって休日は待ち遠しいものであり、何をするかいろいろな計画を組んで有効に活用している人も少なくないといえます。そのため会社の都合で休日出勤を命じられたり、他の日に振替られたりすれば面白くはないといえます。外国人技能実習生たちも当然同じ思いを持っています。同時に、出稼労働者として母国に仕送りしなければならない立場からは残業はしたいし、休日にも働きたいというのが本音だといえます。そうしたところに付け込んでというか、会社の利益のみ図る目的で、単純にまともな残業代を支払わないものから、内職として出来高制で支払おうとしたり、といろいろな仕組みを考えだしています。技能実習生同様に労働法のイロハも分からない日本人も同じ不利益を蒙っています。ブラック企業と言われるものは当に典型的な例といえます。

 前号の「技能実習生は暴力の対象か?」で触れた会社では賃金・年休等の問題がいまだ交渉中ですが、雨天時は仕事ができないため、これまでは、途中から帰らせたり、年休で処理したりしていたことを問題として取り上げている中で、休日の振替を行ってもいいかと言ってきました。会社の事情もあり、特別問題も無いため了解をしましたが、技能実習生達は頭で理解できても、心情的に納得できないところがあり、出勤するべき日に休んでしまいました。会社から、その旨連絡があり、会って話を聞くといろいろな不満や事情があることが分かりました。私たちも、会社もこれまでの経緯に係る技能実習生の気持に思いを巡らせることができないところに大きな原因がありました。少々賃金面で問題があっても、気持ちよく働ける職場、意思疎通ができている職場であれば問題にならないのが普通です。私たちにとってもそうではないでしょうか。余程会社の態度に不満を持たない限り、監督署に行ったり、ユニオンに加入して交渉に入ることは無いはずです。要するに感情的に良好な職場環境があれば少々のことは問題にならないはずです。私の立場からいうのはどうかとも思いますが、労働法を四角四面に守っていたら非常に厄介な話で、事務担当者の仕事を増やすだけとしか言えません。ただいい関係を築こうとしていろいろ世話をしても、やはり世間一般の考え方に準じた賃金を支払わなければ問題の発生は防げません。よく「これだけ良くしてやったのに裏切られた。」との言葉を聞くのは相手の気持ちを考えない一方的な、自己満足的なことしかしていなかったためと言わざるを得ません。

 横道にそれましたが、本題に戻してまず休日振替とはどのようなものであるか見ていきます。労働基準法には休日振替についての規定はおかれていませんが、通達によって取扱い方法を決めていますのでそれを見ていきます。

【就業規則への規定が必要】
 労働基準法上は休日を特定することまで要求はしていませんが、休日の趣旨を踏まえて就業規則等で休日を特定するようにとされています(昭63.3.14基発150号)。特定された休日を振り替えで移動させるためには、当然、休日の振替についての規定を就業規則に定めておかなければいけないということになります。従がって、休日の振替を行う場合には、必ずしも労働者の同意が必要ではないといえますが、労働者の同意のうえ振り替えるのがいいといえます。だだ、就業規則に振替規定が定められていない場合には、労働者の同意がなければできません。
【休日振替できる期間】
 労働基準法の休日についての規定を見ると「毎週少なくとも1回の休日」若しくは「四週間を通じて四日以上の休日」を与える必要があると定めています。この休日という言葉は法定休日(通常は日曜日)を指しているため、日曜日を振り替える場合にはその週から4週間以内の期間内に振り替える必要があります。しかし、通達では、「振り替えるべき日については、振り替えられた日以降できる限り近接している日が望ましいこと。」(昭63.3.14基発150号)とされているため、法定休日・所定休日の属する週又は前週への振替が望ましいのではないかといえます。ただ休日振替で問題となるのは、変形労働時間制を導入していなければ、出勤させることとなった休日の属する週の労働時間が40時間を超えれば割増賃金の支払いが必要となるところです。
【再度の振替】
 何らかの事情で休日振替を行った日を再度振り替える必要が生じた場合には当然振替は可能といえます。ただ、労働者の生活設計といった問題もあるため、再度の振替の場合については労働者の合意を前提として考えるべきではないかと考えます。
【振替休日の回数】
 この問題についても制限は何もありませんので会社の自由と言うことになりますが、休日の趣旨を考えれば個人的には1カ月2回程度に制限するのが良いのではないかと考えます。
【振替手当】
 休日振替の制度は、割増賃金の支払いを会社に対して免除するためのものといえますので、本来休日であった日の出勤に対して25%また35%の割増賃金の支払いは不要になります。しかし、労働者に対する迷惑料として振替手当を支給する会社もあります。
 今、問題となっている技能実習生の会社は、造船会社の下請であり、造船所の年間カレンダーを使用しています。このカレンダーは変形労働時間制を使用せず、1週間40時間で組まれており、年末年始やお盆前後には休日がしっかり入っています。技能実習生の契約書は、年間カレンダーの使用ではなく、土曜・日曜は休日また祭日も休みとなっています。彼らも年間カレンダーがあるのは分かっていても、そのあたりの説明は受けていないため、契約書に従って通常のカレンダーの土曜日や祭日は25%増しでなければ納得しません。また休日振替で土曜日や祭日に出勤となっても割増賃金がつかないことに不満を持っています。このあたりのことについては、法律上問題がないと説明すると分かってくれますが、振替で出勤となった日に休んでしまいました。理由を聞くと、彼らと同じ人数いる日本人に対しては振替を行っていないし、毎日残業させ、土曜日も出勤させている。しかし自分たちは5時に帰らせられ、土曜日も働かせてもらえないという不満があります。ユニオンに入って賃金等の問題提起したことに対する仕返しです。また、ユニオンを辞めたら残業をさせると言ってきています。こうした行為は労働組合活動に対する弾圧としての不当労働行為となり、労働委員会への提訴も可能となりますが、そうすると紛争が拡大するだけの話でしたありません。会社自体が不当労働行為を知らないためなのでしょうか。
 不当労働行為の話は別として、残業に対する日本人との差別と同時に、彼らの賃金制度に大きな問題があります。最低賃金で計算された日給で彼らの賃金は支払われています。会社カレンダーで労働日が決まれば、自働的に年間の賃金も決まってしまいます。しかし支払方法は、日給月給として会社カレンダーで定められた毎月の出勤日数に応じて支給額が毎月変わります。表にして比較してみると次のようになります。
稼働月の労働日数
賃 金
備  考
 1月や8月の労働日は15日程度 99千円 
社会保険や住宅費の控除
52千円程度/月
 一番多い月は10月で22日稼働 145千円 
 月給制として平準化した時の1カ月の賃金 132千円 
 1年間の賃金総額 1,584千円 
240日×8時間×825円

 会社の業務量が減少し、残業が無くなれば上記のありさまになり、稼働日数の少ない月は、仕送りをすれば生活できない現状があります。月給制にしたところで1年間の総支給額は変わるはずはないのにこうした配慮はなされていません。
 こうした残業での差別や賃金制度の不備また班長によるパワハラなどのわだかまりが解消されないため会社への不信感が募り、またなぜ契約書と職場の実態が違うのか会社からの説明もない状況の不満が積もり積もって休日振替のボイコットに繋がったといえます。