外国人の脱退一時金と「退職所得の受給に関する申告書」の話し


 私の周りを見回すと様々な在留資格で生活している外国人がいます。その大半が何れは母国に帰ったり他の国に移動したりします。日本は国民皆保険制度なので日本で働く人は国籍を問わず健康保険と年金保険に加入する義務があります。しかし年金がもらえる期間日本に在留しない人達にとって年金保険は掛け捨てとなってしまいます。そのため掛け捨て防止として脱退一時金の制度が設けられています。また死ぬまで日本に居住する外国人でも年金受給に要する保険料納付済期間を満たすことができない人に対しては脱退手当金で掛け捨て防止がなされています。脱退手当金については日本人であっても該当すれば当然請求できます。
 外国人の場合、この二つの知識がある人はどのくらいいるでしょうか。3年間しか日本に滞在できない技能実習生はこの制度のことをよく知っていますし、帰国時には受入機関が用紙を配布しているので問題はありませんが、その他の外国人と話をしてもこの制度のことは何も知りません。一つの例として、先日、派遣期間が終了すると母国に帰ると思われる神父様にこの話をしたら「よくわからない。事務の方が手続をしてくれるのではないか。」とのことで教会に電話したところ「帰国時に脱退一時金の用紙を渡しているので手続をしていると思う。源泉所得税の還付については何も連絡が無いので分からない。」とのことでした。そういう私自身も外国人との係わりを持たなかったらこうしたことは何も分からないままでしたし、関心もなかったはずです。
 先日、移住労働者と連帯する全国ネットワークのメールで各省庁交渉の資料が送られてきました。この中に脱退一時金の項目もありましたが、ここで取り上げられているのは脱退一時金の手続きを「元の勤務先が請求する場合もある」と以前厚労省が回答していることに対して「どういう場合なのか明らかにされたい。」とのものでした。間違いが無いようにただ取りまとめてチェックして提出するだけならいいのですが手数料を取っていたら社労士法違反になります。以前フィリピン人からは送出し機関が手数料を取ってやっているとの話を聞いたこともあります。
 脱退一時金が支払われる時には退職所得として20.42%の源泉徴収(厚生年金の場合のみ)がされます。これについては日本に住んでいる人を納税管理人として確定申告をすれば全額還付されます。インターネットで調べると様々な人が商売として宣伝しています。商売となると税理士法との関係が出てきます。技能実習生の話では帰国時に受入機関から「どこそこに連絡すると20%程度の手数料で手続をしてくれると言われた。」との話を聞いたことがあります。この場合、裏銀行も営み送金手数料も稼いでいると思います。受入機関が紹介すべきものではなく、むしろ制度として受入機関に手続を義務付ければと思いますがそれは難しい話でしょう。
 技能実習生問題に係っていると実務家サイドからみると技能実習生制度に様々な疑問が出てきました。その一つがこの税金の問題です。どのようなものかやってみなければ手続方法も分からないのでトラブルを抱え会社と交渉した技能実習生の中でも友達づきあいが続いていた数名について納税管理人として手続をおこなってみました。手続き自体簡単だったので機会がある都度、申告書の書き方は指導するので日本に居る友人に納税管理人になってもらって手続をするようにと話してきました。最近、無料法律相談会に参加いただいている税理士さん方の協力が得られることになり配布用の資料を作成し、セミナー(注1)を開催することにしました。11月上旬に開催するセミナーの資料を整えている中で遅ればせながら「退職所得の受給に関する申告書」を「脱退一時金請求書」に添付して提出したらどうかと思いつきました。そこで年金機構に相談の電話をすると「外国に住んでいる場合には認められていないので、納税管理人を立てて確定申告してもらいたい。」と良い回答は得られませんでした。ただ日本国内にいる人を対象としている脱退手当金については一緒に提出すれば源泉徴収しないとのことでした。
 蛇足ですが、脱退一時金を提出する時、抹消された住民票(除票)が添付されていれば、年金センターが市町村に確認する手間が省けるので支払期間が短縮される可能性が有るようです。可能であれば、技能実習生が市役所に手続に行ったとき一緒に貰って来ればいいのですが、それができなければ委任状を書いてもらって入手することもできます。この辺りのことは行政書士さんの分野となります。外国人の問題では在留資格の更新・変更での問題も少なくないため行政書士さんの協力が欲しいところです。関連士業の協力体制ができればスムーズな対応ができるのですがボランティアとなるとなかなか難しい話となります。

(注1) 11月726日広島テレビが技能実習生についての報道を行ないました。カキ養殖で働く中國人技能実習生の仕事ぶりや事業主さんのコメントそして帰国時に飛行場での別れの場面まで8分程度のものでした。この中の終わりの方でこのセミナーも報道されました。フェイスブックの私のページにこのビデオをシェアしていますのでご参考ください。
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