ブラック企業対策電話相談など

「ダンダリン労働基準監督官」というドラマが労働基準法違反の問題を取り上げています。外国人技能実習生の問題も取り上げられていましたが、労働基準法違反の面しか取り上げられていなかったのは労働基準監督官が主人公であるためやむを得ないことかもしれません。労働問題をドラマにすると深刻な問題にしかなりませんが、ドラマとしては面白おかしく構成されていますが、外国人技能実習生を主人公にした方がより面白いものが出来るのではないかと思ってしまいます。しかしこのドラマを通じて労働基準法がお茶の間に入ってきて、問題意識を持ち、問題解決に向けて頑張ろうと思う人が出てくるのを期待したいと思います。
 昨日は、「研修は自由参加であるため、賃金の支払いが必要ない。」といった問題が取り上げられていました。法律は細かなことが決められているようですが、実際それを運用するとなると外枠しか書かれていないのが現実です。そのための通達や指針や基準などと呼ばれるものが厚労省から出されています。またそれら以外の判例などを参考にしながらケースバイケースでどう解釈するか模索していくことになります。当然、限りなく白に近い解釈から、限りなくクロに近い解釈まで可能なグレイゾーンと言うことができます。困った点の一つに、問題点を指摘すると「労働基準監督署に確認したら問題はないと言われた。」と回答する会社が少なくないことです。質問の持って行き方によっては自分の思う回答を引き出すことも可能です。形としては問題がないとしても、実態からみると問題があるといえるケースにもよく出会います。私たちの立場からすれば実態を調べ通達や判例等によって否定して正しい形に戻させることになります。しかし経営者に有利な形=合法的な形で理論構成することも実際に可能なのでボランティアとして労働者サイドから制度と実態の矛盾に出会うと心の中で「上手にやれ。」と思うことも少なくありません。
 一方顧問先との関係では合法的な形で制度や賃金の問題をどうするか無い知恵を捻りだしているのが現実です。昨日のドラマの「研修は自由参加であるため、賃金の支払いは必要ない。」は、文書では自由参加と記載しながらも、口頭で制裁等をチラつかせて強制参加させるものでした。労働基準監督署としては証拠がなければ指導もできないためこうした方法は広く行われています。パワハラとの関係も問題となるかもしれません。ブラック企業の実態はこうした法律の裏を泳ぎまわって問題としにくい形を取っているのが現実です。名ばかり管理職の例が分かりやすいものかもしれません。手の込んだ仕組みを考えているブラック企業もあれば単純に使い捨て労働者として残業代を支払わず、休日も与えず長時間働かせているブラック企業もあります。サラリーマン生活の経験から上司が帰らなければ帰ることが出来ず雑談している例は少なくないでしょうし、また中には残業代稼ぎとしか思えない行動をとっている人もいます。実際私自身、安全衛生の部署にいた時には、事故報告が入ってくる可能性があるため、1時間程度早く出社し、帰社時間もずらしていました。その間は仕事をするのではなくて好きな本を読んでいるだけです。これを時間外労働として1年分記録して労働基準監督署に申告すれば認められるといえます。しかし日本人のメンタリティーとしてはその様に考えないのが普通ではないでしょうか。契約観念がないと言えばそれまでですが・・。会社としてはこれを暗黙の裡に了解しているはずです。ただ会社に強い不満を持っている人がいたり、残業の度が過ぎると夫や子供の身体を心配して労働基準監督署に申告する例もあります。そうすると会社は問題を回避するための何らかの処置を講じておく必要があると言わざるを得ません。ドラマでもこのような申告また臨検で労働基準法違反が指摘されています。こうした例以外に、ユニオンなどに駆け込んで解決に至るケースも少なくはありません。厚生労働省がブラック企業対策に乗り出し、この9月1日から電話相談を始めたのはこうしたユニオン等の支援団体の活動が大きく寄与しているといえます。
 厚生労働省のHPに電話相談初日の相談件数・内容等が「若者の「使い捨て」が疑われる企業等に関する無料電話相談について」として掲載されています。その内容は下記の通りです。
【相談件数】 1,042件
相談者 相談が多かった業種(件数上位3項目
1 労働者本人 716件(68.7%) 1 製造業 213件(20.4%)
2 労働者の家族 223件(21.4%) 2 商 業 207件(19.9%)
3 その他 103件( 9.9%) 3 その他の事業 108件(10.4%)
相談の対象となった労働者の年齢) 主な相談内容
1 30〜39才 253件(24.3%) 1 賃金不払残業 556件(53.4%)
2 20〜29才 252件(24.2%) 2 長時間労働・過重労働 414件(39.7%)
3 40〜49才 182件(17.5%) 3 パワーハラスメント 163件(15.6%)
※件数上位3項目で、「主な相談内容」は複数回答
※速報値であるため、変更の可能性がある。

 相談件数の1,042件は1県当たり22件で多いのか少ないのかは分かりませんが、「なぜ身近な相談できる所に行かないのか。」と考えてしまいます。しかし問題提起して改善されたとしても、その後誰も守ってはくれない現実があるため、「問題解決には動きたくないが、会社の不当な行為に対して誰かに話したい。」というのが大半の人の気持ちだろうと思います。
 相談の内容を見ると、電話をかけてきたのは若者だけではありませんし、本人以外からの相談が30%強あります。本人以外からの相談は見るに見かねてと言うことでしょうからかなり大きな問題が潜んでいるのではないかと考えられます。また相談は、「賃金不払残業」と「長時間労働・過重労働」が中心といえます。「長時間労働・過重労働」についてはうつ病や脳・心臓疾患の発症又過労死の問題との関係が深いものといえます。電話相談の成果は件数ではなく、どれだけ次のステップに進む力を与えることが出来るかどうかにかかっているといえます。