有給休暇など労基法違反に対する対応


 働く人の権利とは何か考えるときすぐに思い浮かぶのは労働基準法に定められている労働時間や年休などの決まりごとだろうと思います。ただ、こうした決まりごとがしっかり守られているかというと必ずしもそうではないと言わざるを得ません。数年前残業代未払の問題が日本を代表する企業で多数摘発され数十億の支払いを余儀なくされた企業が多数ありました。ただ労働基準法が定める労働時間の決まりごとは工場労働者に対しては問題なく適用できますが、サラリーマン時代を振り返って事務系の職種についてはそのまま適用するのには無理があると言わざるを得ません。工場等の現場で働く人たちの労働密度と事務系の労働密度の問題もありますし、仕事の態様の違いもあり一律には扱えないといったところで労働基準法は全労働者一律に適用するよう定められているため従わざるを得ません。そうした違反に対して労働者が会社に是正の申し入れをしても是正されない場合には労働基準法第104条の2にり労働基準監督署長に対して申告(注1)することができると定めらよれているので是正指導を求めることになります。こうした問題になる違反は大企業では少ないでしょうが中小企業では少なくないと言わざるを得ません。
 先日も外国人技能実習生の残業代未払等の問題の交渉中、病気で数日休んだ技能実習生に対して年休の使用が認められていないため理由を問いただしたところ「年休は本人からの請求に基づいて付与するものであり、本人からの請求がなかったから。」との回答がありました。年休は本人からの請求があって初めて付与されるとの言い分は当然の事です。会社が相手のためを思って欠勤でなく年休の処理をしていたとすれば、難癖をつけようと思えばいくらでもつけられるため私自身も事業主さんに対して本人の意思が明確でない場合には確認するよう指導しています。しかしこの外国人技能実習生の場合、受入機関である協同組合から年休は使えない、会社を休むと解雇され帰国せざるを得なくなるといわれ続けているため年休の行使など夢のまた夢の世界のこととあきらめています。3年間の研修が終わり帰国するときには21日の年休が発生しています。「本人からの請求がない。」と表向きは抗弁してもだれもそれが真実とは考えないのではないでしょうか。本人たちが知らないということは理由にもならないでしょう。契約書(労働条件通知書)には年休のことは明確に記載されているため本人たちも知ってはいても権利を主張すれば帰国させられると遠まわしにでも言われればどうしようもないのが現実です。年休行使を抑制するため残った年休の買い上げを行う会社もあります。全く年休を取らせないということは21日分の賃金カットと同じことになってしまいます。
 こうした労働基準法違反に対して労働基準法は先に述べた労働者から労働基準監督署長に対する申告という制度を導入し、別に違反を防止する制裁的措置として罰則規定が置かれています。強制労働の禁止に対する罰則が一番重く6か月以下の懲役または300万円以下の罰金となっています。年休を付与しない場合は6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金、労働条件通知書を交付していない場合には30万円以下の罰金となっています。労働基準法に罰則規定があることは知られてはいても適用されることはまずないと思いますし、どのようにすれば適用されるかということも理解されていないのが現状ではないでしょうか。申告すれば労働基準法違反として罰則が適用されるかというとそうではありません。これはあくまでも行政指導を通して是正指導を目的としたものでしかありません。あくどい会社に対して罰則規定を適用させようとするには、刑事告訴という手続きを取らざるを得ません。前号に掲載した暴行を受けた技能実習生が加害者を警察に刑事告訴したのと同じように労働基準監督署に年休を与えない、労働条件通知書を交付していないとの具体的な事実と証拠をそろえて刑事告訴して初めて労働機銃監督署が検察庁に送検し、検察庁が罰則規定を適用させるかどうか判断するということになります。前号の暴行事件はこうした刑事告訴の要件を備えているため手続きをしてみる価値があるといえます。問題の多い事業所に対してはこの刑事告訴を行いコンプライアンス遵守の気持ちを持たせる必要があるのではないかと考えています。

(注1) 労働基準法の申告と雇用保険や社会保険の資格の確認についてはえくれしあ第98号を参照ください。