平成26年の「不正行為」について
平成27年4月 入国管理局
入国管理局データ


 毎年発表されている資料ですが、入国管理局が技能実習生の受入に関して「不正行為」を行なったとして通知した事例についての統計となっています。当然のことこの通知を受けた受入機関は一定期間技能実習生の受入が停止されることになります。平成22年の法改正では「「不正行為」による受入を認めない期間を伸長するなどによって、研修生・技能実習生の保護強化を図った。」とされていますが、実態は反対に「不正行為」とされた件数は漸増状態にあります。受け入れ停止という罰則を強化しても改善できないと言うことは受入機関が法令順守の気持ちが全くないとしか考えようがありません。そうであれば制度を廃止するか、零細事業者に対する低賃金労働者の提供と言う本音の部分を違反の少ない一定規模以上の企業を対象とする方向での規制も必要ではないかと考えます。
【第二次受入機関の業種別「不正行為」件数】
平成24年
平成25年
平成26年
 農業・漁業関係 75 79 88
 繊維・衣服関係 71 75 76
 食品製造関係 21 15 11
 建設関係 16 16
 機械・金属関係 12
 その他 18 15
188 210 218

 「不正行為」と通知された業種では、「農業・漁業関係」と「繊維・衣服関係」の業種で75%と群を抜いています。ユニオンからもこの辺りの業種で問題が多いし、悪質なものが多いと聞いています。日系フィリピン人の問題でも農業と漁業では問題が多い業種です。この業種で問題が多い原因を推測すると、繊維・衣料関係では内職という形態が広く行われていたこととの関係からか残業ではなく内職として出来高制で支払う例が多いようです。一方、農業と漁業は、労働基準法第41条で労働時間、休憩及び休日の適用除外と定められていることにあると考えられます。俗に残業代を支払う必要はないとか休日を与えなくてもいいと言われますが、正確には割増賃金を支払う必要が無いだけで、所定労働時間を超えてまた休日に労働させた場合にはそれに見合った時間給の支払いが必要となります。この報告書に事例として、「監理団体は、農業を営む実習実施機関に対し、技能実習生に対する割増賃金を支払わないよう指示していた」と報告されています。これを見ると技能実習生は適用除外に該当しないとの前提で書かれていますが、その根拠がどこにあるのか分かりませんが、在留資格審査の段階でチェックがされているようです。そのため労働契約書には割増賃金の支払いが記載されています。しかしカキ打ち業者を顧問先としている社労士さんはそのことを知りませんし、紛争が発生して出てくる弁護士さんも同様です。いずれの業種にしても家内労働・出来高制で賃金を支払っている業種であるため労働時間管理と言った意識の低い業種と言えるためかもしれません。

【類型別「不正行為件数」】(2桁以上)
 
監理団体
(46件)
実習実施機関
(304件)

(350件)
 賃金不払い   142 (46.7%) 142 (40.6%)
 労働関係法令違反   23 (7.6%) 23 (6.6%)
 悪質な人権侵害行為等 5 ( 10.9%) 4 (1.3%) 11 (3.1%)
 講習期間中の業務への従事 7 (15.2%) 67 (22.0%) 74 (21.1%)
 研修・技能実習計画との齟齬 9 (19.6%) 23 (7.6%) 32 (9.1%)
 偽造文書の行使・提供 18 (39.1%) 11 (3.6%) 29 (8.3%)
 名義貸し 2 ( 4.3%) 19 (6.3%) 21 (6.0%)
 不法就労者の雇用 2 ( 4.3%) 9 (3.0%) 11 (3.1%)

 この表を見て幾つか不思議に思うところがあります。「賃金不払い」と「労働関係法令違反」が44.3%あるのに対して、監理団体に対する指導が無いことです。指針を見ると「監査を行うに当たっては,現地に赴き技能実習生の技能実習の実施状況を直接確認することが肝要です。その際,技能実習指導員などの担当者から状況を聴くだけでは,実際の技能実習の実施状況を十分に把握することはできません。通訳を同行させて,指導を受ける技能実習生から技能実習の進捗状況等を聴取したり,その場で技能実習日誌の記載内容を確認する等して,技能実習の実施状況を把握することが大切です。/また,賃金台帳その他の文書を実際に確認することにより,技能実習生の労働時間や賃金の支払が労働基準関係法令の規定に適合しているか確認する必要があります。」(P16)とされていますが、これだけ問題が発生していれば管理していたとは言えず、当然管理監督不十分として「不正行為」認定されてもいいはずです。入管に直ちに報告していたからでしょうか? 監理団体がしっかりその役目を果たさないからこうした問題が多発しているのは間違いありません。むしろこうした行為を指導している実態も少なくないといえます。

 また「不正行為」と指摘された事業所の技能実習生は受入停止に伴い全て移籍できたのでしょうか。帰国させられた技能実習生も少なくないと考えられるのにその実数の報告はどこにもありません。当然のこと、契約不履行として、監理団体と実習実施機関には残りの期間に対して損害賠償責任を制度として負わすべきと考えられますが無視されているのが現状です。

 次に、「悪質な人権侵害行為等」が監理団体5件、実習実施機関4件だけですが、表に出てこないだけのことといえます。賃金未払等の問題で交渉に入ると実習実施機関だけでなく本来技能実習生を守る立場にある母国の送出し機関や監理団体から本人たちにユニオンを誹謗する言葉や入管のブラックリストに載るとか様々な圧力がかかってきます。証拠がないためここに上がってこないだけの話でしょう。

 最後に、「不法就労者の雇用」については、江田島で発生した中国人技能実習生による殺傷事件を起こした陳さんの場合、最初の実習実施機関が不法就労者を雇用していたことが発覚して、移籍か帰国かと言う瀬戸際に立たされ、たまたま移籍先が見つかり同僚とも離れて孤立したことが事件発生につながったともいえます。

【事例】
1.食品製造業を営む実習実施機関に在籍する技能実習生と送出し機関との間に,妊娠した場合には帰国することを定めた「保証書」が交わされていたところ,技能実習生が妊娠すると,監理団体は送出し機関の要請に従い,技能実習生の意思に反して即日帰国させようとし,かつ,流産の危険性があることを知りながら,約5時間にわたり外部との連絡を遮断して監視下に置いた。

2.食肉加工業等を営む実習実施機関は,「ハム・ソーセージ・ベーコン製造」の技能実習を実施するとして技能実習生を受け入れていたが,同技能実習に必要な乾燥,薫製,加熱等を行う設備を有していなかったほか,同技能実習の作業に必要な食肉製品製造業の営業許可も取得しておらず,実際,技能実習生は主に荷物の受入れ,商品整理,畜肉のカット作業に従事していたもので,同技能実習を技能実習計画どおりに実施していなかった。

3.監理団体は,平成22年12月から平成24年1月までに受け入れた傘下実習実施機関24機関の技能実習生計97名に対し176時間の講習を実施するとしたが,実際は4機関の技能実習生を除き,多い機関でも148時間しか実施しておらず,また,国等からの援助・指導として警察署等から講師の派遣を受けるとしたが派遣を受けていなかったなど,技能実習計画どおりに講習を実施していなかった。