平成27年の来日外国人犯罪の検挙状況から
〜 ベトナム人を中心に 〜



 最近読んだ「ルポ ニッポン絶望工場」の中に留学を隠れ蓑として出稼ぎに来るベトナム人が増加し、その結果ベトナム人の犯罪が増加していると書かれていました。アジア関係からの外国人の増加の状況と警察庁が発表している「来日外国人犯罪の検挙状況(27年)」からベトナム人を中心とした犯罪状況をみてみます。

1.外国人の人数の推移
 日本に在留する外国人は毎年微々たる割合で増加していますが、ベトナム人の増加状況は著しく対前年比で見ると下表の様に平成25年が37.9%、平成26年が38.2%そして27年が47.2%と毎年大きな伸びを示しています。
 こうしたベトナム人の増加を在留資格別にみると、留学が51.8%増、技能実習が69.1%増であり、この二つでベトナム人増加数の86%を占めています。技能実習生では中国人が減少傾向にありこのまま推移すれば1〜2年内には技能実習生のトップの座が中国からベトナムに代りそうな勢いです。ベトナム人留学生の大半が労働を目的としているとすれば技能実習生も含めて単純作業労働者として括ってみると既に逆転していると言ってもいいのかもしれません。
 ネパールを除く技能実習生関連諸国の留学生数は、スリランカが26年の1981人から3219人に62%増加している以外は5000人未満で特に目立った動きは有りません。ちなみにフィリピンからの留学生は平成26年が1013人、平成27年が1314人と技能実習生数と比較すると他の国に比べて低い数値となっています。

【第1表】 (国籍別外国数) ベトナム人が 47,091人増加
国籍
H17
H24
H25
H26
H27
前年比
中 国
519,561
652,555
649,078
654,777
665,847
+1.7%
フィリピン
187,261
202,974
209,183
217,585
229,595
+5.5%
ブラジル
302,080
190,581
181,317
175,411
173,437
▲1.1%
ベトナム
28,932
52,369
72,256
99,865
146,956
+47.2
タイ
37,703
40,130
41,208
43,081
45,379
+5.3%
インドネシア
25,097
25,530
27,214
30,210
35,910
+18.8

第2表 (国籍別留学生数)  ベトナム人が17,005人増加
国籍
H17
H24
H25
H26
H27
前年比
中 国
89,374
113,980
107,435
105,557
108,331
+2.6%
ベトナム
2,165
8,811
21,231
32,804
49,809
+51.8%
タイ
869
4,793
8,892
15,697
20,278
+29.1

第3表 (国籍別技能実習生数)  ベトナム人が23,542人増加
国籍
H23
H24
H25
H26
H27
前年比
総 数
141,994
151,477
155,206
167,626
192,655
+14.9%
中 国
107,601
111,395
107,174
100,093
89,036
▲11.0%
ベトナム
13,524
16,715
21,632
34,039
57,581
+69.1%
フィリピン
8,223
8,842
10,077
12,721
17,740
+39.4%
インドネシア
8,016
9,095
10,064
12,222
15,307
+25.2%
タイ
2,983
3,464
3,947
4,932
6,084
+23.5
その他
1,637
1,963
2,312
3,628
6,907
+90.3%
※ その他の27年の内訳は、カンボジャ3,106人、ミャンマー 1,978人、モンゴル 624人、ラオス 321人、ネパール 247人、
 スリランカ 223人、バングラデシュ 91人、マレーシア 62人、ペルー 47人等となっています。

2.ベトナム人の犯罪状況
 外国人の犯罪状況で目につくのはベトナム人による外国人刑法犯件数の多さです。単純に計算すると日本に滞在するベトナム人の1.73%が犯罪を犯して検挙されています。これは57人で1件の犯罪の発生となり他の外国人と比べるとベトナム人の犯罪件数が突出しています

第4表 在留人数と刑法犯件数
   
@在留人数
A刑法犯件数
在留人数比(A/@)
1件当の人数(@/A)
中 国
665,847人
2,390
0.35%
278人に1件
フィリピン
229,595人
450件
0.19%
510人に1件
ベトナム
146,956人
2,556件
1.73%
57人に1件
ブラジル
173,437人
1,410件
0.81%
123人に1件

 次にベトナム人刑法犯の内訳を見ていくと窃盗犯が84.6%を占めています。さらに窃盗犯の内訳をみていくと万引きがベトナム人刑法犯の72.0%を占めており、窃盗犯内の85.0%を占めています。なお外国人刑法犯の内、ベトナム人による万引きは19.5%の割合です。
 外国人刑法の内、万引きでの総検挙件数は3,211件で、これに対するベトナム人の万引き件数は57.3%、万引き件数2位の中国人は20.2%となっています。

第5表 窃盗犯の内訳
 
ベトナム
中 国
H26
H27
H27国別刑
法犯件数比
H26
H27
H27国別刑
法犯件数比
外国人刑法犯数
9,664
9,417
9,664
9,617
 国別刑法犯件数
1,972
2,556
100.0%
2,684
2,390
100.0%
  窃盗犯
1,745
2,164
84.6%
1,633
1,426
59.6%
   侵入窃盗
13
16
0.6%
412
367
15.3%
   車上ねらい
2
2
0.0%
9
11
4.6%
   万引き
1,434
1,841
72.0%
644
651
27.2%
   自動車窃盗
184
139
5.43%
0
0
0.0%

 報告書はベトナム人の刑法犯の特色を次のように報告しています。

 ベトナム人による刑法犯の検挙件数の約85%は窃盗で、窃盗の約85%は万引きである。犯行形態としては、数人のグループで、見張り役、実行役、商品搬出役等を分担して、大型ドラッグストア、大型スーパー等に車両で乗り付け、一度に大量の商品を万引きし、これを連続的に敢行するなど組織性、計画性が認められる。また、盗んだ商品は、盗品買取業者に持ち込んで現金化する事案がみられるほか、最近では自動車盗で、実行役、盗難自動車の保管役と役割分担し、日本人を含めたグループで建設重機等を窃取していた事例もみられる。
 また、ベトナム人による凶悪犯の検挙件数も増加傾向にあり、26年の検挙件数は20件と全体の約15%であったが、27年は34件で全体の約24%と増加しており、交通上のトラブルや金銭トラブルをめぐり、他の国籍の外国人や同国人に対する殺人事件等の事例もみられる。

 中国人の刑法犯に対しては次のように報告されています。

 偽装結婚、在留カード偽造・提供等の犯罪インフラ事犯の検挙は他の国に比べて多い。
 また、中国人による犯罪では、インターネットのメッセンジャーソフトである「QQチャット」や、「陌陌(MOMO)」と呼ばれるスマートフォンアプリ等の通信手段を使用している場合が多く、犯罪の秘匿性、広域性を強めている。

 以前、ベトナム人が万引きなどして捕まると警察がなかなか帰らしてくれないと言う話しを聞いたことがあります。今回「来日外国人犯罪の検挙状況(27年)」を見ているとこの理由が納得できました。カトリック教会でのミサを見ているとかなりベトナム人の人数が増えてきているようです。皆20代のようなので留学生か技能実習生でしょう。ベトナム人実習生の人数はフィリピン人の3倍強来日しています。当然技能実習生の問題はフィリピン人の3倍あるはずですが、教会関係での相談事例は一件もありません。教会に連れて来ているのが協同組合の指導員であるためか関係づくりが一切進まないこともあります。それ以前に在日フィリピン人は229,595人(内実習・留学19,094人)に対して在日ベトナム人は146,956人(内実習・留学人107,390人)であり、フィリピン人の80%強がカトリック教徒であるのに対して、ベトナム人は6%程度と言う点はカトリック教会関係者を中心に支援する私たちとベトナム人との接点が非常に少ないと言うことを意味しています。同時に問題が持ち込まれても通訳確保に苦労すると言う問題もあります。先日広島市内のユニオンがベトナム人技能実習生の問題を扱った例では、通訳は東広島市にある広島大学の留学生と聞いています。東広島市ではベトナムの技能実習生の女性が先輩に対して怪我をさせて帰国させられたと言うこともありました。ここで見た犯罪の状況からすると広島でも私たちの知らないところで沢山の問題が発生しているはずです。教会に来るベトナム人は留学生・技能実習生が中心であることからこの人達を起点とする支援体制づくりがどうにかしてできないかと思っています。