外国人技能実習生の実施機関に対する監督指導、送検状況から


 厚生労働省労働基準局から技能実習生を受け入れている事業所に対して行った平成25年度の監督指導の結果報告の発表が8月8日にありました。この内容の一部を抜粋(項目番号順番不同)して紹介します。
 監督指導を実施した事業所は2,318件でその内1,844件(79.6%)に何らかの労働基準関係法令の違反があり、その内悪質なもの12件が送検されています。
 JITCOの資料によると、平成24年8月17現在の実習実施機関20,227の事業所から見ると11.46%しか監督指導できていないことになります。指導監督の結果20%に割増賃金の不払があったことから考えると約3,600事業所(20,227×0.2-463)の技能実習生は割増賃金が支払われていないことになります。またこの状況を見ると第一次受入機関は監査義務を怠っているというよりは不法行為を容認・助長しているとしか言えないのではないかと考えたくなります。

1.主な違反内容
主な違反内容
違 反 事 業 所 数 (違反率)
24年度
25年度
 安全衛生関係  (労働安全衛生法関係)
1,362 (49.1%)
1,142 (49.3%)
  うち健康診断  (労働安全衛生法第66条)
357 (12.9%)
275 (11.9%)
 労働時間  (労働基準法第32条)
894 (32.2%)
692 (29.9%)
 割増賃金不払  (労働基準法第37条)
499 (18.0%)
463 (20.0%)
 労働条件の明示  (労働基準法第15条)
373 (13.4%)
331 (14.3%)
 賃金不払  (労働基準法第24条)
335 (12.1%)
272 (11.7%)
 寄宿舎関係  (労働基準法第96条)
165 ( 5.9%)
146 ( 6.3%)
 最低賃金  (労働基準法第4条)
131 ( 4.7%)
83 ( 3.6%)

2.申告状況
主 な 申 告 事 項
申告事項別の申告件数
24年度
25年度
 賃金不払  (労働基準法第24条、第37条等)
118
114
 解雇の予告等  (労働基準法第20条等)
31
15
 最低賃金  (最低賃金法第4条)
13
9

3.労働基準監督機関と出入国管理機関の相互通報情況
(1) 技能実習生の労働条件の確保を図るため、実習実施機関について、労働基準監督機関と出入国管理機関が相互に必要な
  情報を提供している。
(2) 平成25年に、労働基準監督機関から出入国管理機関へ通報(※1)した件数は330件、出入国管理機関から労働基準監督
  機関へ通報(※2)された件数は149件である。
  ※1労働基準監督機関から出入国管理機関へ通報する事案
    労働基準監督機関が行う臨検監督の結果、技能実習生に係る労働基準関係法令違反が認められた事案
  ※2出入国管理機関から労働基準監督機関へ通報する事案
    出入国管理機関が行う実態調査等により、技能実習生受入機関において労働基準関係法令違反の疑いが認められた事案
(3) 労働基準監督機関が、出入国管理機関から情報提供を受けた実習実施機関については、監督指導等を実施している。

4.事例
事例1:臨検監督により、割増賃金の不足額が支払われた事例
 臨検監督を実施した際、技能実習生が自身のノートに記録していた時間外労働時間数と事業主が賃金台帳に記録していた時間外労働時間数との間に齟齬が認められた。

 このため、労働時間の把握方法について調査した結果、1時間当たりの賃金額が最低賃金額を下回る700円で賃金が計算されていたこと、時間外労働の割増賃金を法定の計算通りに支払っていないことが明らかとなった。事業主に対し是正するよう勧告し、その結果、技能実習生7名に対して、割増賃金等の不足額合計約250万円が支払われた。


事例2:実習実施機関における法違反を是正させ、管理団体に対する指導も行った事例

 ある監理団体傘下の実習実施機関2事業場に対し臨検監督を実施したところ、2事業場
 とも時間外労働の割増賃金を、法定以下の1時間当たり400円しか支払っていないなどの労働基準関係法令違反が認められた。このため、この2事業場に対し、それぞれ是正するよう勧告した。その結果、2事業場について時間外労働の割増賃金の不足額が支払われた。
 また、上記実習実施機関2事業場に認められた法違反の原因が、調査の結果、監理団体の実習実施機関に対する誤った指導によるものであったことが明らかとなったことから、監理団体に対し、傘下の実習実施機関に労働基準関係法令の遵守を徹底するための措置を講じるよう文書指導を行った。
 その結果、監理団体は、傘下の実習実施機関14事業場における賃金の支払状況を確認するとともに、これら実習実施機関に対して労務管理に関する勉強会を開催し、労働基準関係法令の周知・指導を行った。


送検事例1:縫製業を営む個人事業主Aを、労働基準法違反及び最低賃金法違反の疑いで、また監理団体役員Xを共犯
       の疑いで送検した事例

 技能実習生からの申告に基づき臨検監督を行った結果、約定賃金額が最低賃金額を下回り、時間外労働の割増賃金の支払額も不足していたことが明らかとなったため、労働基準法第37条(割増賃金)違反、最低賃金法第4条(最低賃金の効力)違反について、個人事業主Aに対し是正するよう勧告した。
 しかし、是正期日を過ぎても是正されないことから、悪質と判断し、個人事業主Aを送検した。また、毎月の賃金額及び割増賃金額の決定に当たり、監理団体の関与が疑われたことから、同監理団体役員Xを共犯で送検した。
【違反事実】
 〔労働基準法第37条第1項、第119条第1号違反〕
 技能実習生に対し、法定を超えた労働時間に対する割増賃金について、法定を下回る420円しか支払わなかったもの。
 〔最低賃金法第4条第1項、第40条、第42条違反〕
 A及びXが共謀して、技能実習生に対し、最低賃金額以上の賃金を支払っていなかったもの。


送検事例2:食肉加工業を営むB社及びB社代表取締役Cを、労働基準法違反の疑いで送検した事例

 技能実習生5名に対し、時間外、深夜及び休日労働を行わせたにもかかわらず、法定で支払われるべき割増賃金額を支払っていなかった。さらに、臨検監督時に労働基準監督官に対して、偽造したタイムカードを提示し、虚偽の陳述(説明)を行ったことから、悪質と判断し、B社及びB社代表取締役Cを送検した。
【違反事実】
〔労働基準法第37条第1項、同条第4項、第119条第1号違反〕
 技能実習生に対し、法定を超えた労働時間及び休日労働、深夜労働に対する割増賃金について、支払わなかったもの。
〔労働基準法第101条第1項、第120条第4号違反〕
 労働基準監督官の調査に対して、偽造のタイムカードによる虚偽の陳述をしたもの。