22年度外国人労働者問題概要報告


 フィリピン人労働者の問題に関係し3年目が終わり、昨年にも増して非常に多くの相談が寄せられ忙しい一年でした。問題の内容に特別変化は無いものの、個人からの相談よりは団体での相談が増えてきました。相談に対応する地域は呉市が中心になり広島からでは迅速な対応も難しく「働く者の相談室呉」との連携を取りながら進めることが多くなってきました。持ち込まれる問題も賃金未払いや解雇といった問題に加え労災手続や医療関係の問題等へと広がりを見せてきています。生活保護や医療関係の問題を支援している団体「呉市生活と健康を守る会」があることを知り、その直後に支援を要請する問題が発生しました。
 この問題は、11月後半に相談があった倉橋町の日系フィリピン人の問題で色々な問題が含まれていました。スクラムユニオンひろしまの土屋委員長に本人から電話が入り「「弁護士を紹介してもらいたい」といっているようだが、言葉が分からないので対応してもらいたい。」と連絡があったのが発端でした。広島フィリピン人協会のメンバーに連絡を取ってもらうと、会社の同僚から暴行を受け、流産して入院中であることが分かりました。会社は健康保険に加入させておらず、しかも国民健康保険にも加入していなかったため医療費の問題(前号を参照ください)がありました。暴行・流産では、暴行については警察に被害届を提出し、流産については変死事件として暴行との因果関係を警察が調べるとのことでした。当然損害賠償・慰謝料請求の問題もあります。またこの事件を切っ掛けとして同じ職場の10数名の日系フィリピン人の相談も受けることになり、社会保険・労働保険未加入、残業代、家賃等様々な問題があることが分かりました。また平成21年1月に帰宅途中自転車で転倒し前腕を骨折するという通勤災害が発生していながらそうした扱いを受けていないことも判明しました。この事件では、暴行に関する医療費の問題については、「呉市生活と健康を守る会」と連携をとり、労働問題では従来どおり「働く者の相談室呉」と「スクラムユニオンひろしま」と団体交渉に入ることとなりました。暴行を受けた医療費の問題は解決しましたが、後の問題は、1月に入ってから申請手続きや交渉に入る予定です。この問題でもそうでしたが、通訳をどのように確保するかが大きな問題としてあり、倉橋のような遠隔地の問題となると足の確保といった問題もあり今後の大きな課題となっています。
 この問題を含めて、22年度の活動として記録に残っているものは27件ありました。これまで経験したことも無い問題もあり人の不幸を楽しんではいけないのでしょうが、本の中の世界を経験することが出来る面白い一年だったといえます。主な活動を紹介します。
 例年通りカトリック幟町教会で6月に労働問題セミナーを開催しました。前回までとは違い、日本人向けの第1部とミサを挟んで研修生向けの第2部の構成で実施しました。第1部は、「昨年フィリピン人労働者に発生した労働問題から」(小松)、「個人加入できるユニオンと労働問題について」(スクラムユニオンひろしま土屋委員長)、「呉地区で発生した労働問題について」(働く者の相談室呉米今代表)の三つの講演を、第2部では「外国人と税金」(万徳税理士)、「働く人の権利をご存知ですか」(小松)と相談を行いました。
 土屋委員長からは、このセミナー開催の少し前に新聞報道されていた中国人実習生への残業代未払訴訟を扱っておられることからタイムリーな話を伺うことが出来ました。研修生の法廷での陳実内容はエクレシア第90号参照) またこれまで相談に対応する中で年末調整がなされていない、扶養控除がなされていないため不必要な所得税を支払っている事例、市民税の問題また帰国時の確定申告の問題等に遭遇することから万徳税理士にその辺りのことを話していただきました。このセミナーは朝日新聞が取り上げ、それを見たニューヨークタイムズから取材の申込がありました。7月に裁判中の中国人実習生と黒瀬町の鉄工所で働く5名のフィリピン人実習生を取材して帰りました。研修生・実習生問題が外国で大きな関心を持たれているためか、写真入で大きなスペースが割かれ、インターネットでも配信されまだアップされています。
(小松社会保険労務士事務所HPhttp://srk.web.infoseek.co.jp/に朝日新聞記事を掲載し、「Newyorktimes記事」にもリンクしています。)。
 いろいろ対応した中で過去に経験したこともない嫌な問題も発生しました。それは研修生時代から残業代が一切支払われていない実習生の問題で、会社に交渉を申し入れると受入機関のIIS協同組合は本人達のアパートに行き、脅して申し出を取り下げさせたことでした。全く想定もしていないことでした。こうした問題が発生し、入国管理局に情報が入れば、受け入れ停止に進み事業運営が成り立たなく可能性があるため、受入機関は真摯に対応してくれるのが常でした。IIS協同組合のような行動を防ごうとすると、身柄を確保した上で交渉に入るか、入国管理局を通じて相手に交渉を命じてもらう方法を選択するかということになります。何故このような自分で自分の首を絞めるような行為に出たのでしょうか。今の会社を潰して、直ぐに次の会社を興せばいいとの感覚なのでしょうか。
 逆に面白いと思った例もありました。解雇した会社と交渉中、交渉を逃げるのが嫌になったのか、弁護士に相談したら労働審判に申し出をするよう指導された会社から労働審判に引っ張り出された事件です。こちらから訴えるのなら分かるのですが、これも想定外のことで、思いがけずに実地に勉強させてもらうことが出来ました。「百聞は一見にしかず」で、これまで関心がなかったのですが、この制度の利用価値がよく分かりました。結論は、当然こちら側に有利な決着となりました。
 労災関係の情報はいろいろ入ってきながらも対応した事例はありませんでしたが、初めて腰を痛めて強制帰国となった実習生の問題に対応することが出来ました。彼の場合6月のセミナーに来て相談を受けていたため対応できた事例です。先に紹介した黒瀬の実習生もセミナー当日相談にきた例でした。こうした沢山の人が集まり、相談し易い環境を設けることが必要なので、ミサの後、無料のコーヒーを提供し、雑談出来る場を造ろうと思いながら、呉の教会での対応が増えて、幟町教会で相談を受ける機会さえ無い状況となり頓挫しているのでどこかに水を向けて実現しなければと考えています。
 今年初めて中国人からの相談があり、それも3件ありました。1件は協同組合で研修生たちを管理している人からで、解雇の問題からのどのように考えて交渉していけばいいのかということで、連絡を取りながら本人が交渉して解決したものでした。二件目は帰国が迫っていた実習生から、研修生の時の帰宅時の事故で手首を骨折したことに対する補償の問題でした。労災にも通勤災害にも該当しないものでしたが、医師の骨折の見逃し、またその後の対応に協同組合等が必ずしも責任を果たしていないというものでした。スクラムユニオンひろしまと団体交渉に入り解決をみました。この会社は労働条件面で何ら問題はなく、賞与支給日前に帰国する実習生たちにも賞与を支給するというしっかりした会社でした。フィリピン人の場合、母国に保証金を取られているといった問題が無いため解決することだけ考えればよいのですが、中国人の場合ユニオンに加入したり途中帰国すると保証金が返還されない問題もあるようです。三件目は、12月30日に中国人留学生から解雇の相談が入り、31日に、正式に解雇通告があり、年明けに、スクラムユニオンに加入して対応することになりました。
 さまざまな問題が発生しいていますが、全ての会社が悪いわけではなく、些細な点で問題があっても真摯に対応している会社や協同組合がほとんどです。ただ問題化しなければ改善されないのも現実ですが・・。
 完全失業率が高止まりした状況になっても日本人が働かないような職場は沢山あり、そうした職場で研修生や日系人が最低賃金かそれに近い賃金で残業代もろくに支払われず、年休も与えられず、事故に遭うと解雇され、国に追い返される現実の中で日本の経済は支えられています。この1年対応してきたのは氷山の一角にしかすぎません。しかし同じことが日本人に対しても極当たり前に行われており、大半が泣き寝入りしている現実もあるはずです。日本人からの相談は知り合いから1件あったのみでした。


記録に残している外国人労働問題の内訳は次のとおりです。
総件数
交渉したもの
保護(再掲)
相談のみ
情報のみ
セミナー・
取材
その他
27
12
3件は1月中に
交渉予定
全員
帰国
内1件は何れ
交渉に?
労災2
帰国1
 
ビザ・離婚