最近の相談事例から 〜 年金・健康保険等


 まだサラリーマンで健康保険の仕事を担当していたころ医療の内容が妥当かどうか点検する業務でレセプト(診療報酬明細書)をみていると突然1カ月200万円ぐらいのレセプトが2〜3か月続いたり、小さい子供が数か月にわたり療養しある月突然転帰欄に「死亡」と記載されたりしているのをみて様々な思いに駆られていました。今年は自分がその当事者となり、初診から一応治癒と判断されるまでに8か月間が必要でした。6か月ごとに届く医療費のお知らせを見ると最初の3か月間で800万円かかっていました。しかし自分で支払う部分は1カ月44,400が上限でこれに食事代の費用が加算されて7万円程度の負担で済んでいました。当然これに対しても高額療養費の対象となると区役所から連絡があり手続をしてきました。高額療養費は自己負担限度額の証明書を事前に提出しておけば直接窓口で支払う負担額はわずかな額で済みます。当然、医療費控除の確定申告も可能となります。この辺りのことはなかなか分かりにくいところですし外国人にとってはなおさら不安に駆られるところといえます。以前知り合いのフィリピン人が母国に帰って脳梗塞の手術をしたと聴いた時には高いお金を支払う必要がなかったのにと思いました。
 医療がらみの問題として先天性心疾患と帝王切開での出産がありました。いずれも大きな費用が掛かり不安に駆られることもあると言えます。しかし健康保険や年金制度等によって様々な救済措置が取られていますので簡単にまとめてみます。

1.先天性疾患に関すること
 相談があったのは病気の話しではなく親戚が日本に来るためのビザの話しでしたが話しているうちに生まれつき心臓に穴が開いていると春先に病院で言われ、1年後に検査に来るように言われていると言う話が出てきました。その時よりは症状が進んだのか仕事がきつく週の数日は半日勤務に変更したとのことでした。ネットで調べると先天性心房中隔欠損症のようで「ほとんどの人は思春期ごろまで自覚症状はありませんが、30歳になるころまでに肺血管の血圧が高くなり、呼吸困難などの心不全症状、不整脈などの症状が出ます。合併症として心房細動、心不全、肺高血圧などがあります。肺高血圧が重症化すると手術ができなくなります。治療を行わない場合、40〜50歳に到達できる割合は50%程度といわれています。」とありました。
 手術をすれば問題なくなりますが、本人にとってはそこに行くまでには家庭の問題、金銭的な問題等考えなければならないことが多々あります。そうした状況から真っ先に考えたのが障害年金でした。症状が障害認定基準を満たしている必要があるため医師の話しを聞く必要があります。該当すれば障害年金をもらって治療を行い、その間は生活保護の適用も考える。そうすると生活の目途も立つし、医療費は無料になります。しかしそれ以前の問題として手遅れにならないよう来年の健診時期を待たずにすぐ病院に行くことと、障害年金について年金事務所に話しを聞きに行くようにと話しました。お医者さんから手術の話しは無かったとのことでしたがいささか疑問に思っています。それは母子家庭であり、入院が難しい状況があるためです。もし手術となれば都市部の大病院に限られ、その間、子供達をどうするかの問題があります。県北の人なので電話で話を数回しただけなので一度会って話をしなければと思っています
 先天性疾患と障害年金について触れると、初診日が20歳前にある傷病については、20歳以降障害年金の支給基準に該当すれば保険料を支払っているいないに拘わらず障害年金の受給が可能となります。日本に住んでいる外国人であっても同様です。

2.出産に関すること
(1)出産で休業するとき
@出産手当金
 労働基準法では、出産前42日(多胎妊娠は98日)、出産後56日(医師の許可があれば42日経過後就労可能)は就業が禁止されていますが、産前については本人が希望しなければ休む必要はありません。しかし産後については42日間は絶対に働くことができない日であり、医師の許可があり本人にその意思があれば42日経過後は就業可能となります。当然この期間についての賃金を会社は支払う義務はありません。そのため健康保険では休業した期間について出産手当金として賃金の3分の2程度が支給されますが、国民健康保険に加入している人に対してはこの制度はありません。
A育児休業
 前項の育児休暇の期間を経過して子供を育てるために会社を休む場合は子供が2歳になるまで休業することが認められています。その期間については最初の180日までは賃金日額の67%が、それ以降は賃金日額の50%が雇用保険から支給されます。なお、この期間中の厚生年金保険料と健康保険料は免除されます。
(2)出産費用
 出産は病気ではないため健康保険では給付されず全額自己負担となります。そのため多額な費用を補うため健康保険では出産育児一時金として産科医療補償制度に加入している病院での出産は420,000円、未加入の病院では404,000円給付されます。これには妊娠後85日以上経過していることが条件となり、これを経過していれば死産でも給付されます。なお、出産費用を本人が病院に支払う代わりに保険者から病院に直接出産育児一時金を支払う制度もあります。
(3)帝王切開の時
 出産が帝王切開による場合には出産費用は健康保険から給付され、前項の出産育児一時金も併せて支給されることになります。しかし帝王切開になると入院期間も長くなり医療費も大きな額になるはずです。そうすると自己負担額が一定以上かかれば高額療養費が支給されることになります。事前に保険者から「限度額適用認定証」をもらって病院に提出しておけば窓口での支払いが軽減されます。提出していない場合には後日高額療養費として請求することもできます。
 出産を前にしてこうした知識が無いため会社を辞めたと言う話は時々耳にします。事前に相談があればと思いますが、個人的な知り合いか、私の知り合いに話しをして相談の連絡がある場合もありますが、それはたまたま運が良かっただけの話です。先天性疾患の人については、各教会に送付した英文の無料法律相談会のチラシかJ-CaRMが配布したチラシを見て連絡して来たようでした。同様の問題が沢山発生していると思いますが、相談するところが無いことから不利益を被るのも、命を失ってしまうのも悲しい話かもしれませんが、お互い「死ぬまで元気」で頑張りましょう。