平成27年の「不正行為」について
平成28年2月 入国管理局

http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00107.html


 毎年この時期になると入国管理局から前年に不正行為と認定した実態報告がされます。広報資料の冒頭に、「入国管理局においては,研修・技能実習に関して不適正な行為を行った機関に対し,「不正行為」を行ったと認められる旨を通知し,当該「不正行為」が研修・技能実習の適正な実施を妨げるものであった機関について,「不正行為」が終了した日から法務省令で規定する期間を経過するまで,研修生・技能実習生の受入れを認めないこととしている。」と書かれています。ここで報告されている受入機関に対してこうした措置が取られているものと考えられます。
 入管法の改正により1年目から労働者とされ、罰則が強化された当初は不正行為も減少したようですが、以後漸増状況にあり不正行為の悪質化傾向もあるように感じられます。以下の表は、随時過去のデータの追加等改変を行っています。
【受け入れ形態別不正行為件数】
  平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 平成27年
監理団体
34
17
14
20
23
32
実習実施機関
324
143
168
188
210
218
238
 不正行為とされた件数を協同組合と受入事業所別の推移を表しています。

【第二次受入機関の業種別「不正行為」件数】
  平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度 平成27年度
 繊維・衣服関係
123
71
75
76
94
 農業・漁業関係
75
79
88
67
 建設関係
16
16
20
 食品製造関係
12
21
15
11
19
 機械・金属関係
11
12
10
 その他
18
15
28
168
188
210
218
238
 不正行為と認定された実習実施機関を業種別に分類したもので、「繊維・衣服関係」と「農業・漁業関係」が突出した状況にあります。前号で紹介した福岡県の農業で働く技能実習生の例でも見たように家族で経営している農家で技能実習をするとなっても雇用主は労働法の知識など全くなく、労働時間や休日について記録を取って管理する意識すらなく・・と言うよりも最低限の知識は有りながらも、労働時間や最低賃金をごまかすために記録を取っていないのは明らかでした。
 日弁連は、「技能実習生(以下あわせて「本件技能実習生」という。)について調査したところ,本件技能実習生は,長時間かつ休日の少ない厳しい労働環境と,狭く不衛生な寄宿舎が多いなどの厳しい生活環境などの過酷な条件下にあった。」として川上村農林業振興事業協同組合、法務大臣と厚生労働大臣に対して次の2項について勧告書 (平成26年11月28日付)を提出しています。

(1) 直ちに,川上村農林業振興事業協同組合の人権侵害行為について被害実態の調査を行い,労働基準法等労働諸法令に基づ
 く行政指導等を行って,再発防止策を講ずること。
(2) 本件のような人権侵害行為を引き起こす構造的問題点を有する技能実習制度を,直ちに廃止すること。


 福岡の状況は川上村ほどひどいものではないとしても、住宅状況は火災が発生すれば1軒屋の18人また40名の大半が死亡しかねない状況にあるといえます。労基法第10章の寄宿舎の規定に違反しています。法律違反、人権問題以前の話しではないでしょうか。外国人にアパートや住宅を貸してくれないから多人数を詰め込まざるを得ないと協同組合は話していましたが、1軒屋の18名に対して25千円の家賃(光熱費込み)で45万円の徴収となれば「勝手な理屈を捏ねるな」と言わざるを得ません。

【実習実施機関における類型別「不正行為件数」】(主なもの)
 
平成25年度
(323件)
平成26年度
(304件)
平成27年度
(313件)
 賃金不払い
 99(30.7%)
142(46.7%)
130(41.5%)
 労働関係法令違反
 25(7.7%)
 23(7.6%)
 33(10.5%)
 悪質な人権侵害行為等
  2(0.6%)
  4(1.3%)
 20(6.4%)
 講習期間中の業務への従事
 69(21.4%)
 67(22.0%)
  7(2.2%)
 研修・技能実習計画との齟齬
 73(22.6%)
 23(7.6%)
 33(10.5%)
 偽造文書の行使・提供
      下段は第1次受入機関分
  5(1.6%)
 13   
 11(3.6%)
 18   
 36(11.5%)
 26   
 名義貸し
 16(5.0%)
 19(6.3%)
 32(10.2%)
 不法就労者の雇用
  8(2.5%)
  9(3.0%)
 23(7.4%)

 これを見て、「悪質な人権侵害行為等」、「偽造文書の行使・提供」が著しく増加しています。「悪質な人権侵害行為等」には暴行・脅迫・監禁、旅券・在留カートの取り上げ、人権を著しく侵害する行為、と言ったものが対象になっています。「偽造文書の行使・提供」については第1次受入機関のものも挿入してみました。いずれも大きく増加していますし、「名義貸し」の増加との関係と併せて見ると「賃金不払い」以上に技能実習生制度の根幹を揺るがす問題が著しく増加しているといえます。あるカキ養殖業の不当労働行為を巡って労働委員会の証人尋問で協同組合は虚偽の労働契約書にサインをさせ、偽造したものを入管に提出したと証言しました。こうした不正行為は「賃金不払い」を正当化する手段として急成長していると言えるのかもしれません。

 何時までも「もぐら叩き」をしていても仕方がない状況に至っているといえます。

【事例】
1. 金属製品製造業を営む実習実施機関は,監理団体の事務局長が個人事業として営む労働者派遣会社から不法就労者の派遣を受け作業を行わせ,当該事務局長が当該実習実施機関に対し監査を行っていたもので,監理団体は,当該実習実施機関における不正行為(「不法就労者の雇用等」)を把握していながら,不法就労者の雇用はないかのように記載した虚偽の監査結果報告書を地方入国管理局に提出した。

2. 溶接事業を営む実習実施機関は,技能実習生に対し36協定に規定する限度時間を超えて時間外労働を行わせた労働基準法第32条違反,労働基準監督官に対し虚偽の陳述及び虚偽の記載をした賃金台帳を提出した同法第101条違反により是正勧告を受け,また,同法第101条違反に関し,当該実習実施機関及び労務管理責任者が,それぞれ罰金10万円に処せられた。

3.プラスチック製品製造業を営む実習実施機関の技能実習指導員は,朝礼時に,技能実習生が製造した製品に不良品が多い等として殴打等し加療1月の傷害を負わせ,当該技能実習指導員は罰金50万円に処せられた。

4. 監理団体は,技能実習生に対し,在留資格変更許可申請を行うのに必要であると虚偽の説明をし,当該技能実習生から旅券及び在留カードを預かり,実習実施機関と連携し「社員憲章」に違反したとして,当該技能実習生を出国させようと空港に到着するまで旅券等を返還しなかった。

5. プラスチック製品製造業等を営む実習実施機関は,パソコンの所持を禁止したり,門限を20時とする等の「寮規則」を設け,それに違反した技能実習生には「罰金」として5万円を徴収することとし,実際に技能実習生7名から「罰金」として延べ60万円を徴収した。