ケラメイコス 〜 陶工の町 87

徳利−4



 突然冷え込んでくるとおでんや鍋物が恋しくなってきます。お酒を呑むにはおでんの方がいいのでつくろうと思いながらも、古いワインが溜まっているので処理しようと思い立ちました。特別痛んではいないものの新しいうちに呑んだ方が良かったようです。ビッグネームしか長期間保存できないのがよく分かったといえます。半分程度飲み残りは翌日鳥の肝を煮てみたら臭みもなくなり正解でした。もう少し残っていたので今日は牛肉の薄切りを煮込んだらこれも良いのでこれを肴に明日はワインをと考えています。ワインの話は別として手ごろな古唐津の徳利が手に入ったのでこれを選ぼうかと思いながらも、前回徳利を色々な角度から眺めたので今回も同様にしてみました。選んだのは隠崎隆一先生のものです。
隠崎隆一 徳利  隠崎先生の作品は何点かありますが、実用に適していないのが難点です。デビューしたてのころデパートの画廊でぐい呑みを進められましたが造型としては面白くても実用性はまったく無いためそれ以来無視してきていました。数年前改めて紹介されたことから関心の持てるものを集めてきました。中には実用に適した茶碗もあるのでぐい呑みでもと考えますがなかなかありません。この徳利にしても大振りであり、肉厚で重いこともあって実用に適しているとはいえなくても造型的には非常に面白いと思っています。この先生の特徴は切ったり張ったり歪めたりと手を尽くしていいます。普通であればいやらしさを感じるはずなのにそうしたところを感じさせないのがこの先生の力のあるところかもしれません。どの作品を見ても一定のレベル以上のもので、備前の作家に見られるどうしようもないものが無いことには感心させられます。この徳利にしてもこうしたものが取れる窯の場所は限定されており、ひと窯でいくつも取れるはずはありません。前面には激しく炎が当たり全面に灰がたっぷりと掛かっています。胴の膨らみを挟んで肩の張りと足元の出っ張りとの対照も良く安定した形を創り出しています。裏の面は他の作品の影に隠れた部分は白い地肌に緋襷が現れ、首から右側面にかけての灰色の窯変と相俟っていい感じで出ており、表面とは好対照で全く別の作品といってもいいのではないでしょうか。側面は、表裏の様子とことなりふつうの徳利の形が出ています。平べったい変壷の形の徳利ですからいろいろな面から楽しめるのがこの徳利の楽しいところといえます。反対の側面はこれと全く変化して、表面の状態と左上から下方へ向けての二筋の灰色の流れがいい感じで出ています。これと合わせるぐい呑は先生のものではマグマが噴出してきた様そのものの上記のものでしょうか。

  
隠崎隆一 徳利 隠崎隆一 徳利 隠崎隆一 徳利
金重まこと 備前徳利(表)
金重まこと 備前徳利(裏)
金重まこと 備前徳利(側面)