ケラメイコス 〜 陶工の町 86

徳利−3

 例年に無く、熱くて長い夏が終わると、秋の清々しさを感じることもなく一転寒さが身にしみ、暖かい鍋物や熱燗のお酒が欲しくなる季節へと一転しました。一番困るのは何を着て出るのがいいのか迷ってしまうことかもしれません。その季節季節またそのときの気持ちの持ち方で選ぶことになり服装に気を使う人にとっては楽しみな季節かもしれません。また、やきもの好きにとっても冷酒から燗酒に移っていけば当然お酒を入れる器に何を選ぶかが楽しみとなります。磁器のものか陶器のものか、白磁、象嵌の施された三島や高麗青磁など朝鮮のものなど楽しそうなものが沢山あります。また国内に目を向ければ、朝鮮系の唐津、高取、萩や独特な作風を持った織部も楽しいですし、釉薬を掛けない備前や伊賀・信楽などの焼締と呼ばれるもの手触りも楽しめ使ってみたくなるものといえます。
 無釉焼締陶の面白さは計算して造ることができない意外性にあるのではないでしょうか。水分を纏うと一転して雰囲気が替わってしまいますし、長年使っているうちの変化を楽しむこともできます。一番楽しいのは釉薬の掛かったものには無いザラついたり、ねっとりとした土の感触を感じることが出来ることではないでしょうか。下に掲載したものは一本の徳利を三方向から撮影したものです。造り手は金重まこと先生です。人間国宝になった金重陶陽の弟金重素山の長男です。備前の作家の中で最も好きな作家で、金重まこと先生の緋だすきのぐい呑は手を離れなくなっています。この徳利も独特の形をしており、一見して先生の作と分かります。首を長く造り、口も微妙に波打っており、首から肩そして胴に向かっての形がボーッとした感じでなんとも言えません。
 左のものが窯の焚き口に向かった表の面で黄色の灰が薄くかかり腰まわりには緋色がでており、全体にしっとりとした趣があります。
 真ん中は炎の当らない裏の面で表側とは違い桟切と呼ばれる灰色の景色が出ています。肩には炎の強さから黄色のゴマとコゲが回り込んでいます。
 右端は表と裏の境目になる側面の状態です。普通側面にははっき前と裏の境目が出て面白みが無いのですが、この徳利は緩衝地帯として渋い緋色が帯のように出ており右側の黄色いゴマの状態も楽しめ、また裏側の下半分に現れた桟切の状態も楽しむことが出来ここを正面としても楽しめる徳利です。
 備前の徳利は大振りで2合はたっぷり入ってしまうので一人で使うのには抵抗があり仕舞ったままでしたがせっかく探し出したこともあるし、根来の隅切盆もあるのでこの四角い宇宙の中に金重まこと先生の徳利とぐい呑みそして李朝白磁のお皿を加えれば楽しいひと時が過せそうです。この取り合わせには合うお酒はと考えると重量感あふれる菊姫の山廃純米がよさそうな気がします。

  
金重まこと 徳利 金重まこと 徳利 金重まこと 徳利
金重まこと 備前徳利(表)
金重まこと 備前徳利(裏)
金重まこと 備前徳利(側面)