ケラメイコス 〜 陶工の町 83

青磁の湯のみ



 人の心は常に移り変わっていくのになかなかそのようには思わないところが人間にはあるのではないでしょうか。そうは言っても長年関心を持って注意してきているという面もあります。しかしそうだからといって執着心が持続しているとはいえません。私の関心のある陶芸家は西岡小十先生、原憲司先生そして川瀬忍先生です。数十年関心を寄せてきた陶芸家で、過去には集中して収集してきました。収集する上では参考として持っておきたいものもありながら気に入った形がどうしても中心になってしまいます。長年関心を持っていると値段も上がってきてしまい手が出なくなっていってしまう面も多分にありながらも、高嶺の花だった陶芸家のものが、オークションが普及するにつれ意外と手ごろな価格で手に入るようにもなってきています。正常な価格に近づいてきたといえるのかもしれません。
 時の流れによって今まで見向きもしなかった藤原啓先生にも関心が出てきましたし、金重?先生にも惹かれるようになってきました。また李朝、東南アジアや初期伊万里、特に唐津から伊万里の移行期のものに関心か向いてきていますが、特別手を出したいものはなかなか出てきません。関心はそれなりにあるのですが、もう一つ血が騒がないので必死になって欲しいと思うことはなくなってしまいました。いいものはいいのですが・・。
 青磁を造る陶芸家としては岡部(加藤)嶺男先生を除けば三浦先生と川瀬先生に限られてしまうといえます。三浦先生と川瀬先生はともに南宋官窯を念頭において青磁を始められたのでしょうが、共通点は青磁というだけで、全く違う雰囲気のものを造られています。三浦先生の作品には鮮やかな深みのある青磁の肌に粗い貫入が入ったものは何ともいえず美しいと感じてしまいます。また貫入の無い青磁に白地の窓を開けそこに絵を描いたものなど面白いものもあります。一方川瀬先生の青磁は青、緑そして薄いオリーブ色から白っぽいものまで、また貫入のあるもの無いものと様々なバリエーションがあり、しかも薄く、繊細で、シャープな造形美にはため息をついてしまわざるを得ません。ただ私にとって青磁の作品はなかなか使う気にならならず観賞用でしかありません。
 左のものは以前にも「人間国宝」のとき紹介しましたものです。堂々とした大振りのもので非常にきれいな発色をした典型的な三浦先生の青磁の作品です。これをみていると何かしら塞いだ気持ちも晴れ晴れとした気持ちになります。最上の青磁の色は「雨過天青」という言葉で説明されますが、将にその言葉通りではないでしょうか。
 後の二つは川瀬先生の湯のみで造られた時期は20年ほど隔たっておりその違いもよく分かります。真ん中のものが30代始めのころのもので箱自体樅木の二方桟のもので作品にも若さが見られながらもシャープな形と貫入のある青磁の発色も良く当時としてはびっくりしたものでした。この時代はまだ南宋官窯の写しも多く造られており楽しい作品が多い時代でした。
 左のものは6年ほど前、50台半ばの作品で、貫入の無い青磁で円熟した雰囲気を持っています。青磁の色合いも深いものに進化しており、口と畳み付きを黒く発色させる紫口鉄足の約束も守られており、なまめかしさを感じさせられます。

  
三浦小平二 青磁湯のみ 川瀬忍 青磁湯のみ 川瀬忍 青磁湯のみ
三浦小平二 青磁湯のみ
川瀬忍 青磁湯のみ
川瀬忍 青磁湯のみ