ケラメイコス 〜 陶工の町 69

酒を呑む器−44  ぐい呑

 

 ここのところ寒さが戻ってきましたが、外を見回すと清々しい若葉が目に飛び込んできます。このような時期になると、ボテッとした器よりは、手が切れるというか、清涼感を感じさせる器が一番ふさわしいかもしれません。
 季節感といっても、季節を感じる生活自体が希薄になってきているので、改めてこのように言ってしまうと抵抗も感じてしまいますし、熱燗のイメージしかなかった日本酒も技術の進歩により一年を通じて楽しめる種類のものが造られるようになりました。その結果、熱燗、冷たい吟醸酒また端麗な味わいか、重厚な味わいか、さらには炭酸を含ませたお酒などをよりおいしく味わうための器選びもしなければなりません。また、どのような状況で呑むのかによっても使用する器は当然違ってくるといえます。やきものには、磁器もあれば、陶器もあり、無地のものもあれば絵付けがされたものもあり、掛けられている釉薬にも様々なものがあります。また、備前焼や信楽焼のように釉薬を掛けず焼き締められるものもありますので自分流の選び方をすればいいと思います。私の好みでここに三通りのぐい呑を取り上げてみました。
 左は常滑のものですが、自然釉が美しい緑色に発色し、地の黒く焼きしまった肌とよくマッチしています。手にすっぽりと納まるサイズで、わずかに端反りで呑み易く造られています。このように自然釉が鮮やかな緑色を出しているものは若葉の季節や真夏であっても涼やかな気持ちで楽しめるのではないでしょうか。先生の作品はデパートで焼酎用に筒型の湯のみを買ったのが最初ですが、以後見る機会も無いまま最近このぐい呑みに出会いました。
 真ん中のものは、瀬戸で中国陶磁を追求している林邦佳先生の染付の大振りの染付の杯です。2004年に日本陶磁協会賞を受賞されたことから知った作家でした。磁器ものに関心が薄いのですが、先生は中国の写しを中心として精進されてきておられるようですが、独創的な楽しい作品も見られます。中国磁器の名品は展覧会も多く、沢山見る機会はありますが、実際にはどのような器が使われていたかとなるとなかなか全貌はつかめません。古染付、呉須赤絵など馴染み深いのですが、それ以外のものはインターネット・オークションの普及でいろいろ目にする機会がありますが、出品者が言っていることが正しいのか判断する材料が無いのが現状です。古伊万里にしてもバリエーションが豊富過ぎてしまいます。林先生のものは写しとは言っても官窯のものが中心のようです。ここに取り上げたものも染付磁器の絶頂期の官窯を思わせます。形のシャープさはいうに及ばす、呉須の発色の良さは素晴らしく、中国の天然呉須を使用されているとのことです。古伊万里や中国の民窯の大量に作られた器を見慣れた者には目が覚めるような色合いに関心せざるを得ません。どのようなお酒を呑もうかと考えると、やはり大吟醸をあらたまった席で呑むときにということになり、普段使いというよりは鑑賞して楽しむのがいいのかもしれません。
 右端も瀬戸で活躍される作家で青白磁を中心に製作されています。青白磁は白磁釉に微量の鉄分を含ませることで青い色を出します。その美しさは彫り模様をいれたところに釉薬が溜まり、青い色合いを見せるところにあります。この杯は成形したものをへらでラフな四角に削りだしています。造形的な面白さもあり、それに仄の青い色合いの組み合わせが楽しいものです。暑い夏に吟醸酒だけでなく、ウイスキーでも、焼酎でも楽しめるぐい呑です。

 ホ−ムぺ−ジには他の作品も展示していますのでご覧ください。


常滑灰釉杯 染付杯 青白磁杯
竹内公明
常滑灰釉杯
林邦佳
染付杯
加藤萎
青白磁杯