ケラメイコス 〜 陶工の町 68

酒を呑む器−43  東南アジアのぐい呑

 東南アジアのやきものと言われてすぐどのようなものか頭に思い浮かべることが出来る人はあまりいないと思います。しかし東南アジア方面のやきものをさす言葉、呂宋(るそん)の壺や宋胡禄(すんころく)またお茶をされている方は安南手の茶碗などの言葉は聴いたことがあると思います。呂宋の壺は中国南部からフィリピン方面への輸出用品のようですが、同じように中国や日本から東南アジア向けにデザインされたやきものが沢山あり、また中国の影響を受けていることもあって区別が難しいところがあります。こうした輸出用のものではなく東南アジア独自のやきもの、とはいっても中国と地続きですから、影響は受けながらも、図柄や形で独特の発展をしています。現物を見る機会がほとんど無かったため関心も無かったのですが、インターネット・オークションに出品されているのを見ながら勉強させてもらっています。参考となる本も少ないのですが、最近は研究書も出てくるようになってきました。
 やきもの好きからすると、中国や日本のものと比べて関心も低く、まだ安く手に入るのですが、発掘品が中心となり、完品はまず出てきません。発掘品といっても沈没船からの発掘品が多く、かなり大量に引き上げられています。口辺に小さな欠けが見られ、海揚り独特のスレによって器全体に光沢がなくなっているものが多いのですが、光沢を失っていないものは数百年の月日を感じさせない状態を保っています。窯跡からの出土品は陶片や小さな奉納祈願用の人形に関心を惹かれています。いずれにしても現地に定期的に買出しに行かれている業者の方が出品されているようなので出るときは欲しいものがまとまって出てきますし、また次の機会を待とうと見送ってしまうと後悔してしまいます。現存の作家の場合も同じで、出会ったときに手に入れないと次はないのが現実です。そうこうしながらも同じようなぐい呑みが幾つか集まってきました。タイやベトナムあたりのものですが、中国や日本のものと違って冷たさや固さがなく柔らかさ、温かさを感じさせてくれます。
安南染付杯  左から二つがベトナム(安南)のホイアン沖の沈没船から引き上げられた17世紀ごろの染付と瑠璃釉の杯です。ホイアンは16世紀末から栄えた港町で、日本人街、中国人街があり、またオランダ東インド会社の商館も置かれ、現在ではその名残の古い町並みが世界遺産に登録されています。掲載したコインはオランダ東インド会社が製作したものです。染付は鍔縁風に少し開いており、感じの良い絵付けがされています。染付けの顔料で器全面を覆ったものを瑠璃と呼んでいるようですが意外と見る機会がありません。この瑠璃杯は口辺に細かなホツレがいくつもあるのが残念です。二つの杯に共通しているのは可愛いらしく柔らかな雰囲気を持っていることと高台の内側に茶色く鉄釉が塗られていることです。どのような意味合いがあるのか分かりませんが、ほとんどの安南染付に塗られています。
 右端のものは、宋胡禄とわが国では呼ばれていますが、最近はシサッチャナライと呼ばれている青磁杯ですが、海揚り特有のカセがあり、光沢が失われています。こちらは陶器で赤っぽい褐色の土が使われ雑な削りの高台が面白さを感じさせます。シサッチャナライはスコタイ県の北部を占める郡の名前です。スコタイというと鉄絵の魚を描いた皿や独特の模様の絵付けをした窯場でいい絵付けの陶片でも一個飾れればと思います。

 ホ−ムぺ−ジには他の作品も展示していますのでご覧ください。


安南染付杯 安南瑠璃杯 宋胡禄杯
安南染付杯
安南瑠璃杯
宋胡禄青磁杯