ケラメイコス 〜 陶工の町 58

人間国宝−1

 演劇や音楽そして工芸技術の分野ですばらしい技術の域に達した人が人間国宝に指定されているのをご存知と思います。人間国宝という呼び方は俗称で正確には「重要無形文化財」と呼びます。この無形文化財について、文化財保護法(昭和25年制定)は、「演劇、音楽、工芸技術その他の無形の文化的所在で我が国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの」(第2条第2項)と定義し、「文部科学大臣は、無形文化財のうち重要なものを重要無形文化財に指定することができる。」(第71条)との規定に基づいて、特に優秀な技術を獲得している人を重要無形文化財いわゆる人間国宝に指定しています。茶碗などのように形のある有形文化財の中でも特に国際的に価値が高いものは、「国宝」に指定されています。これに習って人間国宝と俗称されることになったのでしょう。
 陶芸の分野ではこれまで33人が指定されてきました。個人以外にも、「柿右衛門製陶技術保存会」、「色鍋島技術保存会」、「小鹿田焼技術保存会」の三つが技術保持団体として指定されています。ちなみに人間国宝に指定されると年額200万円の特別助成金が支給され、団体には技術保存のための経費の一部が助成されるそうです。
 今回は色絵の技術で認定された藤本能道先生と鉄絵の技術で認定された田村耕一先生を紹介しました。二人とも東京藝術大学教授として指導に当たられた経歴をもたれています。教授経験者としては東京藝術大学の三浦小平二先生(青磁)、京都市立美術大学の富本憲吉先生(色絵)と近藤悠三先生(染付)がいらっしゃいます。いずれも錚々たる方々ですね。重要無形文化財に指定された先生方を見ると地域の伝統産業である備前焼、萩焼や唐津焼、また民芸陶器(益子焼)として指定される場合と地域の伝統的産業ではあるが常滑焼(急須)や民芸陶器(縄文象嵌)のように、また青磁、志野や色絵磁器のように陶芸の技術や技法で指定される場合とがあります。 また、「柿右衛門製陶技術保存会」、「色鍋島今右衛門技術保存会」そして「小鹿田焼技術保存会」のように特定の技術を保持している団体が指定される場合もあります。色絵磁器で十三代今泉今右衛門先生や十四代酒井田柿右衛門先生のように個人と技術を保持している団体(会社)とが重複して指定されている場合もあります。
 左のものは藤本能道先生のぐい呑です。鮮烈で力強い茄子の絵が磁器の上に描かれています。普段使いというよりは改まったおめでたい席で使うのが良いかもしれません。また白地に赤絵という陶器の作品も造られています。
 真ん中と右のものが田村耕一先生のぐい呑で、いずれも先生の代表的な技法といえます。真ん中のものは、ラフに白釉を掛けた上に鉄と辰砂で「ほたるぶくろ」を描いたものです。高台は竹の節に削り出され、端反りで、呑みやすくまた手取りもよく、見た感じにも安定感があり呑みやすいぐい呑です。右のものは鉄と辰砂を使って水鳥を描き、先生独特の青磁釉を掛けたものです。全体に厚手に造られているため使うといま一つのような気がします。
 色絵には興味が薄く、参考までにとかなり昔に手に入れたものですが、こうして改めて眺めてみると絵柄も十分楽しめますし、存在感もありますし、さすが実力者の作品と感じさせられました。

 ホ−ムぺ−ジには他の作品も展示していますのでご覧ください。


藤本能道 田村耕一 田村耕一
茄子文ぐい呑
藤本能道
ほたるぶくろ文
ぐい呑田村耕一
水禽文ぐい呑
田村耕一