ケラメイコス 〜 陶工の町 52
酒を呑む器−36 古い唐津焼−3

 歴史と一言にいっても、政治、経済、文化また社会とそれぞれ感心の置き所によって見方も違ってきます。やきものの場合、大きく文化芸術の流れの中に位置づけられることもありますし、地域の民俗資料として扱われることもあります。美術的に作品そのものだけを対象としてみれば唐津焼というくくりでもいいかもしれませんが、技術の伝播・発展との立場からみると肥前のやきものすなわち唐津焼から伊万里焼への転換の流れの中で捉える必要があります。同時に韓国や中国との関係も考えていかなければその発展の歴史を把握することはできません。こうした技術的な側面だけではなく文化的な背景として茶の湯の流行また政治的な背景そして経済的な背景から見ていくとやきものの歴史は非常に面白い一面を現してくれます。

 つい先日出版された本に「将軍と鍋島・柿右衛門」(大橋康二著 雄山閣 6300円)があります。この本の中心は鍋島藩が将軍家への献上用のとした焼いた鍋島焼の歴史を扱っています。関が原の戦いで西軍方についた鍋島藩が生き残るための方策としての将軍家に対する外交政策の中心となったのが中国磁器の献上でした。中国の政治的混乱から中国磁器の入手が困難となると、唐津焼から磁器窯に転換し盛んに磁器を焼いていた有田周辺の窯に目をつけ自ら献上用の磁器生産を始めました。鍋島焼の盛衰を将軍家との関係また将軍家の政策などとの関係から追っています。ただ、これまでの同様の本と違うのは、著者が長年有田地区にとどまらず全国で発掘された有田焼の調査などを行ってきた考古学者であり、調査結果と伝来の作品や文献との照合また政治史・経済史などとの関連において著述されている点にあります。本題に入る前に、唐津焼から磁器窯への転換また、初期伊万里が朝鮮系陶工による白磁・染付中心であったものが、中国の戦乱が中国の技術導入につながり色絵磁器の焼成が行われる様子など発掘資料に基づいた説明を読むと肥前陶磁のダイナミックなうねりがよく分かります。

 著者が館長を務める九州陶磁文化館には古伊万里の大コレクション柴田夫妻コレクションがあります。このコレクションは名品を中心としたものではなく、初期から幕末までの生活に根ざしたさまざまの種類のものやきものが集められています。数年前、全作品が年代別種類別にまとめられた図録は古伊万里の勉強、収集には欠かせないものとなっています。大橋先生のこの本を読んでテ−マを絞って、時代の動きに即した収集も面白いのではないかと思い始めました。コレクションの処分を考えているのに矛盾した話ですが・・。

 前回平盃を一点掲載したので、今回も引き続き三点掲載します。本来はお皿として造られたものですが、昨今では手ごろなぐい呑が少ないことから平盃と称されて転用されています。お皿は、幾段にも積み重ねられて窯に詰められます。お皿同士の溶着を防止するため土の団子が四つ程置かれた跡が残ります。それが真ん中のものに見える丸い釉薬が剥げているところになります。右端のものは、運悪く上のお皿がくっついてしまい、その残骸が付着しています。こうした窯詰めの様子が分かるものを集めるのも面白いのではないかと思います。全て青唐津と呼ばれる釉薬が掛かったものですが、左端のものは釉薬が厚く、むらむらに掛かり綺麗な色合いを示していますし、高台の削り、土味も楽しめるものの一つです。

 ホ−ムぺ−ジには他の作品も展示していますのでご覧ください。


古唐津 古唐津 古唐津
古唐津平盃
古唐津平盃
古唐津平盃