ケラメイコス 〜 陶工の町 46
酒を呑む器−32 西岡 良弘

 唐津焼が好きな人の関心はやはり桃山時代の作品に向いてしまうかもしれません。私自身その例に漏れず現代の唐津焼には見られない古唐津の土味には心が惹かれてしまい、ヤフ−のオ−クションを毎日チェックするのが日課となっており、古唐津の陶片やぐい呑が高値で落札されているのを横目で眺めています。高値といっても現代作家のものと比較すれば高くはないでしょうし、古美術店の値段からすればはるかに安いのですが、現物が確認出来ないため追いかけないのが現実です。ネット上で買うときの限界なのかもしれません。おまけに土銹(どしゅう)という匂いがしみこんでいます。濃い目のハイタ−に浸けておけばとれますが、これを消さないといけないという手間というか楽しみもあります。
 古いものが良いわけでもないし、新しいものが悪いわけではないのですが、現代の唐津焼の多くは造形感覚が素晴らしすぎてついていけないのが現実です。しかし何人かは私にも理解できる作家がおりその最右翼が西岡良弘先生です。大好きだった小十先生のご子息で、平成6年に独立されて凌雲窯を開かれ、活躍されています。すがすがしい好青年という年は超えていますが、こうした表現が人柄にも、作品にも、よく当てはまると思います。いつも忙しい中突然訪ねて迷惑をかけるのですが、気持ちよく対応していただけるし、質問にも答えていただけるし大好きな窯です。先生の人柄の良さがお弟子さんたちの対応にも良く表れています。やきもの造りに関してはかなり厳しい姿勢で取り組んでおられ、自分の思うレベルに達しないものは出されていません。以前、吉兆から長皿を頼まれているとのことで、出来たもの数点が展示してありましたが、同じものをそろえるのには大変なので数量を減らしてもらおうと考えていると話されていました。昨年の10月に数年ぶりに訪ねましたが、ちょうど窯焚きの前日の忙しいときでした。陳列室に青井戸の素晴らしい茶碗がありました。少し華奢な感じながらも、凛とした力のあふれる茶碗でした。いままで茶碗は小十先生との比較で捉えていたからかいま一つとの感じていたので認識を新たにしました。次回は、茶碗見学に訪ねるのを楽しみにしています。
 左端のぐい呑はまだ小次郎窯で作陶されていたころのものです。昔から唐津にある技法の蛇蝎唐津によるものです。黒い釉薬の上に長石釉を掛け、収縮率の差によって長石釉が縮み蛇の肌のような状態を出すものです。ヘビとかヒルと云った名前では感じもよくないのでどなたかに古松唐津と名づけてもらったと小十先生の奥様からうかがいました。滑らかな肌合いで重厚な趣のあるぐい呑みです。
 真ん中のものは、凌雲窯を開かれて間がない頃で、初めて訪ねた時か2回目かにいただいてきたものです。窯を見学させてもらっていたとき、窯の上に置いてあり、お弟子さんの話では先生にとっては満足のいくものではなかったようです。これを持って先生に分けていただくようお話したらダメとのことで、遣り取りしているうちに差し上げますということでいただいてきました。そのときはお弟子さんともども何が悪いのか分かりませんでしたが、先生の作品を見たり、お話を伺ってきた中から考えると釉薬が熔けきって光沢が出ていないからではないかと推測しています。
 右端のぐい呑は、斑唐津です。何の変哲もない筒型のぐい呑みながら、飽きのこないものです。概してぐい呑は口造りが厚いものが多い中で、朝鮮唐津ともども非常に薄く造られており、冷酒用としても使えますので重宝しています。
 ホ−ムぺ−ジには他の作品も展示していますのでご覧ください。

西岡良弘 西岡良弘 西岡良弘
西岡良弘
古松唐津ぐい呑
西岡良弘
朝鮮唐津ぐい呑
西岡良弘
斑唐津ぐい呑