ケラメイコス 〜 陶工の町 45
酒を呑む器−31 中里 隆・太亀

 唐津焼といえば中里太郎右衛門先生が代名詞となります。しかし私のところには太郎右衛門先生の作品は割山椒の食器と茶碗しかありません。しかも買ったものではなく、父が何かの記念品でいただいたものです。唐津に行くたびに太郎右衛門窯を訪問していますが、陳列室と古唐津の展示を眺めて終わっています。陳列室に先生のぐい呑が置かれていないことにもよりますが、太郎右衛門窯の作品に何かしら違和感を感じているからだといえます。太郎右衛門先生は伝統工芸会でなく日展に所属されていることによる作風が伝統的な絵を描かれながらも微妙に古唐津の雰囲気とは異なっていると感じてしまうことからくるものだろうと思います。前号の重利先生も日展に所属されています。しかし器に書かれている絵の雰囲気は古唐津の息吹を伝えています。それぞれの窯を比較すると重利先生の三玄窯でとなってしまいます。最近まで備前の隠崎先生のような造形的なものに関心がなかったことからも固定観念に囚われてなかなかその良さを理解できなかったからでしょう。やはり食わず嫌いは健康によくないですね。やきものを集めだして、最初のうちは作為の目立つものに目が向いていましたが、そうしたものの大半が数日で飽きてしまいます。いいと思い目を奪われたところが嫌味になってしまいます。毎日使っても、見ていても飽きないものが自然と手元にある状態となってきました。

 今回の中里隆・太亀の親子はなんの衒いもない大らかな作品を造られます。窯場の雰囲気も、そこで働いている方たちも感じが良く、ホッとした気持ちを感じさせてくれる窯場です。窯の名前は、隆太窯。大小数基の窯があり、それぞれ独特な工夫が凝らされているようです。隆先生の仙人のような風貌は「えくれしあ題45号」をご覧ください。

 左は隆先生の斑唐津のぐい呑です小振りで、素直な感じのものです。全体の形もごけ底も丁寧に造られています。普通几帳面に造られたものは面白みが感じられませんが、そうしたところを感じさせないところがあります。ただ見込みが狭いことから手取りが少し重く感じられます。

 真中のものは、隆先生の得意とする焼締のぐい呑です。隆太窯を築く前は種子島で熊野焼の復興に尽力され焼締めを中心に作陶されておられ、その流れからか隆太窯でも焼締のものが沢山造られています。箱書きによると、隆太窯で造られたものではなく、コロラド州のアンダ−ソンランチ窯で造られたもののようです。小振りで可愛らしいものです。

 左端のものは、太亀先生の皮鯨のぐい呑です。隆先生と同じように焼締を中心に作陶されています。窯印をみないとどちらの先生の作品か分かりません。まだまだ値段も安く手が出しやすいのがいいですね。作風もおおらかで嫌味が無く普段使いの食器として楽しめます。隆太窯を訪れるたびに一点、二点と買っているうちに溜まってきました。このぐい呑みの赤茶色の染みみたいなものがありますが、これはこの反対側にも同じものがあります。釉薬をかける時の指の跡です。これからのシ−ズン、太亀先生が造られた焼締の小振りな筒型の湯飲みがビ−ルを飲むのに、活躍してくれます。薄く造られ、手取りも軽く、クリ−ムのような泡立ちで最高です。

 隆先生の窯印は、「主」の字ですが、太亀先生は、まだまだ主になれないためか真中の横棒がありません。遊び心豊かというか、おおらかというか、面白いですね。

 ホ−ムぺ−ジには他の作品も展示していますのでご覧ください。


中里隆 中里隆 中里太亀
中里隆
斑唐津ぐい呑
中里隆
アンダ−ソンランチ窯 焼締ぐい呑
中里太亀
皮鯨ぐい呑