ケラメイコス 〜 陶工の町 34
酒を呑む器−23 

 熱燗よりは冷酒やビ−ルが飲みたくなる時期になってきました。お酒好きの人にとっては夏でも熱燗といわれる方もあると思いますが、暑い時期でも熱燗が呑みたくなる事があります。これも目の前にぐい呑みが一年中置いてあるからかもしれません。いくつかを除いて積み重ねた状態にしているのですから、地震がきたらこれらは怖い状態にあると云わざるを得ません。眼にすることが出来る点では買って右から左に押入れの中に仕舞い込むよりはいいのかもしれませんが・・。
 今回はこの積み重ねていないぐい呑み、普段良く使っている愛用のぐい呑みを紹介します。これまで紹介してきたものからみれば一桁値段も違い、美術的にはけして素晴らしい点は何もないかもしれません。しかし、いざ酒を呑むとなるといつの間にか手にしており、ぐい呑みに対して気兼ねすることもなく、安心してというか落ち着いてお酒が美味しく呑める器たちです。普通であれば、造られた時点で捨てられて土に埋もれたり、持ち主と共にお墓の中に入ったり、また売られていく途中で嵐に遭い海の中沈んでしまったりと本来は二度と日の目を見ることのなかったはずですが、欲の皮に目のくらんだ人間の手にかかってこの世によみがえってきた器たちです。そうであればしっかりとお酒を飲ませてあげなければということにならざるを得ません。彼らはそれに答えて、いつの間にか美しく変身していってくれるので、これが楽しみともいえます。
 常滑、どのように読まれますか?地名では「とこなめ」ですが、「とこなべ」と読んでしまいます。やきもの好きの間では「とこなべ」が正解なのではないかとおもいますが・・。右端の器はこの常滑のもので、鎌倉か平安かといった古いものだと思いますが、見るからに哀れな状況にあります。窯から出た時点で遺棄されたものだと思います。長く土中にあり、使われてもいなかったようなので土臭がしてお酒がまずかったのですが、いろいろ土臭抜きを試みているうちに土臭も抜け、使うにつれカセていた釉薬も潤いが出てきてだんだんと良くなってきています。
 真ん中のものは、15世紀ころのベトナムの染付けで海揚りですが、海揚り独特のカセも少なくかわいらしい器です。磁器物ですが、胎土も白ではなく灰色ぽっく、釉薬もくすんだ感じて、染付の絵がかれています。もう一個買っておけばと悔やんでいます。
 右端は、鈞窯と呼ばれる中国は元の時代のもので、これも海揚りです。高台内に貝殻が付着していたと聞いています。鈞窯の全盛時代は宋の時代で、宮廷用として製作されていたようですが、時代が下るとともに鮮やかさがなくなり、くすんだ感じになってきています。鈞窯の作品は眼にする機会がないので何ともいえないのですが、姿形はすっきりした形をしており、内側に掛けられた紅斑が熱燗になると赤みを増してみえてきます。唐津の山瀬の土で作られた絵唐津の杯も熱燗を注ぐとほんのりと紅をさしますし、第33号に載せた藤ノ木土平さんの左端の徳利など真っ黒だったものが使っているうちに青みを帯びた斑釉の窯変が現れてきたりと、やきもの、特に土物は使うことによる変化を見ていく楽しみがあります。
 ホ−ムぺ−ジには他の作品も展示していますのでご覧ください。


常滑山杯 安南杯 鈞窯杯
常滑山杯
安南杯
鈞窯杯