ケラメイコス 〜 陶工の町 29
酒を呑む器−18〜正月用の器

 昨年の東京株式市場は日経平均株価が最終日は値を下げましたが、活況の内に終わりました。経済情勢も上向いてきたとされていますが、確かに、求人状況をみると上向いてきているのかと思われますが、一方では大手企業でのリストラはまだ続いているようです。団塊の世代の定年退職に向けて社会がどのような方向に動いていくか注視する必要があると思います。こうした動きが、美術品の世界にも入り込んでくると値段が高騰してしまい困ったことになってしまいます。現代作家のものや古いものであればヤフ−のオ−クションでいいでしょうが、一級品を求めようとすればシンワア−トオ−クションや得意分野を持っている美術商が中心となるといえます。ヤフ−のオ−クションでは、現代陶で見ると若手から中堅にかけての作家の作品が3万円前後でよく動いています。中には、個展の値段より高く落札されています。地方で個展が少ないことを考えればやむを得ない現象でしょう。また、日常使いに適したものよりも、非常に作為の強い、パッと目を引くものが主流のように思われます。一方、古いものではこの値段まで行くものは少ないように思えます。現代陶に比べれば安価に落札できるといえます。ただ、問題は時代と傷と色の具合が今ひとつ確認できないことにあります。しかし、地元の骨董屋さんで買うことを思えばかなり安いのは事実ですが・・・。
 本来のぐい呑に戻ろうと思いながらそば猪口やのぞきの話しが続きましたが、今回はお正月用の器がないか捜してみました。第28号に載せた藤本能道の白磁に紫色のなすびの絵のぐい呑などもいいのかもしれませんし、金襴手などもいいのでしょうが手元にありません。好き嫌いを言わず集めればいいのですが、そうもいきませんので、次の三つを選んでみました。
 左端のものは、嬉野に窯を焚いていた故小野珀子さんの釉裏金彩という技法のもので、金箔を張った上に黄色の釉薬をかけたものです。小野さんは釉裏金彩や金襴手の素晴らしいものを焼いていました。このぐい呑は20年ほど前に初めて訪ねたとき買ったものです。まだ、朝早くて従業員さんがこられておらず、先生自らお茶を出していただいた萌葱金襴手の湯呑が素晴らしかったのですが、それは断念して、このぐい呑になりました。今は息子の二郎氏が跡を継いでおられます。また、同じ場所に、弟の小野祥瓷さんが感じのよい色絵を製作されています。
 真中のものは、本来は珍味入れとして造られたのではないかと思いますが、ぐい呑に手ごろなサイズです。上段に鳳凰が描かれ、その下を15列に鎬を入れ、壽の字3つと玉を追いかける竜?を交互に描いているおめでたい文様となっています。幕末から明治頃のものではないかと思います。この手のものはあまり見ないように思いますが、最近、鳳凰の替わりに幾何学文を描いたものをヤフ−のオ−クションでよく見かけます。
 右端のものは、赤で輪郭線を描いた唐草の中を金彩で埋めているものです。華やかなようであって何かしら華やかさの後に訪れる寂しさを感じさせられて仕方がありません。


釉裏金彩 吉祥文猪口 金彩唐草文のぞき
釉裏金彩ぐい呑
W6.0×H3.7
吉祥文猪口
W6.2×H4.3
金彩唐草文のぞき
W5.2×H6.2