ケラメイコス 〜 陶工の町 27
酒を呑む器−16〜小振りのそば猪口

 最近のお天気は気まぐれなもので、暑いと思っていたら急に冷え込んだりまた暑さがぶり返したりと何を着て出ようかと迷ってしまいます。冬に向かって寒さも増してくると鍋と熱燗が恋しくなりますが、今回取り上げたそば猪口は熱燗用としてよりもしっかり冷やした吟醸酒のほうが適しているかもしれません。しかし、寝酒に焼酎をそのまま1杯引っ掛けるときにはちょうど良い分量が入りますので、こういった使い方がベストではないか、また珍味いれとしての使い方がいいのかなあと思っています。サイズ的には、普通のそば猪口のサイズである「w8×h6.5」に比べて、幅で2cm、高さで1.5cm程小ぶりなものです。普通のそば猪口は市場にあふれており、欲しいと思う図柄のものも多いのですが、酒を呑む器としてはサイズ的に今ひとつとならざるをえません。しかしこのサイズのものは、手にすっぽりと収まり、使い勝手がいいのですが、なかなか見当たらず、5点しか手元にはありません。

 本来そば猪口は、料理を入れる器として使われていたようで、江戸時代に蕎麦が普及しだしてからはそばのだし汁入れとして使われだしたためそば猪口と呼ばれるようになったみたいです。しかし、この小さいサイズはそのような使われ方は不可能なので、珍味入れとして使われていたのではないかと思います。私のコレクションですからキズがあるのは当然のことですが、キズにも負けず、しっかりと胸を張って「俺はそば猪口だ。」と主張しているような力強さを感じさせられます。

 左端のものは、「雪輪文」と呼ばれる文様です。雪輪文と太めに引かれたラフな縦線の組み合わせが印象的であり、呉須の発色とマッチして力強さを感じさせてくれます。古い器に描かれた文様を見ていると今出来たものと比較しても引けをとらない斬新な文様をよく目にしますが、これもそうしたものの一つとして捉えることができるといえます。この斬新さ、力強よさに引かれていつの間にか手の中にあります。雪輪文自体はよく見かけますが、このような縦線との組み合わせはなかなか目にする機会がありません。こうした少し変わったデザインのものを集めようと思いますが、なかなか思うようにはいきません。

 真ん中のものは、前々回の「のぞき」のときに紹介した「花唐草」と呼ばれる文様です。前々回のものは絵も滲み、発色も淡いものでしたが、このそば猪口は非の打ち所が無いほど、絵もしっかりと描き込まれ、発色も素晴らしいものです。小振りであることからひときわシャ−プさが際立っているのではないかと感じています。

 右端のものは「算木手」また「そろばん玉」とも呼ばれる文様です。算木とは易者さんが使う占い用の木の道具です。前の二つは全面絵で埋め尽くすといったものでしたが、これは2面にこの文様を描き、その間は空白のまま残し、清々しさを感じさせてくれます。

雪輪文そば猪口 花唐草文そば猪口 算木手そば猪口
雪輪文そば猪口
W6.0×H5.2
花唐草文そば猪口
W6.3×H5.3
算木手そば猪口
W6.3×H5.3